始めの言葉

「プリンターから印刷できて当たり前」と、ユーザーからもSIerからも軽視されがちなプリンターの世界ですが、実際にはお困りだったり、思ったような印刷結果が得られないまま我慢してお使いの皆様のために、今までの経験が役立てばと、このブログを立ち上げました。印刷の基本から、応用情報、問題の解決方法を情報発信すると共に、PDF化など、これからどうするかについても、ご相談に乗れれば幸いです。ご質問はコメントでお寄せください。

2017年12月23日土曜日

AS/400 プリンティングに求められるソリューション 第20回 - Mapping Suite の画面 - 2 -

初めのステップは、対象となるスプールを MapDraw 上に表示させるための準備です。
OS/400 上で Mapping を稼動させるためには、次の設定が必要です。
- Mapping のコマンドを実行する 5250 端末の画面の"ホスト・コードページ"は、"939"か"1399"としてください。また、サイズも "27x132" に変更しておくと、後の、Mapping のスプールの処理の画面の横幅が、正しく表示されます。
5250 端末画面の通信 -> 構成の設定画面

- Mapping コマンドを実行するジョブの CCSID は、"5035" です。設定するには、例えば、"CHGJOB CCSID(5035)" コマンドを実行します。
なお、この組み合わせが必要なのは、あくまでも Mapping を実行する環境のみです。CCSID が "65535" であるお客様も多いと思いますが、それを変更する必要はありません。

OS/400 上に Mapping をインストールすると、MAP400 というライブラリーができます。Mapping 独自のものはその中に含まれますので、ライブラリー・リストに "MAP400" を追加します。設定するには、例えば、"ADDLIBLE MAP400" コマンドを実行します。
これによって、Mapping のコマンドを使用するための準備ができました。

Mapping 処理の対象となるスプールに対して帳票設計を行なうために、Windows 上で稼動する MapDraw を使用します。MapDraw 上でスプールを表示させるために、AS/400 上にあるスプールに対して、文字コードを EBCDIC からユニコードに変換する操作を行ないます。そのためには、先ず 5250 端末画面上で、"GO MAPPING" を実行して "Mapping メニュー" 画面を表示させます。
その中の "1. スプール・ファイルの処理"を選択します。次のような画面になりますので、対象のスプール・ファイルが存在するライブラリーや OUTQ を指定します。(ユーザーが分からなければ、"*ALL" を指定します。)
1. スプール・ファイルの処理の画面
この画面の例では、"DEMOLIB" というライブラリーの中の "DEMOOUT" という名前の OUTQ にあるスプールを全て表示させる設定となっています。
実行キーを押すと、次のような画面となります。
スプール・ファイルの処理の実行結果の画面
表示されている情報は、通常の OUTQ の画面と基本的に同じですが、選択項目の 2 行目のメニューが Mapping 独自のものとなっています。
ここでは、対象となるスプール "DEMO1" を使用しますので、"DEMO1" に対して "P"(PC への送信) を指定して実行キーを押します。
次のような画面が表示されます。
PC へのスプール転送を設定する画面
"PC へのスプール転送"というサブ・ウィンドウの中には、対象となるスプールの情報が表示されています。ここでは、次の値を指定します。
- 開始ページと終了ページ <- 帳票設計の際に参照する必要のあるページ範囲になります。ページ数が多くなるほど、MapDraw 上での改ページの反応が遅くなりますので、必要最小限の範囲を指定してください。
- 出力ファイル <- Windows 上で読み取るファイルになりますので、独自の拡張子 (*.pag) が付いています。ただ、中身はテキスト・ファイルと大きくは変わりません。ファイル名は必要に応じて書き換えてください。
- コードページ <- 日本語のスプールの場合は、半角カナ文字と半角英小文字の文字化けを防ぐために、半角カナ文字を使用している場合は "290"、そうでない場合には "1027" を指定します。
実行キーを押すと、次の画面でお分かりのように、IFS 上の "mapping" フォルダーの下に "DEMO1.pag" ファイルが生成されます。つまり、PC ではなく、PC からアクセス可能な IFS 上にファイルが生成されるということです。
生成された "DEMO1.pag" ファイル
以上で、スプールを MapDraw で表示するための準備が、できました。

2017年12月16日土曜日

AS/400 プリンティングに求められるソリューション 第19回 - Mapping Suite の画面 - 1 -

今回のお話からは、実際の Mapping の画面をご紹介しようと思います。
Mapping は、本来はお客様のシステムの裏方として働くもので、表の画面に出てくることは通常はありません。出てくる機会があるとしたら、帳票の設計変更や追加、Mapping ROBOT(これは、後でご説明します。)の設定変更や追加を行なう場合くらいになります。

先ず初めに、帳票設計を行なうケースを想定して、どのように行なっていくか、画面と一緒にご紹介していきます。
帳票設計を行なう流れは、大まかには次のとおりです。
1. 帳票設計を行なうツールである "MapDraw" は、Windows 上で稼動します。MapDraw上に、対象となるスプールを表示させるために、AS/400 上の Mapping メニューを使ってスプールを PC 上で表示させるための変換を行ないます。
Mapping メイン画面の中のスプールを変換するためのメニュー"1"

2. 既存の帳票に合わせた設計とする場合には、既存の帳票のスキャン・イメージを画像データのオーバーレイとして、MapDraw の画面に貼り付けます。全く新規に設計する必要がある場合には、いきなり MapDraw 上で罫線や固定文字を配置させていっても良いのですが、予め、Excel や PowerPoint 等の罫線や文字を編集しやすいソフトウェア上で設計して、その画面イメージを MapDraw に貼り付けても良いかと思います。

3. MapDraw 上に表示したスプール・データを使って、データを表示させるための配置やフォントのサイズ、種類を指定していきます。MapDraw のプレビューの機能を使って設計した結果を確認していきますが、正確な画面表示は、倍率を 100% とした場合になることにご注意ください。
設計後の MapDraw プレビュー画面

4. 設計を確認できたら、プロジェクトの生成を行います。これによって、AS/400 側の IFS の特定のフォルダーにプロジェクト・ファイルが保存されます。設計で使用したフォントも同時に、IFS の特定のフォルダーに保存されます。AS/400 上の Mapping が PDF ファイルや PCL 形式の印刷データを生成するために、このフォルダーにあるフォント・イメージを使用します。

5. 保存されたプロジェクト・ファイルは、AS/400 上の Mapping メニューを使って、オブジェクトに変換します。
MapDraw プロジェクトをオブジェクトに変換するためのメニュー"2"

以上で準備は完了です。AS/400 上の Mapping のコマンドを使って PDF ファイルを生成して設計に問題が残っていないかを確認します。
問題ないことが確認できたら、新しい帳票が出力できるように、CL や ROBOT の設定に反映します。
次回からは、各ステップを少し詳しくお話しします。

2017年12月9日土曜日

AS/400 プリンティングに求められるソリューション 第18回 - Mapping Suite とは- 8 -

"Mapping Suite" の導入のために掛かる費用には、他に、導入や研修等の SE によるサービス作業費用があります。
研修を受けていただくのは、通常、お客様の情報システム部の方になりますが、システムの保守や開発を外部の SIer に委託されているような場合には、SIer の方が中心となります。
Mapping を導入するということは、お客様の情報システムの基礎となっている AS/400 上での処理を、従来のものから Mapping を使った処理に変えることを意味しています。そのため、情報システムの開発や保守を担当されている方に、Mapping のことを十分に理解していただく必要があります。また、ユーザーが使用する帳票を追加したり、変更する役目は、通常は情報システム部の方が担っているケースが多いことも、研修を受講していただく理由の一つです。私たちは、そのような業務を実際に担当されている方に受講していただくようにお願いしています。
そして、研修を受講していただくことは、前回お話しした SWMA をご契約いただくことの前提条件でもあります。
ただ、人事異動によって受講された方が別の部門に異動されてしまったり、帳票の修正や新規の設計の機会が少ないため、受講内容を忘れてしまったりするケースがあることは、難しい課題となっています。

導入・研修サービスは、のべ3日間のコースが標準となっています。
先ず、AS/400 へ Mapping のプログラムのインストールを行ないますが、これは私たちが行い、約 2 時間程度の作業となっています。

残りの、2.5 日で研修を行います。
研修内容は 2 つに分かれています。
一つは、MapDraw を使った帳票設計の研修です。お客様に Mapping の処理の対象としたい帳票を選んでいただき、それを設計するにはどうしたら良いかというテーマで、実習を行なっていただきます。受講される方には、PC をご用意いただき、MapDraw をインストールした後、設定するところから始めます。
対象となるスプールを MapDraw の画面に読み込み、帳票イメージを画面に貼り付けて、実際に帳票設計していきます。プレビュー機能を使って、想定どおりの帳票を設計できたことを確認したら、AS/400 上に取り込みます。その後は、Mapping のコマンドを使って、対象スプールのデータが入った帳票の PDF ファイルができることを確認します。MapDraw のプレビューで確認したイメージのとおりの PDF ファイルが生成できると、達成感を感じられます。
Mapping 処理の流れ - PDF生成と印刷
もう一つは、AS/400 上へ Mapping の処理をどのようにしたら組み込めるかという研修です。アプリケーションから生成されたスプールに対して、Mapping の処理を行い、最終的に必要なアウトプットを得るまで、自動的に処理が進むように組み込む必要があります。
例えば、PDF ファイルを生成して、ファイル・サーバーに保存するようにする場合、細かい話ですが、ファイル名の命名規則をどうするか、ファイル保存先のフォルダーはどのような規則に基づいて振り分けるかという点にまで、配慮しておく必要があるかと思います。研修では、Mapping のコマンドや ROBOT を使って、どのようにしたら実現できるかをガイドします。お客様の要件の全てを Mapping の機能でカバーできない場合には、お客様のご要望に応じて、そのギャップを埋めるためのサンプル・プログラムをご提供する場合もありました。
ともあれ、私たちは、お客様が Mapping を導入して良かったと思っていただけるように、また、Mapping をできるだけ活用していただけるようにサポートを行なっています。

また、これは、別オプションですが、帳票設計を有償で受託することも行なっています。MapDraw を使って設計する帳票の数が多いが、サービス・インまでの時間に間に合わないとか、お客様内の人員が足りないといった場合に、設計作業を私たちに委託される場合があります。手前味噌ですが、私たちは帳票設計に慣れていますので、初心者であるお客様が設計されるよりも、短時間で高品質のものを設計する自負があります。

2017年12月2日土曜日

AS/400 プリンティングに求められるソリューション 第17回 - Mapping Suite とは- 7 -

通常のソフトウェアと同様に、"Mapping Suite"にはライセンス契約の他に、SWMA(SoftWare Maintenance Agreement) と呼んでいる、所謂、保守契約があります。
SWMA は、ライセンス契約と一緒に契約することで、初年度は無償になります。2年目からは、基本的にライセンス料金の 20% が掛かります。
なお、無償の初年度の期間は固定です。つまり、初めのライセンス契約の後に、オプション・ライセンスを追加したり、処理数のグレード・アップを行なった場合に、それらに応じた無償保証期間が改めて発生することは、ありません。

5年間に必要な費用と処理数の関係の例
SWMA による保守の内容は、お客様のお問い合わせに対する対応と、修正プログラムの無償提供です。
前者のためには、問い合わせ専用のメール・アドレスが設けてありますが、Mapping の導入や研修の中で、お客様と直接のコミュニケーションができますので、実際には、その延長のような形で、電話やメールで直接お問い合わせをいただいたり、回答したりしています。

後者の修正プログラムが必要になるようなケースは、今までほとんど無いと言って良いほどですが、それでも、細かいレベルでのバージョン・アップは次のような方式で続いています。
つまり、2008年に発表した時のバージョン6において修正が必要になった場合には、現行のバージョン7に対して修正を行なって、お客様にご提供しています。ただし、その修正を適用しても、プログラムの機能としては、バージョン6のレベルのままということになります。もし、その機会にバージョン7の機能を使用できるようにするには、差額料金をお願いすることになりますが、その金額には予め決まったルールは無く、個別の見積りになっています。
ちなみに、バージョン7の追加機能については、AS/400 プリンティングに求められるソリューション 第13回 - Mapping Suite とは- 3 - でお話ししていますが、一般的なケースとしては、次の2点に絞られるかと思います。
1. セキュリティ設定した PDF ファイルの生成
2. PDF ファイル生成のための帳票設計において、太字、斜体、下線の設定が有効になる

SWMA のお話に戻りますが、SWMAは、お客様から 1ヶ月以上前の通知があれば解約することは可能です。解約されても、もちろん Mapping 自体を使用し続けることは可能ですが、お問い合わせをいただいても回答することはできなくなります。また、解約後に改めて契約するには、契約の空白期間の料金と、割増料金を併せた金額が追加で必要になりますので、契約は継続していただくよう、お願いしています。

2017年11月25日土曜日

AS/400 プリンティングに求められるソリューション 第16回 - Mapping Suite とは- 6 -

"Mapping Suite" のライセンス・キーには、導入する時に発行される "On Demand キー"と、90 日後に発行される "Refill キー"、そして、Refill キーと同時に発行される "Safety キー" の 3 種類があります。

"On Demand キー" は、処理数の制限が無いのですが、有効期限が 90日となっています。これは、お客様の導入後の開発やテストを考慮して措置です。MAPKEY コマンドを使って、端末画面から入力します。そして、その後で MAPADDPTS コマンドを実行すると表示される "ID値" を Mapping 社に報告します。Mapping 社では、それを使って、次に発行される "Refill キー" や "Safety キー" を生成します。なお、この時点で、IFS 上の "mapping" フォルダーの下に "key" というフォルダーが自動的に作成されます。このフォルダーの下には、ライセンス・キーに関わる 2つのファイルが保管されます。
IFS 上の key フォルダーとキー関連ファイル
"Refill キー"は、"On Demand キー"の有効期間が切れる前に発行されるもので、期限は無期限ですが、最大処理数をセットします。一緒に発行される"On Demand キー" とセットで入力します。"Refill キー" の入力には、MAPADDPTS コマンドを使用します。ライセンスをグレード・アップして年間最大処理数を変更する場合には、"Refill キー" と "Safety キー" が発行され、それを入力することになります。

"Safety キー"は、前回お話ししたように、処理数が足りなくなった時に、処理数を 5% 追加するためのキーです。1 回しか使用できませんので、入力せずに保管しておいて、いざと言う時に MAPADDPTS コマンドを使って入力します。

これらのライセンス・キーはや英数文字の組み合わせで、導入先のサーバー(AS/400)の、モデル名、シリアル番号、プロセッサー・タイプという 3 つの値と、どのオプション(E-Document 等)の機能を使用するか(契約されたか)を元に、Mapping 社で生成されます。"Refill キー"と "Safety キー" は、更に契約されたライセンスの年間最大処理数の情報も反映されます。
そして、生成されると、ライセンス契約書に記載されたお客様の E-Mail アドレスに英文のメールで送信されて来るのですが、国内のお客様の場合、英文のメールは直接ゴミ箱に直行になるケースが多いので、同時に受信している私たちから日本語のメールに変えて、導入手順と一緒にメールでお送りしています。
また、Mapping 社では、ご契約いただいたお客様毎に、ユーザー ID とパスワードで管理している "Mapping Suite" のウェブ・サイトを用意しています。そこにアクセスすると、契約したライセンスの構成や年間最大処理数が分かる他、マニュアルのダウンロードもできるようになっています。ただ、メニューが英語であることから、私たちがお客様の代わりにアクセスして、必要な情報をお客様に提供しています。
Mapping Webサイトの画面例

ライセンス・キーは、導入先のサーバー固有の値を下に生成されていますので、サーバーの移行や、災害対策にレプリカを取っている別のサーバーがある場合には、注意が必要です。
移行の場合、移行先の新サーバーでは通常、検証テストを行なうと思いますが、その期間中は稼働中のサーバーと検証中の新サーバーの2台で同時に Mapping が稼動することになります。そこで、新サーバーの値に対応した期間限定のライセンス・キーを無償でご提供しています。新サーバーが本番稼動開始する時には、期間無制限のキーを発行して再入力していただくと同時に、旧サーバーからは Mapping をアンインストールした旨の証明書に署名していただいています。検証用の無償のキーの有効期間は、お客様と相談して決めています。
レプリカを取っているサーバーがある場合には、そのサーバー用にもライセンス契約が必要です。そのキー情報は、レプリカ・サーバー側に保管されていますので、IFS 上の"key" フォルダーは、レプリカの対象から外すように設定していただくことが必要です。

"Mapping Virtual Printer(MVP)" は、PC にインストールします。ライセンス・キーは、その PC の基板や HDD 等の情報を元に生成されています。実際には、MVP をインストールしてから MVPのメニュー画面を使って確認できる "ID値" を元に生成されます。従って、PC を置き換える際には、キーの再発行と同時に、旧 PC からのアンインストール済みの証明書への署名をお願いしています。
MVP のID値とキー入力画面例
帳票設計ツールである "MapDraw" は、コピー・フリーなので、ライセンス・キーの入力はありません。

2017年11月18日土曜日

AS/400 プリンティングに求められるソリューション 第15回 - Mapping Suite とは- 5 -

ぞれぞれのライセンスの費用は、どうなっているでしょうか ?
AS/400 上で稼動するソフトウェアの多くは、稼動させる AS/400 の機械クラス(P05 とか P10 という呼び方が付いています。)によって分かれています。つまり、稼動するAS/400 の大きさが大きいほど、ライセンス料金も高くなるという考え方です。
しかし、"Mapping Suite" の場合は、Mapping が生成する XPS ファイルの、1年間の累積ページ数によって、料金クラスが分かれます。つまり、Mapping を多く使うお客様から、ライセンス料金を多くいただくという考え方です。
そのために、Mapping のコマンドを使って生成される XPS ファイルのページ数をカウントする仕組みが、Mapping の内部で稼動しています。そして、お客様が契約された上限の処理数は、ライセンス・キーの情報から分かります。カウントし始めてから 1 年経過する時に、カウンターの値が上限を越えていなければ、カウンターはリセットされて 0 になり、新たにカウントし始めます。その結果、翌年もそのまま続けて使用できることになります。
"カウンター" という言葉は、コピー機のように、使用実績に応じて毎年料金が請求されるように誤解される元になるのですが、あくまでも、機械クラスの代わりに、年間最大処理数を使ってクラス分けしているので、ライセンス料金のお支払いは、初めの1回だけです。下のグラフは、年間最大処理数のクラスと、ライセンス料金の関係を表したものです。縦軸が標準ライセンス料金、横軸が年間最大処理数(ページ数)になっている、階段状のグラフになります。
これを見ると、次のことがお分かりいただけるかと思います。
- 年間最大処理数は、30万、150万、300万、750万、1,500万、3,000万、無制限(ページ/年)というように、さほど細かく分かれている訳ではありません。(3,000万と無制限の間にもまだクラス分けはありますが、省略しています。)
- 当然のことながら、年間最大処理数が大きいクラスの料金ほど、1ページ当たりの単価は割安になります。
標準ライセンス料金の例(基本パック+E-Document)  
例えば、本番環境の他に、開発環境やバック・アップ環境のあるお客様の場合に、本番環境は業務上必要な処理数を元にライセンスを選択するが、開発環境やバック・アップ環境には、最も小さい処理数のライセンスを選択して全体の金額を抑えることができるのが、このような料金体系のメリットと思います。
もっとも、実際には、業務上必要な処理数をお聞きしても、把握されていないお客様は非常に多くあります。つまり、AS/400 から何ページ位印刷しているかを、会社全体となると把握されていないお客様がほとんどです。そのような時には、購入されている印刷用紙の量を調べていただいた上で、上記のようにライセンスのクラス分けはさほど細かくないので、安心のために大き目の処理数のものを選択していただくことを、お勧めしています。

では、もし、1年経過する前に、契約した最大処理数に届いてしまったら、どうなるでしょうか ?
- 最大処理数の 95% に届くと、QSYSOPR にメッセージが上がります。その時点で処理が止まることはありません。
- 100% に届くと、処理が止まり、ライセンス・キーが不正である旨のエラー・メッセージが上がります。その時には、予めお客様にお渡しする緊急用のライセンス・キーを入力します。それによって、契約処理数に対して 5% 追加され、Mapping 処理を再開することができます。
- しかし、緊急用のキーは、1 回しか使用できません。従って、追加した 5% を使い切った後や、2 年目以降のことを考えて、ライセンス・クラスのグレード・アップをお勧めしています。ライセンス料金の差額 x 1.25 の料金をお支払いいただくと、ライセンス・キーが発行されて、年間最大処理数がグレード・アップされます。実際には、何らかの形でお客様のご発注の確認ができれば、ライセンス・キーを先に発行することで、お客様の業務を止めないよう、配慮しています。

そこで、慎重なお客様は定期的に、例えば毎月 1 回、残りの処理数を確認されています。MAPADDPTS コマンドで表示される画面では、下の画面のように次の情報が表示されます。(下の画面で処理数の値が 0 となっているのは、処理数無制限ライセンスのためです。)
- 残りの処理数
- 契約した処理数
- カウンターが次にリセットされる日付
MAPADDPTS コマンドで表示される画面例

2017年11月11日土曜日

AS/400 プリンティングに求められるソリューション 第14回 - Mapping Suite とは- 4 -

前回のお話で出できた "Mapping Virtual Printer" も含めて、"Mapping Suite" のライセンスの構成をお話しします。
先ず、3 種類のパックから 1 つを選択します。前回のお話にある表をご覧いただくと分かりやすいと思いますが、それぞれのパックの違いは、入力データ形式と出力データ形式の組み合わせの違いです。

1. Mapping V7 基本パック
AS/400 のスプールをカット紙化する、電子化するというほとんど多くのケースでは、このパックで対応できます。

2. Mapping V7 Industrial パック
出力データ形式として、"ZEBRA" や "IBM ProPrinter" 等が追加されています。
"ZEBRA" は以前ご説明した US 製のラベル・プリンターですが、Mapping と組み合わせて使用すると、AS/400 から LAN 直結で日本語のラベルを印刷できます。これは印刷データの中に、文字イメージも含めることができるからです。(国内には、何社かの販売、保守を行なう代理店があります。)
しかし、"IBM ProPrinter" や "EPSON FX" は、日本語対応していないドット・プリンター用の印刷データ形式なので、このパックは、国内用としては "ZEBRA" ラベル・プリンター用のパックと言えるかと思います。

3. Mapping V7 Premium パック
Industrial パックに対して追加された入力データ形式として、"SAP GOF"があります。これは、SAP 社の R/3 からの出力データ形式です。R/3 では細かな帳票設計機能は無いと聞いていますので、自由な帳票設計を行ないたい場合には、Mapping のこのパックが有効と思います。
また、追加された出力データ形式に、"GDI" があります。前回お話ししたように、Windows ドライバーを使った印刷を行なうためのデータ形式です。WindowsServer 上で稼動する MOM と組み合わせて使用します。
他のパックでは、"E-Document" を追加しないとできない PDF 生成が、基本機能の中で用意されている点も他のパックと異なります。

パックを選択したら、次は、"E-Document" と "DataBase" を追加するかを決めます。
"E-Document" の大きな特徴は、出力データ形式として "PDF" を追加できることです。つまり、PDF ダイレクト印刷や、電子化のためには、必須のオプションということになります。他に、出力した帳票を Web ブラウザーで見るためには、"HTML" 形式での出力が使えます。他に、Mapping の前処理として、スプールの並べ替え、結合、分割ができます。その機能を使うと、封入封緘機が必要とする OMR(Optical Mark Read) を帳票に追加できるようになります。

"DataBase"は、アプリケーションから出力されたデータや、取引先から渡されるデータが CSV 形式だった場合に、それを AS/400 上でスプールに変換する機能を提供します。また、DB2 等のデータベースから、必要なデータのみを取り出して、スプール生成することができます。
(残念ながら、現時点では、DBCS 文字の処理に問題があるため修正中です。)

他に単独のオプションとして、"Mapping Virtual Printer(MVP)" があります。PDF ダイレクト印刷や、XPS ダイレクト印刷、PCL モードや ZEBRA モードを持たないプリンターに対して、Mapping から自動印刷するために用意されたものです。Windows のPC に導入します。(もちろん、WindowsServerでも結構です。)
MVP は、Mapping で生成された PDF ファイルを受信すると、Adobe Reader(無償ライセンス)とプリンターのWindows ドライバーを使って自動的に印刷します。1 ライセンスで、25 個のプリンターを登録できます。1 台のプリンターにおいて、例えば、両面印刷と片面印刷の設定を使い分けたい場合には、プロパティの設定を変えて、プリンターの名称を変えた 2 つのプリンターを登録することになります。また、AS/400 から見ると、MVP 上に登録されたプリンター毎に、OUTQ が対応することになります。
MVP は、Windows のサービスとして稼動するサービス・モードと、画面が表示される GUI モードがあります。サービス・モードでは、処理中でも画面には何も表示されませんが、GUI モードでは MVP の画面が表示される他、瞬間的に Adobe Reader の画面が開きます。
MVP を使った自動印刷の流れ

2017年11月5日日曜日

AS/400 プリンティングに求められるソリューション 第13回 - Mapping Suite とは- 3 -

今回は、Mapping の特徴の中でも、ユーザーの方にとって直接関わることは少ないのですが、Mapping V7 を理解する上で重要な、内部のアーキテクチャーをお話します。

アーキテクチャーという言葉は、IT の世界では、基本構造という言葉に置き換えられると思います。
"Mapping Suite" では、V6 から V7.1 にバージョン・アップされる際に、アーキテクチャーが大きく変わりました。V6 までは、PCL 形式の印刷データを生成したり、PDFファイルを生成したりするのは、単にそれぞれ別の処理を行っているだけでしたが、V7.1 からは、XPS 形式のファイルを中間言語として活用するアーキテクチャーに変わりました。
具体的には、様々な形式の入力データを、一旦、XPS 形式のファイルに変換してから、その XPS ファイルを望みの出力データ形式に変換するという処理の流れに変わったということです。
"XPS" という言葉は、あまり耳にされたことの無い方が多いと思いますが、実は、Windows7 以降のバージョンの Windows にはプリンター・ドライバーの一つとして、"Microsoft XPS Document Writer" が標準で組み込まれていますし、XPS ファイルを読み込んで画面表示するための、"XPS ビューアー" も標準で付属しています。例えば、Word や Excel 等、Windows のアプリケーション上で、ドライバーとして "Microsoft XPS Document Writer" を指定して文書を印刷させると、紙に印刷される代わりに、XPS ファイルが生成されます。そして、その XPS ファイルを画面上で見るためのツールとして "XPS ビューアー" があるというわけです。

"XPS" とは、"XML Paper Specification" の略で、Microsoft 社が開発して、WindowsVista から採用し始めたた、電子文書を記述するための XML を活用した公開規格のフォーマットです。Microsoft 社が Adobe社の PDF に対抗するために開発したとも聞いています。
Mapping 社は早くから XPS に着目して、V7.1 のアーキテクチャーに採用しました。それによって、入力データ型式と出力データ型式の選択の幅が大きく広がったのです。Mapping V7.1 のライセンス・パックの種類とオプションとの組み合わせによって、選択可能な入力、出力データ型式の種類は、次の図のとおりです。
Mapping V7.1 による入力データと出力データの組み合わせ
例えば、"基本パック"に、オプションの "E-Document" を付けると、入力データとして扱えるデータの形式は、"TEXT"、"XML"、"SCSスプール"となり、変換後の出力データは、"PCL5,6"、"TEXT"、"XML"、"CSV"、"XPS"、"PDF"、"HTML"になるという見方ができます。
そして、単にデータ変換するだけでなく、ファイル変換を行なうプログラム "map_xps" のパラメーターである"プロファイル"を使って、ファイル変換の際の細かい設定を指定することができます。例えば、出力データの解像度や、カラーかモノクロかの指定、ページのサイズ等です。

特に、PDF 生成においては、2008年に"ISO32000"として規格化された所有者パスワードや利用者パスワードに応じた9種類の操作(印刷や編集等)の可/不可を、プロファイルを使って指定できます。

その他には、 生成された複数の XPS ファイルの分割や、結合、ページの並べ替えができます。元々、Mapping には前処理として、スプールの分割や結合、並べ替えを行なう機能がありますが、"前処理"の他に"後処理"でもできるようになったということです。"後処理"でページの並べ替えや分割を行なえるということは、キーとなる値を後から指定することができるということを意味しています。

"Premium パック"では、イメージ・データの一つとして、"GDI" に変換することができます。"GDI" とは "Graphics Device Interface" の略で、Windows の世界で、印刷の際にプリンター・ドライバーに渡す印刷データのイメージを意味しています。"GDI" を生成して、"MOM(Mapping Output Manager)"上のプリンター・ドライバーに送信すれば、ドライバーで指定されたプリンターから印刷することができます。
Mapping では、PCL モードや、PDF ダイレクト印刷機能を持たないプリンターや複合機に、"Adobe Reader" プリンター・ドライバーを使って自動印刷するために、"Mapping Virtual Printer" というオプション・ライセンスを用意していますが、上記の "GDI" に変換する機能を使うと、その代わりになると言えます。

2017年10月28日土曜日

AS/400 プリンティングに求められるソリューション 第12回 - Mapping Suite とは- 2 -

前回から、"Mapping Suite"の特徴をお話ししています。次の特徴は、特徴である他に、志とも言えるものと思います。
それは、可能な限り既存のアプリケーションの変更無しに、カット紙化や PDF化を実現するための機能を持っているという点です。
その代表的な機能が、"ROBOT" というサブシステムです。これは、Mapping が標準で持っている機能で、簡単にお話しすると、ある OUTQ に投入されたスプールに対して、予め定義しておいた処理を自動的に行なうものです。例えば、次のような処理が考えられます。
- カット紙プリンターに印刷する。

- 特定のルールで命名したファイル名の PDF ファイルを生成して、IFS 上の特定のフォルダーに保存する。
"ROBOT"は、必ず使用しないとならないというものではなく、Mapping のコマンドを既存の RPG や CL のプログラムの中に直接組み込むという方法もあります。ただ、"ROBOT" を使用すると移行が比較的容易かと思います。

他にも、スプールの前処理として、スプールの分割、結合や、スプール内のページの並べ替えが可能です。
AS/400 プリンティングに求められるソリューション 第7回 - Mapping Suite のお客様第1号 - の回でご紹介したケアコム様の例のように、"表紙" ページ用のスプールと、"明細" ページ用のスプールが分かれている場合、1つのPDF ファイルを生成するためには、スプールの結合が必要になります。また、ページ毎に各社員の給与明細が入った全社員分の1本のスプールを印刷していた業務を、社員毎の給与明細の PDF ファイル化に移行するには、PDF 化の前にスプールの分割が必要になります。
これらのような場合、既存のアプリケーションを変更できるのであれば、話しは簡単ですが、実際には、古くから使用しているアプリケーションだと、誰も手をつけられないとか、変更するための人手や時間が無いといったケースの方が多いと思います。そのために、Mapping V7 では、E-Documentというオプションの中で、スプールの分割、結合、並べ替えを行なうコマンドを用意しています。
また、帳票設計ツールである "MapDraw" には様々な設計機能を用意して、既存のスプールを元に、新しい帳票ができるようになっています。
スプールの分割/結合/並べ替えコマンドのパラメーター

他に大きな特徴として欠かせないのは、様々な言語のスプールに対応している点です。
これについては、AS/400 プリンティングに求められるソリューション 第9回 - Mapping Suite でできること-1 - の回の中でお話ししているので、ご説明を繰り返しませんが、他のソリューションには無い特徴です。
製造業のお客様だけでなく、他の業種の AS/400 ユーザーのお客様でも、日本以外の国に支社があったり、あるいはお客様があって、その国の方とコミュニケーションするために、日本語以外の言語のスプールを印刷したり、PDF ファイルにしたりする必要性は高まっていると思います。
"Mapping Suite" は、ユニコードを活用し、Windows のフォントを使用することで、お客様の AS/400 プリンティングにおける言語上の制約を解放します。
ただし、操作画面の言語は、日本語、英語、フランス語に限られます。また、画面上の文字数の制約から、日本語環境であっても、まだまだ英語しか表示できない画面があることも、残念ながら事実です。
Mappingコマンドの画面例(MAPCPYSPLF)







2017年10月21日土曜日

AS/400 プリンティングに求められるソリューション 第11回 - Mapping Suite とは- 1 -

"Mapping Suite" を使ってできることは、まだまだありますが、ここではどのようなソリューションなのかをご紹介いたします。
"Mapping Suite" は、フランス北部のリール(Lille、パリからTGVで1時間程度の距離)にある、Mapping 社で開発されたソリューションです。
Mapping 社は、元々、AS/400 関連の周辺機器、特にプリンターの販売会社だったのですが、1996年にオーナーの方が思い切って、大学卒業したばかりの若いエンジニアを採用して、AS/400 上で稼動するソリューション "Mapping Suite"を開発しました。それによって、ハードウェアの販売会社から、ソリューションとサービスの会社に、大きく業態を変えたのです。
これは、ちょうど私が経験した、2000年頃からライン・プリンターやドット・プリンターがそのまま後継機に置き換わらなくなって、お客様はプリンターのオープン化や、帳票の電子化を志向し始めたという現象が、フランスでは早めに起きていたこと、そして、Mapping のオーナーの方はいち早くそれを察知して、会社の業態をダイナミックに切り替えることに成功したことを意味していると思います。
同時に、AS/400のユーザーは、フランスでも日本でも同じような志向を持っていたという点は、おもしろいと思います。

Mapping は、初め SBCS のスプールにのみ対応していましたが、その後、2006年にユニコードに対応することで、DBCS のスプールにも対応しています。
また、2006年には、IBM のプリンティング・システムズ事業部とワールド・パートナー契約を締結して、フランス以外の国には、IBM が販売と保守を担当することになりました。そして、その契約が、インフォプリント・ソリューションズ社に引き継がれ、2008年には、日本でも発表されることになったわけです。
Mapping Suite のホームページでは、今現在、世界中で約 2,300社のユーザーが使用しているとのことです。
国内では、2008年の発表時点でのバージョンは、"V6" でしたが、その後、2015年3月に "V7" が発表されています。

"Mapping Suite"の最大の特徴は、AS/400で稼動することです。それによるメリットは次のようになると思います。
- Windows サーバーが不要です。
- お客様の RPG や CL のスキルを生かすことができます。
- Mapping は、OS/400 が元々持っている機能は活用するようにできていますので、プリンターへの印刷管理も従来どおり OUTQ によって可能です。
しかし、裏返すと、メリットも懸念点に繋がります。つまり、Mapping が行う処理は、AS/400 の CPU の負荷になるので、既存のアプリケーションの実行に影響を与える"可能性"があるということです。
(ただ、今まで国内で導入されたお客様で、実際に問題になったケースはありません。)

もう一つの大きな特徴は、出力先のプリンターのメーカーを問わないことです。
レーザー・プリンターや複合機であれば、PDF ダイレクト印刷機能、XPS ダイレクト印刷機能、あるいは PCL モードを持っていれば、LAN 直結で AS/400 から直接印刷ことが可能です。そして、それらの機能は、ほとんどのメーカーのプリンターや複合機では、標準、若しくは 2万円程度の安価なオプションとして用意されています。
なお、それらの機能が無い、若しくは今からオプションの追加ができない、設置済みのプリンターや複合機に対しては、オプションの"Mapping Virtual Printer"を使用すると、PC 経由にはなりますが、Windowsプリンター・ドライバーと Adobe Reader を使って、Mappingが生成した PDF を自動印刷することができます。"Mapping Virtual Printer"は、標準料金が 57,500円で、25個までのプリンター出力先を登録できます。つまり、Windowsプリンター・ドライバーを持ったプリンターなら、メーカーを問わず、AS/400 上の Mapping から自動印刷できるということです。
Mapping 処理の概略


2017年10月14日土曜日

AS/400 プリンティングに求められるソリューション 第10回 - Mapping Suite でできること- 2 -

"Mapping Suite" のライセンスには、帳票設計用のツールである "MapDraw"が付属しています。このツールは、Windows 上で稼動し、コピー・フリーです。従って、複数のメンバーの PC にインストールして、多くの帳票を複数のメンバーで分担して設計するといった使い方が可能です。
"MapDraw" の特徴の一つが、左右に2分割した右側の画面に、スプールや XML ファイルを表示しながら、帳票設計できる点です。XML ファイルは、そのまま直接読み込みますが、AS/400 上のスプールは、テキスト・ファイルに近い形式のファイルに変換して、IFS 上に書き出したものを読み込みます。
MapDraw の画面例

この "MapDraw" を使うと、従来の帳票をカット紙化したり、両面印刷できるようにするだけでなく、次のような、今までできなかった表現が可能になります。

1. Windows PC にあるフォントを使って帳票設計します。そのため、1つの帳票の中で、様々な書体のWindows フォントを、様々なポイント数(大きさ)で使い分けることができます。もちろん、今までどおり、情報を強調するための縦倍角や、横倍角も可能ですが、ポイント数や、太字、斜体等 Windows の世界では当たり前だった指定が、AS/400 の世界でも可能になります。
Meiryo 11P フォントとMS Gothic 10Pフォントの使い分け例

2. 条件設定機能があります。帳票設計全体に対しても条件付けできますので、例えば、請求書の"表紙"のページと、"明細"のページの設計を変えて1つの請求書の PDF とすることができます。
スプールの中の、表紙のページと明細のページのデータの違い、例えば、表紙のページには特定の場所に宛先住所の郵便番号の中の"-"が必ずあることに着目して、その有無を条件として、表紙用の設計を適用するか、明細用の設計を適用するかを指定します。
また、他にも、数字にマイナス記号が付いていたら赤色で表示するとか、データの存在する行のみ罫線を引くといった表現が可能です。
データのある行にのみ罫線を引くための条件付け例

3. データに対応したイメージを追加することができます。例えば、社員番号に対応した印影を追加する機能は、前々回のお話しでご紹介した"ケアコム"様の帳票で活用されています。他にも、部品番号に対して、その写真イメージや、図面イメージを追加して表現できれば、従来の帳票と比べて圧倒的に分かりやすい帳票に変化します。
これは、その設計と、それらのイメージを"データ.jpg"という JPEG 形式のファイルにして、IFS 上の特定のフォルダーの下に保存しておくことによって実現します。
データ"0776"を印影イメージで表示するための設計と、そのプレビュー画面

4. バーコードの指定が可能です。国内で使用されている1次元バーコードの他に、QRコードを含む2次元コードも簡単に指定できます。
1次元バーコードは、MapDraw と併せてご提供している1次元バーコード用の Windows フォントを使って表示します。
Mapping が生成する PCL データや PDF ファイルには、フォント・イメージを埋め込むことが標準となっています。そのため、設計する際に使用したバーコード用のフォントが入っていない PC 上でも同じようにバーコードが表示されます。
また、データのメモリーと結合機能がありますので、複数個所に分かれて存在するデータを結合して QR コードで表示することも可能です。
データ"07760001"をCODE39で表示するための設計と、そのプレビュー

2017年10月9日月曜日

AS/400 プリンティングに求められるソリューション 第9回 - Mapping Suite でできること-1 -


Mapping Suite は、どのような課題を解決するために役立つソリューションでしょうか ?

1. AS/400 上の既存のアプリケーションを変更すること無しに、連続用紙への印刷をカット紙に移行することができます。
特に、今は、罫線や固定文字が印刷された事前印刷用紙に、ライン・プリンターやドット・プリンターを使って、データを印刷しているような場合、例え、それが複写伝票であっても、白紙のカット紙への印刷に切り替えるのは、Mapping Suite の得意分野です。
そして、対応できるプリンターや複合機は、メーカーを問わないのも、大きな特徴です。
特に、PCL モードや、PDF ダイレクト印刷機能、XPS ダイレクト印刷機能を持つプリンターに対しては、AS/400 から、PC を介することなく、LAN 接続で直接印刷が可能です。

連続用紙への印刷からカット紙への印刷に移行することのメリットや、そのための注意点は、過去のお話で触れてきましたので、そちらをご参照ください。
ライン・プリンターの全て - 第15回 - 日本語ライン・プリンターを賢く使う-1
連続用紙への印刷から、カット紙への印刷に移行する -第6回 事前印刷用紙からの移行-
連続用紙への印刷から、カット紙への印刷に移行する -第7回 事前印刷用紙からの移行-
連続用紙への印刷から、カット紙への印刷に移行する -第1回 基本の考え方-
AS/400からの印刷 ~基礎編-8~
6枚複写の伝票から A4用紙 2枚への移行例

2. AS/400 上の既存のアプリケーションを変更すること無しに、帳票の PDF化ができます。今まで印刷していた帳票を PDF化すると、次のような運用が可能になります。

2-1. バインダーに綴じて保管していた伝票の控を PDF化して、ファイル・サーバーに保管する。
その結果、次のようなメリットが考えられます。
-> 保管スペースの大幅な削減。
-> 検索のための時間(手間)の削減。
-> 保管先フォルダーを分けて、フォルダー毎にアクセス管理を行なうことによる、セキュリティ管理の強化。
-> PDFファイル自体に管理用のパスワードを付与することによる、セキュリティ管理の強化。
IFS 上に生成されたPDFをファイル・サーバーに転送して保存

2-2. 印刷した帳票を封筒に詰めて郵送していた業務を、PDFファイルを添付したメール送信に移行する。
その結果、次のようなメリットが考えられます。
-> 印刷代、郵送代の削減。
-> 手作業による封筒詰めに伴う手間と、ミスの発生の削減。

2-3. 印刷した帳票を FAX 送信していた業務を、PDFファイルを使った FAX 自動送信に移行する。
PDFを使った FAX 自動送信は、クラウド・サービスを使用するものと、複合機の各メーカーが用意している FAX送信ソリューションを使うものの 2つの方式に分かれます。
前者は、クラウド・サービスを提供しているサービサーから指定されるメール・アドレス宛に、PDFを添付ファイルとしてメール送信する方式です。その場合、FAXの宛先番号の指定方法は、PDFのファイル名に含める方式や、別に添付するテキスト・ファイル内に記載する方式などがあります。
後者は、WindowsServer 上で稼動する FAX送信ソリューションが指定するフォルダーに対して、宛先番号を含むファイル名を付けた PDFを、AS/400 から FTP送信すると、複合機から電話回線を使って FAX送信されるという方式です。
どちらの方式でも、次のようなメリットが考えられます。
-> 印刷する必要が無いので、印刷のための時間(手間)や、用紙代等のコストの削減。
-> FAX 送信のための作業が削減されるだけでなく、送信先が自動的に指定されるので、誤送信が削減できる。
PDFを使った FAX 自動送信ソリューションの例

2-4. AS/400 上で PDFが生成されたら、リクエストしたユーザーの PCにFTP送信して、その PC上の予め決めたフォルダーに保存する。
この考え方は、2-1. の集中管理方式とは異なり、各ユーザーが個人で管理する方式です。特に、Mappingの事例でご紹介している"漁船保険中央会"様(その後、日本漁船保険組合に移行)では、各ユーザーのPCにバッチ・プログラムを用意しておいて、PDFを受信すると Adobe Readerが自動的に起動して、そのPDFを画面表示するという運用に切り替えていらっしゃいます。
-> ユーザーは、印刷結果が必要な場合には、Adobe Readerの検索機能を使って、該当するページのみを、通常使用しているプリンターから印刷させるようになりました。それまでの自動的にドット・プリンターに印刷されていた運用と比べると、大幅な用紙の削減が可能になったということです。当然、業務用に設置されていたドット・プリンターは、廃止となっています。

3. 各国語のスプールに対応して、上記のカット紙への印刷や、PDF化が可能です。
文字コードを AS/400 標準の "EBCDIC" から"ユニコード"に変換して処理するため、日本語以外の各国語のスプールに対応します。その結果、次のようなメリットがあります。

3-1. 国内にある AS/400 から海外に設置されて LAN 接続されたプリンターに、現地の言語、あるいは日本語の印刷が可能です。
-> AS/400 からプリンター・セッションを経由した日本語の帳票を印刷するには、日本語のフォントを内蔵していたプリンターが必要ですが、海外では入手できません。そのため、国内から現地に持ち込んで使用されているお客様もあるくらいです。
Mapping が生成する PCLモードの印刷データには、日本語のフォントのイメージを含んでいますので、日本語フォントを内蔵していない PCLモードのプリンターでも日本語の帳票が印刷できます。
また、PDFにも文字コードと一緒にフォント・イメージを埋め込んでいますので、日本語フォントを持っていない PC 上でも、日本語を表示します。
-> 同じ理由で、現地の言語やフォントを使った印刷や、PDFが可能です。
特に、入力データとしてスプールの代わりに、XMLファイルを使用すると、複数の言語を共存させることが可能です。
Mapping の事例でご紹介している "JFC ジャパン"様では、英語とフランス語の併記が必要なカナダ向けのラベルの印刷を、XML ファイルを元に、Mapping と ZEBRA 社のラベル・プリンターで実現されています。
XML ファイルを使ったタイ語と簡体字の共存の例

2017年10月1日日曜日

AS/400 プリンティングに求められるソリューション 第8回 - Mapping Suite のお客様第2号 -

前回のお話でご紹介したケアコム様と並行して、"滝川"というお客様にも Mapping をご提案していて、ほぼ同じ頃にご契約いただきました。
"滝川"様は、理容・美容・エステ・ネイルの用品、機器、設備の総合商社です。日本に"エステティック"という言葉を初めて導入したとのことです。
"滝川"様が、Mapping をご契約いただくに至った大きな動機は、印刷コストの削減です。
公開されている事例に記載されているように、AS/400 からの出力用に使用されていたライン・プリンターが 7台、ドット・プリンターが 30台あり、3年以内に全てが更新の時期を迎えていました。
Mapping 導入後の Mapping セミナーでは、実際にお客様にご講演いただいたのですが、その中でお客様は、次のようにおっしゃっていました。

- システム部の悲しい性(さが)として、内部処理をどれだけ改善しても、ユーザー部門から評価されない。

- それならば、効果が見えやすい画面と帳票を改善しよう。

- ライン・プリンターとドット・プリンター(合計 37台)を新しいモデルに置き換えるだけでは、約3,000万円の費用が掛かることが見込まれる。それならば、これを機に"A4 サイズ・カット紙を中心とした出力環境の移行を検討しよう。

このように考えて、様々な帳票ソリューションを検討されたそうです。その中で、Mapping をご採用いただいた理由は、他のほとんどのソリューションが、Windows Server を建てる必要があるのに対し、Mapping は、AS/400 の中で処理が完結するため、Windows Server が不要な点でした。
カット紙化するために導入されたレーザー・プリンターは、印刷速度が 75ページ/分や 50ページ/分の高速機やデスクトップ型のものと併せて、22台です。この台数になったのは、従来よりも印刷速度が高速化できたことによる、プリンターの集約化の効果によるものです。
更に、配送センターには 5台のラベル・プリンターも導入しても、導入費用を半額に抑えることができました。

コストの削減という観点では、用紙コストの削減も見逃せません。従来のストック・フォームや、納品書等の複写伝票が、安価なA4 サイズや A3 サイズのカット紙に切り替わったこと、明細帳票や保存資料には、できるだけ両面印刷を活用して印刷枚数を削減することにより、インク・リボン代よりもトナー代が高くなったことも含めても、年間 200万円以上のランニング・コストの削減ができたとのことです。

特に"両面印刷"については、お客様の次の言葉が印象に残っています。
1. 従来の連続用紙の良いところは、印刷後の用紙がまとまっていることであり、それに対してカット紙は、大量に印刷した後の用紙の取り扱いに注意しないと、大変なことになる。カット紙の欠点を防ぐには、プリンターのオプションの機能を使って、印刷後に自動的にステープル止めすることにする。

2. 社内向けのストック・フォームに印刷していた帳票を A4サイズ用紙を横長に使用して印刷させてみたところ、ユーザー部門から、文字が小さくなって見え難くなったというクレームになった。そこで、一部の帳票は、ストック・フォームとサイズが似ている A3サイズのカット紙に移行することにした。

3. 社内向けの帳票は、両面印刷にすることによって、用紙の枚数を半減させることができる。ただし、ステープル止めのスペースを取るために、奇数ページは左余白、偶数ページは右余白を大きめに取るように帳票設計したい。->これは、MapDraw の両面印刷用の設計機能を使って、簡単に実現できました。(参照->連続用紙への印刷から、カット紙への印刷に移行する -第5回 縮小して両面印刷する-)

講演では、お客様はその他にも良かった点として、次のことをおしゃっています。
1. 5250 端末でのプリンタ制御が不要になった。つまり、現場は、端末の操作、メッセージの応答、OUTQの操作等を全く意識する必要が無くなり、負担が減った。

2. プリンター資源が統合、用紙在庫のスペースや、書類の保管スペースが削減できた。つまり、A4 サイズ用紙はストック・フォーム(汎用用紙)の半分の大きさで、両面印刷も可能である。

逆に、ご苦労された点としては、次の点を上げられました。
A4サイズに拘ったが故にプログラムの修正が発生した。
1. ストック・フォーム -> B4、A3用紙への移行は、用紙サイズがほぼ同じだったため、楽だった。

2. ストック・フォーム -> A4用紙への移行には、CL プログラム(OVRPRTFコマンド)の修正が必要だった。
具体的には、基幹システムの帳票が 1400本あったため、8人の要員で、その他の業務を行ないながら、3か月掛かった。

そして最後には、次のようにおっしゃって、締めくくっていただきました。
- Mappingは安心して、導入できるソフトウェア

- 舗装された道は、既に出来上がっている。

- あとは、そのルートに乗っかるだけ!
Mappingを使った滝川様の印刷システム

2017年9月22日金曜日

AS/400 プリンティングに求められるソリューション 第7回 - Mapping Suite のお客様第1号 -

東京で行なった研修の最後に、Stephane さんは、私たちに大変心強い言葉を残してくれました。
それは、"Mapping は、永年の間、AS/400 のお客様からのご要望を取り入れて機能拡張を積み重ねてきたものです。だから、日本の AS/400 のお客様のやりたいことも、実現できるはずです。お客様から Mapping でこんなことができるか ? と聞かれたら、先ず Yes と答えてください。どうやって実現するかは、私も一緒に考えるから。" というものでした。
プリンターに関しては、経験を積んできていた私たちですが、ソリューションをお客様に提案し、導入し、日常業務で使用していただくという経験は、ゼロと言って良い状態でした。そのため、研修を受けた後は、大海原にボートで漕ぎ出すような心持でしたが、そんな不安を Stephane さんの言葉が解消してくれました。

実際、2008年に発表して提案活動を行なっていく中で、ナース・コールのシステムを中心に製造販売している"ケアコム"というお客様から、次のような課題をいただきました。
そして、Stephane さんからアドバイスをいただきながら、課題を解決していき、最終的にはもう1件の別のお客様とほぼ同時に、初めてご契約いただく運びとなりました。
その課題とは、次のとおりです。

<現行の運用>
1. 営業担当者がお客様に提出する見積書の印刷。
2. 表紙と明細の 2 種類の事前印刷用紙(連続用紙)に、ドット・プリンターを使って印刷している。(AS/400 からプリンター・セッション経由の印刷)
3. 用紙の架け替えの手間を省くため、表紙印刷用と明細印刷用の 2 台のプリンターを使用している。つまり、スプールも、表紙用と明細用に別々となっている。
4. 印刷後、用紙を 1 枚ずつ切り離した後、印刷された見積り番号を頼りに、表紙と明細を組み合わせる作業が発生している。

<課題>
1. ケアコム様では、お客様先でも見積りを作成できるように、営業担当者にモバイル環境が提供済みとなっている。
2. しかし、見積り書は営業所に設置されたプリンターでないと印刷できないため、見積り書を提出するためには、営業所に戻らないとならない。そのため、モバイル環境の効果が十分発揮できていない。
(四国では、営業所が 1 箇所しかないため、お客様の場所によっては、提出までかなりの時間が掛かっているとのことでした。)
3. 別々のプリンターで印刷された表紙と明細を、見積り番号を使って組み合わせるため、ミスが起きることがある。

<要件>
1. 現行のアプリケーションを変えずに、見積りと明細をセットにした 1 つの PDF ファイルを生成する。
2. PDF のファイル名には、スプールの中に見積り番号を使用する。
3. 表紙には、担当者と上司が押印していたが、PDF ファイルでは、印影が付いた状態とする。(見積り番号の先頭の 4 桁が社員番号)
4. 提示金額が消費税込みの見積りと、そうでない見積りの 2 種類がある。現行では、表紙に消費税込みであることを事前印刷していて、そうでない場合は、その上に "====" を印刷して消している。PDF ファイルでは、消費税込みか込みではないかの文章を切り替えて表示したい。

<技術的な課題>
要件の "2", "3", "4" は、Mappingの帳票設計ツールである "MapDraw" の機能を使えば簡単に実現できるのですが、"1" は難しいものがありました。
具体的には、表紙用の OUTQ と明細用の OUTQ に同じ見積り番号のスプールが同時に書き込まれるわけではないため、必ず両者のスプールが揃った時点で、Mapping がスプールを結合しないとなりません。しかし、Stephane さんのアドバイスをいただいて CL を用意し、解決することができました。
ケアコム様のお話では、2002年頃から各社に声を掛けてソリューションを探してきたのですが、この課題を解決できる会社が見つからなかったとのことです。
Mappingによる処理概念-1



Mappingによる処理概念-2

<効果>
ケアコム様の具体的なお話は、Mapping Suite の事例のサイトでご覧いただけます。
導入の効果として、見積書をお客様にメール送信できるようになったり、家庭のプリンターでも印刷できるようになったことによって、営業担当の方の時間の余裕ができて、訪問件数が 30% 増えただけでなく、時短にも繋がったとのことです。
もちろん、ドット・プリンターの維持費や用紙代の削減も実現しています。
それだけでなく、情報システム部が新たに導入したシステムの中でも、ユーザーに感謝された稀有なケースだとも、お客様はおっしゃっていました。
ケアコム様見積り書表紙イメージ
ケアコム様見積り書明細イメージ

2017年9月9日土曜日

AS/400 プリンティングに求められるソリューション 第6回 - Mapping Suite 準備開始 -

"POST2008" の翌週に行なわれた、Infoprint Solutions 社の SE に対する研修の様子を、前々回に掲載しましたが、日本からは私と、もう 1 名のSE が参加しました。
実習のために、自分のPCを持ち込み、会場に設置された AS/400 と接続するのですが、私の隣の 2 名の若いロシア人の画面を覗くと、AS/400 の中に入り込んで、何か実習とはまったく別のことをやっているようでした。逆に、Mapping 社から講師の Stephane さんの他に、助手として参加していたアメリカ人の Don さんは非常に真面目な方で、各人の PC の画面を見ながら、"ブラウザーの画面を閉じて" とか、"メールは止めて" と注意して、研修に集中するように促していたことを覚えています。 (Don さんは、元 IBM 社員。)
一口に外国人と言っても、一人一人は、実に様々な個性の持ち主で、皆違うのだと印象付けられました。


新生 Infoprint Solutions Company の全体集合研修である "POST" は、その費用のためか、2007年と 2008年の 2回で終わってしまいましたが、"POST2007" でのデモを切っ掛けとして、日本でも "Mapping Suite" を 2008年に発表するための準備が始まりました。社内調整は別として、主な作業は次のとおりです。
1. 翻訳
画面やメッセージの文字、マニュアル、ヘルプを日本語に翻訳します。1 回目の翻訳は、翻訳サービスの会社に依頼しましたが、OS/400 を始め他のソフトウェアで使用している用語との整合性のために、自分たちで修正することも必要でした。
例えば、表記に関しても、"property" は、IBM の翻訳ルールに従えば、"プロパティー"となりますが、Windows の世界では"プロパティ"なので、最終的には"プロパティ"とするといった注意です。

2. 検証テスト
Mapping 社からは、ユニコードを使用しているので、日本語のスプール・データにも対応していると聞いてはいたのですが、実際に自分たちで検証する必要があります。しかし、いくら基礎研修を受けたとは言え、初めは私たちも手探りの状態で使い始めたため、何度も Mapping 社のエンジニアの方と英文のメールやファイルのやり取りを行いました。その結果、Mapping のプログラムに修正が入ったこともありますし、Mapping 社では気づいていなかった注意点を私たち側で見つけたこともあります。具体的には、次の点です。
- OS/400 上の Mapping の実行環境のCCSIDのみは、"5035" にセットすること。
CHGJOB CCSID(5035)の実行

- その上で、半角カナ文字と英小文字の文字化けを防ぐために、Mapping のコマンドのパラメーターの一つとして、"コード・ページ"を "290" か"1027" に指定すること。
MAPCPYSPLFコマンドの中のコードページ指定
- Mapping コマンドを実行する端末画面の"コード・ページ"は、"939"か"1399"にセットすること。
5250端末画面の通信の設定

この翻訳や検証テストを行なっていくことで、Mapping を日本国内で担当する SE としてのスキルが身についていったわけです。
Mapping の研修としては、"POST2008" 以外に、その直後の 2008年 4月には東京で、オーストラリアも含むアジア・パシフィック各国の Infoprint Solutions 社の SE 向けの研修を行なっています。
その際に、やはり講師となっていただいた Mapping 社の Stephane や Nathalie さんには、日本のメンバーに対しても、追加の研修を行なっていただきました。
更に続けて、同じ 2008年の 5月には、私と、もう 1名の SE が、Mapping 社があるフランスのリール(Lille)に行って、研修を受けています。

そのような積み重ねと営業努力の結果、2008年中に製品発表を行ない、2008年末には第 1 号のお客様に契約をいただくことになったのです。

2017年9月2日土曜日

AS/400 プリンティングに求められるソリューション 第5回 - POST2008でのMapping Suite -

2008年の "POST2008" の始まる前に、私たち、参加する社員は、社員番号と姓名(アルファベット)を提出するよう求められました。初めは、単に参加者リストを作るためと軽く考えていましたが、実際にはそうではありませんでした。
ホテルの会場の入り口に、空港にある金属探知機のようなゲートがあって、事前に配布された参加カードを持って各人がそこを通過すると、自動的にチェックインする仕組みができていました。これは、参加カードに、社員番号の情報を持った IC タグが埋め込まれていて、ゲートを通ると、RFID を使ってセンサーがそれを検知し、出席記録に書き込まれるという仕組みです。そして、その仕組みを実現するためのソリューションとして、"Mapping Suite" と "InfoPrint 6700" プリンターが使用されました。

"Mapping Suite" の持っている次の機能を活用していました。
1. 提供された、参加する社員の情報(社員番号と姓名)が入った CSV 形式のファイルに対して、帳票設計を行ない、InfoPrint 6700 プリンターが持っている "IGP" 形式の印刷データを生成して、参加カードを印刷する。

2. 帳票設計する際に、特定の箇所のデータ(社員番号)を参加カード内の IC タグに書き込むことを指定する。その結果、InfoPrint 6700 プリンターで参加カードを印刷する際には、同時に IC タグに社員番号を書き込まれる。

3. 特定の箇所のデータ(社員番号)に対応するイメージを追加して印刷する。その結果、私たち日本からの参加者のカードの表面には、日本の地図のイメージが、一緒に印刷されていました。
(参加カードを残さなかったので、お見せできなくて残念です。)

更に、後になって、Mapping社の Stephane さんから、次のように裏話をお聞きしました。
- 開始日の 3 日ほど前に、Stephane さんが現地入りして、この仕組みを用意した。
- 通常では 3 日程度では、ここまでの仕組みはできない、つまり、いかに Mapping Suite が、構築が容易で、高機能かということの証明となっている。
このように、自慢していました。

ちなみに、InfoPrint 6700 プリンターは、Printronix 社からの OEM 製品で、"ラベル・プリンター"という範疇に含まれます。
InfoPrint 6700 プリンター

ここで、簡単に、ラベル・プリンターは、他の種類のプリンターと比べてどこが特徴なのかをお話しします。
- 使用する用紙は、細長い台紙にラベルが1枚ずつ並んで配置され、ロール状や折りたたんだ状態になったものです。
ラベル用紙(ロール状)イメージ

- ほとんどのラベル・プリンターは、熱転写方式で印刷します。熱転写方式とは、1 ドット単位で熱を発生する素子が、フィルム上のインクに熱を与えると、その箇所だけインクが溶けて紙に印刷されるという印刷方式です。家庭用の FAX や、自動券売機で発行される切符等にも使用されています。
インパクト・プリンターのインク・リボンと異なり、インク・リボンの中の印刷に使用した箇所は、インクが抜けて透明になっていますので、繰り返し使用することはできません。その代わり、印刷後のインク・リボンを取っておくと、何を印刷したかの記録になります。
インク・フィルム・リボン

- ラベル・プリンターには、標準、若しくはオプションでカッターが付いていますので、印刷後に、ラベルを1枚ずつ自動的にカットすることができ、コマンドを使って制御することが可能です。

- 機種によっては、ラベルに埋め込まれた IC タグに情報を書き込む機能を持っています。

- InfoPrint 6700 では、OEM 元の Printronix 社の標準の、"IGP" という形式の印刷コマンドをサポートしている他に、同じ US のラベル・プリンター・メーカーである ZEBRA 社、日本の "SATO"、"TEC" 各社のコマンドもサポートしています。特に、ZEBRA 社の印刷コマンドでは、文字をイメージとして扱うこともできますので、Mapping Suite からは、日本語のラベルの印刷に使用できます。

2005年頃には、IBM として発表した RFID に対応するラベル・プリンターを、日本でも発表するかどうかと検討を行なったことがあります。しかし、国内で使用許可された周波数の規格との不一致、ラベル・プリンターの IC タグにデータを書き込むためのソリューション、もちろん日本語対応したものを特定することができず、発表を断念したという経緯があります。

なお、余談ですが、ラベルの印刷は、他にもインパクト・プリンターや、レーザー・プリンターでも可能です。
しかし、レーザー・プリンターでは、トナーを用紙に定着させる際に、紙の厚さが均一であることや糊が表面にはみ出てこないが求められます。そのために、台紙が見えないように、ラベルの周囲の紙も残してある状態になっている必要があります。
レーザー・プリンター用ラベル紙イメージ(A4サイズ10面の例)
そのような用紙に印刷したラベルと、細長い用紙に1枚ずつ並んだラベルとでは、剥がし易さや無駄が出るかどうかが、大きく異なるのではないでしょうか ?
印刷速度や印刷品質(解像度)では、レーザー・プリンターの方が優れていると思いますが、現場ではラベル・プリンターが多く使用されていることの理由は、その辺りにあるのではないかと思います。

2017年8月26日土曜日

AS/400 プリンティングに求められるソリューション 第4回 - Mapping Suite との出会い -

2007年1月に発表された IBM プリンティング・システムズ事業部の売却に伴い、当時、プリンティング・システムズ事業部に所属する社員は、他の部署への異動は許されず、そのまま6月に発足する新会社に転籍するか、退職するかの選択を迫られました。
結局、私も含めてほとんどの社員が転籍を選択することになりましたが、恐らくそのような社員のモチベーションの維持、高揚を目的としたものと思われる "POST2007" というイベントの案内が届きました。
これは、ワールド・ワイドの IBM プリンティング・システムズ事業部の社員を、事業部の本社がある US のコロラド州、Boulder(ボルダー) に集めて、研修を行なうという企画です。2月12日から19日に掛けて 1 週間もの海外出張は、私にとっても初めての経験でしたので、やはり、ドキドキ、ワクワクしました。
会場となったホテルでは、営業向け、ITS(IT スペシャリスト)向け、あるいは共通の様々な研修コースが用意されていました。その後は、社長となる Tony Romero(トニー・ロメロ) のスピーチや懇親会があったりと、盛り沢山のメニューが詰まっていました。
集合研修会場の様子
研修の他には、製品のデモ・コーナーもあって、セッションの合間に自由に見学することができました。プリンターの新製品だけではなく、ソフトウェアのデモも行なわれていましたが、その中のベンダー・ロゴ製品の中に、美男美女の組み合わせでデモを行なっていた "MappingSuite" という製品があることに気づきました。
デモ会場の様子

従来、プリンティング・システムズ事業部の開発するものも、販売するベンダー・ロゴ製品も、ワールド・ワイド対応のソリューションは、全てと言って良いくらい、AFP を対象としたもので、しかも日本語対応されていないものが多かったのですが、この "Mapping Suite" は、AS/400 上の、日本語む含めた SCS スプール・データを対象とした帳票ソリューションであること、しかも、OS/400 上で稼動することが、その説明を聞いている中で分かってきました。デモを見たり、説明を聞きながら、これを日本でも発表して扱うようにすれば、インパクト・プリンターからレーザー・プリンターや電子保存に移行したい、AS/400 のお客様にご提案していけるのはないかと確信を深めていきました。

帰国後に調べたところ、"Mapping Suite" に関しては、元々、Mapping社が、2006年に当時の IBM プリンティング・システムズ事業部とパートナー契約を結んでいて、Infoprint Solutions社もそれを引き継いでいることが分かりました。
そこで、国内で販売できるようにするための予算(主に、マニュアルや画面の翻訳)や人員の手当てに対する社内の承認を得て(これが大変だったのですが、"Mapping Suite" を扱うことが当時の社長の思いと一致したことが、大きく寄与しました。)、準備を進めていきました。

翌年の 2008年1月28日からも1週間に渡って、2度目の "POST" である"POST2008" が行なわれたのですが、その次の週に、Boulder の他のホテルに会場を移して、"Mapping Suite" の SE 向けの研修が実施されることとなり、これに私も参加することができました。
会場には、AS/400 も用意され、各自の PC を接続して実習できるようになっていました。3日間のコースでしたが、ここで基本を理解し、その後、東京でもアジア・パシフィック向けの研修コースを行なうこととなり、より理解を深めることができました。また、同時に、講師となった Mapping 社のStephane さんとの交流を始めることができたのも、大きな収穫でした。
Mapping Suite 研修会場のホテル(歓迎 インフォプリント・ソリューションズと書かれている)
Mapping Suite 研修会場の様子


2017年8月12日土曜日

AS/400 プリンティングに求められるソリューション 第3回

2002年のアンケート調査と、2010年のそれとを単純に比較はできませんが、それでも 8 年が経過したことによる変化は窺えます。

1. 帳票設計は、2002年では、90% 以上の会社では、APW も含めたコマンドのコーディングで行なっていました。
しかし、2010年では、その比率は 80% に下がって、新たに、帳票ソリューションを使う会社が出てきて、その比率が 16% となっています。

2. 今後の予想では、増強やプリンターの LAN 接続化も含めた現状維持派が、2002年では 50% 以上ありましたが、2010年では、44% に減っています。

3. 電子化や Web 対応等の手段によって印刷量を削減(廃止)する派は、2002年の 44% ですが、2010年では 47% と大きくは変化していません。

業務で使用しているアプリケーション・プログラムに大きく手を入れないで、帳票の電子化や、レーザー・プリンターへの移行(カット紙化)を実現するには、何らかの帳票ソリューションが必要になります。
つまり、罫線や固定文字が事前印刷された複写伝票への印刷を、電子帳票やレーザー・プリンターによるカット紙への印刷に移行するには、アプリケーション・プログラムから吐き出されるスプール・データに含まれていない、罫線やタイトル等の固定文字も印刷データに含める必要があり、それを実現するのが、帳票ソリューションの役割と言えます。
6P複写伝票のカット紙化例

逆に、白紙の応用用紙に、罫線や固定文字も含めた全ての印刷データをインパクト・プリンターで印刷しているのが現状であるならば、プリンター・セッション経由の印刷、もしくは HPT 機能を使った LAN 直接接続された PAGES レーザー・プリンターで、縮小印刷や両面印刷指定に移行すれば済んでしまいます。
連続用紙への印刷をそのままカット紙に縮小印刷

では、その帳票ソリューションを選択するたに当たって、何を選択基準とするかを、2010年にお聞きしています。

4. 最優先は価格であると約半分の方が回答しているのは、もっともと思いますが、次に重視するのは、OS/400 上で稼動するのか、WindowsServer の 上で稼動するかと言う点です。
約 20% が、稼動 OS を重視すると回答している割に、OS/400 上が良いか、WindowsServer 上が良いかをお聞きすると、"どちらでも良い"という回答が、44% にもなっています。
私自身は、統合サーバーである AS/400 の強みや、WindowsServer を立てた場合の管理コストを考えると、"OS/400" が 33% という数字は、意外に小さいと感じました。

ともあれ、2010年になると、ユーザーへのアンケートでも、私自身の日々の活動の中の実感としても、帳票ソリューションの存在が大きくなってきていたことは、確かと言えます。
そして、その背景には、明らかに、電子化や、メーカーに拘らないレーザー・プリンター化による"コスト削減"という、お客様の課題があることも確かと言えます。

初めてアンケートを取った 2002年から、2度目にとった 2010年までの間には、私にとって大きな変化がありました。それは、2007年6月の、インフォプリント・ソリューションズ社の設立です。
IBM は、PC 事業に続いて、プリンティング・システム事業を売却し、2007年から 3年間は株式会社リコーとの合弁会社として、インフォプリント・ソリューションズ社を設立したのでした。

発足当初、日本の社長が挙げた 3つの課題の1つが、「オープン環境の印刷において、何をご提案していくか」というものでした。それに対して、正にこの"帳票ソリューションの提供"が回答になっていくわけです。
背景として、ライン・プリンターやドット・プリンターが大きな比率を占めていたビジネス・モデルが通用しなくなっていく時代の変化に対応するために、印刷量を減らしたい、あるいは、メーカー縛りから脱却したいお客様に受け入れていただける、従来とは異なる新しいご提案ができないとならないという差し迫った状況にあるという認識がありました。
そして、自社製プリンターを選択していただける何の保証も無いオープン環境においては、独自の帳票ソリューションをご採用いただくことによって、お客様の印刷データの大元を押さえるという考え方にたどり着きました。
その切っ掛けは、新会社発足当初に行なわれたイベントでの製品デモでした。

2017年8月6日日曜日

AS/400 プリンティングに求められるソリューション 第2回 - 2010年のお客様状況 -

前回ご紹介した 2002年のアンケート結果では、ライン・プリンターもまだ Twinax 接続で使用されているお客様が半数以上でした。
2002年の頃を振り返って見ると、AS/400 が Twinax 接続標準から LAN 接続標準に移行していく中で、対応するプリンターも、LAN 接続でも双方向通信が可能で、Twinax 接続からの移行の受け皿となる Telnet5250E に対応するものとして、連続用紙用レーザー・プリンターのInfoPrint250(5300-025) と、ライン・プリンターの標準モデルである 5400-006 の LAN カード付きモデルが発表されたのが、2000年でした。
InfoPrint250(5300-025)
Telnet5050E 対応のライン・プリンターの高速、中速、低速モデルのライン・アップとして、5400-L10、5400-S06、5400-L02が揃ったのが、2002年です。
また、ドット・プリンターを Telnet5250E に対応させるためのオプション、5400エミュレーターが翌年、2003年に発表されていますから、この頃のプリンターは、Twinax 接続から LAN 接続に徐々に切り替わっていく時代と言えるかと思います。

しかし、同時に、半数近くのお客様は電子化やレーザー・プリンターへの移行を指向していたことが分かります。私自身にも、古くなって保守も終了したライン・プリンターを、LAN 接続の新しいライン・プリンターに置き換えるお客様の比率が減っているという実感がありました。レーザー・プリンターへの移行と言っても、AFP だけでなく、PAGES モードを持つ小型の IBM レーザー・プリンターですら、お客様には"高い"と言われ、十分に受け皿になっていないという実感もありました。

今にして見れば、その頃から、メーカー縛りが無く、価格の安いレーザー・プリンター(消耗品コストは、インパクト・プリンターに比べて高くなりますが)に印刷できるようにするために、所謂"帳票ソリューション"を導入されるお客様が増えてきたのではないかと考えています。それらのソリューションのほとんどが、次のような処理を行いますので、Windowsのプリンター・ドライバーさえ持っているプリンターであれば、制約は無かったのです。
- AS/400 上のスプール・データを、例えば csv 形式のファイルに変換します。
 -> それを、Windowsサーバーに送信します。
  -> Windowsサーバー上で帳票イメージを作成して、プリンター・ドライバーを使って印刷します。

そこで、その後のお客様の変化を知るために、2010年4月に同様なアンケートを実施しました。その結果は、次のとおりです。

- 調査時期 : 2010年4月
- 有効回答社数 : 70社

1. AS/400 からの印刷に使用しているプリンター
1-1. ライン・プリンター    Yes : 58%    No : 36%    不明 : 6%
1-2. レーザー・プリンター    Yes : 66%    No : 24%    不明 : 10%
1-3. ドット・プリンター    Yes 74%    No : 20%    不明 : 6%
使用しているプリンターの種類

2. 帳票設計
2-1. RPG/COBOL, DDS でコーディングしている : 64%
2-2. APW も使用している : 16%
2-3. OS/400 上で稼動する帳票ソフトを使用している : 12%
2-4. Windowsサーバー上で稼動する帳票ソフトを使用している : 4%
2-5. 印刷しない : 4%
2-6. 不明 : 4%
帳票設計

3. 5年後の予想
3-1. 現行のまま継続する : 33%
3-2. 電子化により印刷量を削減する : 31%
3-3. 複写帳票を廃止してレーザー・プリンターへ移行する : 16%
3-4. 既存帳票は継続し、新規帳票は帳票ソリューションを使用する : 7%
3-5. AS/400 を廃止して Windowsサーバーへ移行する : 6%
3-6. 現行方式を維持し、増強する : 4%
3-7. その他、不明 : 3%
5年後の予想

4. 帳票ソリューション
4-1. 使用中のものへの満足度    満足 : 40%    不満足 : 23%    不明 : 37%
4-2. 選択のために重視する    価格 : 48%    稼動 OS 種類 : 20%    設計機能 : 13%    導入実績 : 9%    不明 : 10%
4-3. 稼動 OS : どちらでも良い : 44%    OS/400 : 33%    Windowsサーバー : 17%    不明 : 6%
帳票ソリューションについて