始めの言葉

「プリンターから印刷できて当たり前」と、ユーザーからもSIerからも軽視されがちなプリンターの世界ですが、実際にはお困りだったり、思ったような印刷結果が得られないまま我慢してお使いの皆様のために、今までの経験が役立てばと、このブログを立ち上げました。印刷の基本から、応用情報、問題の解決方法を情報発信すると共に、PDF化など、これからどうするかについても、ご相談に乗れれば幸いです。ご質問はコメントでお寄せください。

2017年9月22日金曜日

AS/400 プリンティングに求められるソリューション 第7回 - Mapping Suite のお客様第1号 -

東京で行なった研修の最後に、Stephane さんは、私たちに大変心強い言葉を残してくれました。
それは、"Mapping は、永年の間、AS/400 のお客様からのご要望を取り入れて機能拡張を積み重ねてきたものです。だから、日本の AS/400 のお客様のやりたいことも、実現できるはずです。お客様から Mapping でこんなことができるか ? と聞かれたら、先ず Yes と答えてください。どうやって実現するかは、私も一緒に考えるから。" というものでした。
プリンターに関しては、経験を積んできていた私たちですが、ソリューションをお客様に提案し、導入し、日常業務で使用していただくという経験は、ゼロと言って良い状態でした。そのため、研修を受けた後は、大海原にボートで漕ぎ出すような心持でしたが、そんな不安を Stephane さんの言葉が解消してくれました。

実際、2008年に発表して提案活動を行なっていく中で、ナース・コールのシステムを中心に製造販売している"ケアコム"というお客様から、次のような課題をいただきました。
そして、Stephane さんからアドバイスをいただきながら、課題を解決していき、最終的にはもう1件の別のお客様とほぼ同時に、初めてご契約いただく運びとなりました。
その課題とは、次のとおりです。

<現行の運用>
1. 営業担当者がお客様に提出する見積書の印刷。
2. 表紙と明細の 2 種類の事前印刷用紙(連続用紙)に、ドット・プリンターを使って印刷している。(AS/400 からプリンター・セッション経由の印刷)
3. 用紙の架け替えの手間を省くため、表紙印刷用と明細印刷用の 2 台のプリンターを使用している。つまり、スプールも、表紙用と明細用に別々となっている。
4. 印刷後、用紙を 1 枚ずつ切り離した後、印刷された見積り番号を頼りに、表紙と明細を組み合わせる作業が発生している。

<課題>
1. ケアコム様では、お客様先でも見積りを作成できるように、営業担当者にモバイル環境が提供済みとなっている。
2. しかし、見積り書は営業所に設置されたプリンターでないと印刷できないため、見積り書を提出するためには、営業所に戻らないとならない。そのため、モバイル環境の効果が十分発揮できていない。
(四国では、営業所が 1 箇所しかないため、お客様の場所によっては、提出までかなりの時間が掛かっているとのことでした。)
3. 別々のプリンターで印刷された表紙と明細を、見積り番号を使って組み合わせるため、ミスが起きることがある。

<要件>
1. 現行のアプリケーションを変えずに、見積りと明細をセットにした 1 つの PDF ファイルを生成する。
2. PDF のファイル名には、スプールの中に見積り番号を使用する。
3. 表紙には、担当者と上司が押印していたが、PDF ファイルでは、印影が付いた状態とする。(見積り番号の先頭の 4 桁が社員番号)
4. 提示金額が消費税込みの見積りと、そうでない見積りの 2 種類がある。現行では、表紙に消費税込みであることを事前印刷していて、そうでない場合は、その上に "====" を印刷して消している。PDF ファイルでは、消費税込みか込みではないかの文章を切り替えて表示したい。

<技術的な課題>
要件の "2", "3", "4" は、Mappingの帳票設計ツールである "MapDraw" の機能を使えば簡単に実現できるのですが、"1" は難しいものがありました。
具体的には、表紙用の OUTQ と明細用の OUTQ に同じ見積り番号のスプールが同時に書き込まれるわけではないため、必ず両者のスプールが揃った時点で、Mapping がスプールを結合しないとなりません。しかし、Stephane さんのアドバイスをいただいて CL を用意し、解決することができました。
ケアコム様のお話では、2002年頃から各社に声を掛けてソリューションを探してきたのですが、この課題を解決できる会社が見つからなかったとのことです。
Mappingによる処理概念-1



Mappingによる処理概念-2

<効果>
ケアコム様の具体的なお話は、Mapping Suite の事例のサイトでご覧いただけます。
導入の効果として、見積書をお客様にメール送信できるようになったり、家庭のプリンターでも印刷できるようになったことによって、営業担当の方の時間の余裕ができて、訪問件数が 30% 増えただけでなく、時短にも繋がったとのことです。
もちろん、ドット・プリンターの維持費や用紙代の削減も実現しています。
それだけでなく、情報システム部が新たに導入したシステムの中でも、ユーザーに感謝された稀有なケースだとも、お客様はおっしゃっていました。
ケアコム様見積り書表紙イメージ
ケアコム様見積り書明細イメージ

2017年9月9日土曜日

AS/400 プリンティングに求められるソリューション 第6回 - Mapping Suite 準備開始 -

"POST2008" の翌週に行なわれた、Infoprint Solutions 社の SE に対する研修の様子を、前々回に掲載しましたが、日本からは私と、もう 1 名のSE が参加しました。
実習のために、自分のPCを持ち込み、会場に設置された AS/400 と接続するのですが、私の隣の 2 名の若いロシア人の画面を覗くと、AS/400 の中に入り込んで、何か実習とはまったく別のことをやっているようでした。逆に、Mapping 社から講師の Stephane さんの他に、助手として参加していたアメリカ人の Don さんは非常に真面目な方で、各人の PC の画面を見ながら、"ブラウザーの画面を閉じて" とか、"メールは止めて" と注意して、研修に集中するように促していたことを覚えています。 (Don さんは、元 IBM 社員。)
一口に外国人と言っても、一人一人は、実に様々な個性の持ち主で、皆違うのだと印象付けられました。


新生 Infoprint Solutions Company の全体集合研修である "POST" は、その費用のためか、2007年と 2008年の 2回で終わってしまいましたが、"POST2007" でのデモを切っ掛けとして、日本でも "Mapping Suite" を 2008年に発表するための準備が始まりました。社内調整は別として、主な作業は次のとおりです。
1. 翻訳
画面やメッセージの文字、マニュアル、ヘルプを日本語に翻訳します。1 回目の翻訳は、翻訳サービスの会社に依頼しましたが、OS/400 を始め他のソフトウェアで使用している用語との整合性のために、自分たちで修正することも必要でした。
例えば、表記に関しても、"property" は、IBM の翻訳ルールに従えば、"プロパティー"となりますが、Windows の世界では"プロパティ"なので、最終的には"プロパティ"とするといった注意です。

2. 検証テスト
Mapping 社からは、ユニコードを使用しているので、日本語のスプール・データにも対応していると聞いてはいたのですが、実際に自分たちで検証する必要があります。しかし、いくら基礎研修を受けたとは言え、初めは私たちも手探りの状態で使い始めたため、何度も Mapping 社のエンジニアの方と英文のメールやファイルのやり取りを行いました。その結果、Mapping のプログラムに修正が入ったこともありますし、Mapping 社では気づいていなかった注意点を私たち側で見つけたこともあります。具体的には、次の点です。
- OS/400 上の Mapping の実行環境のCCSIDのみは、"5035" にセットすること。
CHGJOB CCSID(5035)の実行

- その上で、半角カナ文字と英小文字の文字化けを防ぐために、Mapping のコマンドのパラメーターの一つとして、"コード・ページ"を "290" か"1027" に指定すること。
MAPCPYSPLFコマンドの中のコードページ指定
- Mapping コマンドを実行する端末画面の"コード・ページ"は、"939"か"1399"にセットすること。
5250端末画面の通信の設定

この翻訳や検証テストを行なっていくことで、Mapping を日本国内で担当する SE としてのスキルが身についていったわけです。
Mapping の研修としては、"POST2008" 以外に、その直後の 2008年 4月には東京で、オーストラリアも含むアジア・パシフィック各国の Infoprint Solutions 社の SE 向けの研修を行なっています。
その際に、やはり講師となっていただいた Mapping 社の Stephane や Nathalie さんには、日本のメンバーに対しても、追加の研修を行なっていただきました。
更に続けて、同じ 2008年の 5月には、私と、もう 1名の SE が、Mapping 社があるフランスのリール(Lille)に行って、研修を受けています。

そのような積み重ねと営業努力の結果、2008年中に製品発表を行ない、2008年末には第 1 号のお客様に契約をいただくことになったのです。

2017年9月2日土曜日

AS/400 プリンティングに求められるソリューション 第5回 - POST2008でのMapping Suite -

2008年の "POST2008" の始まる前に、私たち、参加する社員は、社員番号と姓名(アルファベット)を提出するよう求められました。初めは、単に参加者リストを作るためと軽く考えていましたが、実際にはそうではありませんでした。
ホテルの会場の入り口に、空港にある金属探知機のようなゲートがあって、事前に配布された参加カードを持って各人がそこを通過すると、自動的にチェックインする仕組みができていました。これは、参加カードに、社員番号の情報を持った IC タグが埋め込まれていて、ゲートを通ると、RFID を使ってセンサーがそれを検知し、出席記録に書き込まれるという仕組みです。そして、その仕組みを実現するためのソリューションとして、"Mapping Suite" と "InfoPrint 6700" プリンターが使用されました。

"Mapping Suite" の持っている次の機能を活用していました。
1. 提供された、参加する社員の情報(社員番号と姓名)が入った CSV 形式のファイルに対して、帳票設計を行ない、InfoPrint 6700 プリンターが持っている "IGP" 形式の印刷データを生成して、参加カードを印刷する。

2. 帳票設計する際に、特定の箇所のデータ(社員番号)を参加カード内の IC タグに書き込むことを指定する。その結果、InfoPrint 6700 プリンターで参加カードを印刷する際には、同時に IC タグに社員番号を書き込まれる。

3. 特定の箇所のデータ(社員番号)に対応するイメージを追加して印刷する。その結果、私たち日本からの参加者のカードの表面には、日本の地図のイメージが、一緒に印刷されていました。
(参加カードを残さなかったので、お見せできなくて残念です。)

更に、後になって、Mapping社の Stephane さんから、次のように裏話をお聞きしました。
- 開始日の 3 日ほど前に、Stephane さんが現地入りして、この仕組みを用意した。
- 通常では 3 日程度では、ここまでの仕組みはできない、つまり、いかに Mapping Suite が、構築が容易で、高機能かということの証明となっている。
このように、自慢していました。

ちなみに、InfoPrint 6700 プリンターは、Printronix 社からの OEM 製品で、"ラベル・プリンター"という範疇に含まれます。
InfoPrint 6700 プリンター

ここで、簡単に、ラベル・プリンターは、他の種類のプリンターと比べてどこが特徴なのかをお話しします。
- 使用する用紙は、細長い台紙にラベルが1枚ずつ並んで配置され、ロール状や折りたたんだ状態になったものです。
ラベル用紙(ロール状)イメージ

- ほとんどのラベル・プリンターは、熱転写方式で印刷します。熱転写方式とは、1 ドット単位で熱を発生する素子が、フィルム上のインクに熱を与えると、その箇所だけインクが溶けて紙に印刷されるという印刷方式です。家庭用の FAX や、自動券売機で発行される切符等にも使用されています。
インパクト・プリンターのインク・リボンと異なり、インク・リボンの中の印刷に使用した箇所は、インクが抜けて透明になっていますので、繰り返し使用することはできません。その代わり、印刷後のインク・リボンを取っておくと、何を印刷したかの記録になります。
インク・フィルム・リボン

- ラベル・プリンターには、標準、若しくはオプションでカッターが付いていますので、印刷後に、ラベルを1枚ずつ自動的にカットすることができ、コマンドを使って制御することが可能です。

- 機種によっては、ラベルに埋め込まれた IC タグに情報を書き込む機能を持っています。

- InfoPrint 6700 では、OEM 元の Printronix 社の標準の、"IGP" という形式の印刷コマンドをサポートしている他に、同じ US のラベル・プリンター・メーカーである ZEBRA 社、日本の "SATO"、"TEC" 各社のコマンドもサポートしています。特に、ZEBRA 社の印刷コマンドでは、文字をイメージとして扱うこともできますので、Mapping Suite からは、日本語のラベルの印刷に使用できます。

2005年頃には、IBM として発表した RFID に対応するラベル・プリンターを、日本でも発表するかどうかと検討を行なったことがあります。しかし、国内で使用許可された周波数の規格との不一致、ラベル・プリンターの IC タグにデータを書き込むためのソリューション、もちろん日本語対応したものを特定することができず、発表を断念したという経緯があります。

なお、余談ですが、ラベルの印刷は、他にもインパクト・プリンターや、レーザー・プリンターでも可能です。
しかし、レーザー・プリンターでは、トナーを用紙に定着させる際に、紙の厚さが均一であることや糊が表面にはみ出てこないが求められます。そのために、台紙が見えないように、ラベルの周囲の紙も残してある状態になっている必要があります。
レーザー・プリンター用ラベル紙イメージ(A4サイズ10面の例)
そのような用紙に印刷したラベルと、細長い用紙に1枚ずつ並んだラベルとでは、剥がし易さや無駄が出るかどうかが、大きく異なるのではないでしょうか ?
印刷速度や印刷品質(解像度)では、レーザー・プリンターの方が優れていると思いますが、現場ではラベル・プリンターが多く使用されていることの理由は、その辺りにあるのではないかと思います。