始めの言葉

「プリンターから印刷できて当たり前」と、ユーザーからもSIerからも軽視されがちなプリンターの世界ですが、実際にはお困りだったり、思ったような印刷結果が得られないまま我慢してお使いの皆様のために、今までの経験が役立てばと、このブログを立ち上げました。印刷の基本から、応用情報、問題の解決方法を情報発信すると共に、PDF化など、これからどうするかについても、ご相談に乗れれば幸いです。ご質問はコメントでお寄せください。

2017年2月25日土曜日

ライン・プリンターの全て - 第28回 - たまにいただくお問合せ-5

Q9. "5400"ライン・プリンターを新しいモデルに置き換えたところ、文字の上下が欠けて印刷されるようになったが、何が原因か。

A9. この現象は、日本語インパクト・プリンターの解像度(180 ドット/インチ)と、行ピッチの関係を知るための、良い事例です。
AS/400 からの印刷では、行ピッチには主に 6LPI(ライン/インチ) が指定されますが、稀に 8LPI や 7.5LPI が指定されます。

<<6LPI の場合>>
6LPI では、1 行の高さは、1/6 インチです。
5400 ライン・プリンターを含む日本語インパクト・プリンターの解像度は、180 ドット/インチですから、1 行の高さをドット数に換算すると
180 / 6 = 30 ドット
となります。
文字の高さは、24 ドットですから、文字の上下には 3 ドット分の余白ができることが、分かります。
これは、各行の文字の間には、6 ドット分の間隔ができることも意味しています。
6LPI の場合

<<7.5LPI の場合>>
7.5LPI では、1 行の高さは、1/7.5 インチになりますから、ドット数に換算すると
180 / 7.5 = 24 ドット
となり、文字の高さと同じになります。
つまり、各行の間隔が無く印刷されるということを表わしています。
7.5LPI の場合

<<8LPI の場合>>
8LPI では、1 行の高さは、1/8 インチです。
ドット数に換算すると
180 / 8 = 22.5 ドット
となります。
つまり、標準の高さ 24 ドットの文字では、上下約 1 ドットずつ上下の行の文字と重なって印刷されることになってしまいます。
これでは文字が読み辛いため、5400 プリンターの初期設定メニューの中に"全角文字高さ"という項目があり、24 ドットの他に、"8LPI フォント"を選択できるようになっています。
"8LPI フォント"は、元々高さのみ 22 ドットで構成されたフォントなので、8LPI のデータを印刷する際に使用すると、上下の行の文字と重ならないようになっています。

ただし、実際には、8LPI の指定の場合、データが、1 行おきにブランク行となっていて、4LPI 相当となっている場合が多いようです。
その場合に関わってくるもう一つの初期設定メニューが、"行の重なり"です。
高さ 24 ドットの文字に対して、デフォルトの"重ねて印刷"を指定して印刷すると、上下にはみ出たドットもそのまま印刷されますので、期待通りの印刷結果となります。
"行の重なり"を"削除して印刷"に指定すると、文字の上下 1 ドットずつ削除して印刷しますので、この質問にあるように、上下が欠けた文字が印刷されることになります。
つまり、 "行の重なり"は、8LPI という行ピッチで印刷する場合に、毎行印刷する場合には"削除して印刷"、1 行おきに印刷する場合には"重ねて印刷"に指定することで、読み取りやすい印刷結果が得られるための設定と言えます。
8LPI 1 行おきの印刷の場合

2017年2月12日日曜日

ライン・プリンターの全て - 第27回 - たまにいただくお問合せ-4

Q8. AS/400からの印刷に使用してきた"5400-006"を、"5400"の現行モデルに置き換えるに当たって、注意するべき点は何か。

A8. 現行の"5400-006"プリンター("ライン・プリンターの全て - 第4回- 日本語ライン・プリンターの歴史-4"参照)
をどのような方法で、AS/400と接続しているかを確認するよりも、新しい"5400"プリンターをどのように接続するかを考えることを優先した方が良いと思います。
接続方式の違いによって、メリットも注意点もそれぞれ異なりますので、それらをよく把握した上で、日々の業務に最適な接続方式を選択してください。

1. Telnet5250E による LAN 直結印刷
"5400"プリンターの標準的な接続方式です。
<<メリット>>
- AS/400 と LAN 直結になるので、プリンター・セッション経由の印刷と異なり、PC に依存することが無い。
- APW や プリンター・ファイルで指定したバーコード・コマンドや文字拡大、OCR-B フォント指定コマンドが、プリンター・セッション経由の印刷と異なり、全て有効となる。
- 高速モードや、超高速モードでの印刷であっても、バーコードのある行のみは、ドットを間引かずに印刷する通常速モードに自動的に切り替わって印刷するため、バーコードの読み取り精度を落とさない高速印刷が可能となる。
- 印刷中の保留や取り消し操作が、プリンター・セッション経由の印刷と異なり、AS/400 端末画面から可能となる。
- 用紙切れや用紙ジャムというエラー・メッセージが、プリンター・セッション経由の印刷と異なり、AS/400 端末画面に表示される。メッセージ応答として、印刷再開ページを指定することも可能となる。

<<注意点>>
- 外字を使用するには、予め"LODPPW"コマンドを使用して、プリンターにダウンロードしておく必要がある。(プリンターの電源を切った後でも保存される。)
- 接続先の AS/400 は1台(一つの IP アドレス)となる。接続先の AS/400(IP アドレス) を変更するには、"5400" の初期設定を変更し、再起動する必要がある。
- PC からの LAN 直結印刷(LPR ポート使用)とは、自動切換えが可能だが、"5400"プリンターのWeb ページ上で、初期設定を変更しておく必要がある。"ライン・プリンターの全て - 第11回- 日本語ライン・プリンターの初期設定-3" 参照

<<"5400-006"からの移行のための注意点>>
- Telnet5250E 接続では、OS/400 上の"自動構成"が可能です。使用していた"5400-006"のものと同じ OUTQ 名を継続して使用するには、既存の OUTQ や装置記述を、予め削除しておくと、新しい"5400"プリンターの"自動構成"がスムーズに行なえます。
- 初期設定の中の"半角文字セット"を"英数カナ文字"にするか、"英小文字"にするかで、半角カナ文字や、半角英小文字の文字化けに対応します。

2. PC 上のプリンター・セッション経由の印刷
複数の AS/400(LPAR) から自動切換えで印刷させるのに、適しています。
<<メリット>>
- PC 上に複数のプリンター・セッションを用意する、または、複数の PC 上にプリンター・セッションを用意することにより、複数の AS/400(複数の IP アドレス)からの印刷を、プリンターの設定を変更することなく、自動的に切り替えて行える。
- 外字は、プリンター・セッションを持つ PC のWindows外字を使用するので、プリンターに予め保存する操作が不要。
- AS/400 からの印刷の他に、PC 上の Windows アプリケーションからの印刷も、そのまま可能となる。

<<注意点>>
- PC を起動していないと、印刷できない。
- APW や DDS で指定したバーコードや、OCR-B フォント指定は無効になる。文字拡大指定にも制限がある。
- 印刷中の保留や取り消し操作はできない。
- 用紙切れや用紙ジャムというエラー・メッセージは、AS/400 端末画面に表示されない。
- 繰り返し印刷を防ぐために、プリンター・ドライバーのポート設定や、レジストリーの修正が必要になる。"繰り返し印刷の対策" 参照。


<<"5400-006"からの移行のための注意点>>
- もし、従来、"5400-006"が、プリンター・セッションを持つ PC と LAN 接続されていたのなら、"5400-006"と同じ IP アドレス を新しい"5400"プリンターに設定するだけで、移行は完了となります。(プリンター同士は互換性が高いので、ドライバーの入れ替えも不要です。)
- PC もプリンターと同時に新しくなるのであれば、PC 上では、
+ 5400 ドライバーの導入、設定("ライン・プリンターの全て - 第12回- 日本語ライン・プリンターのドライバー-1" 参照)
+ "標準 TCP/IP ポート"から"LPR ポート"への変更、それに対応したレジストリーの編集によるタイム・アウト値の変更
+ PDT ファイル、"ibm5577.pdt"を指定したプリンター・セッションの設定
以上が、必要です。
- 初期設定の中の"コードページ"を"932"にするか、"942"若しくは"943"にするかで、半角カナ文字や、半角英小文字の文字化けに対応します。

5400-006 プリンター外観

2017年2月4日土曜日

ライン・プリンターの全て - 第26回 - たまにいただくお問合せ-3

Q7. 複写帳票に印刷する業務に使用するライン・プリンターは、どのように選択したら良いか。

A7. 先ず、複写帳票が予めカット紙になっている場合は、ドット・プリンターしか対応できません。
(もし、連続用紙に印刷した後、ページ毎にカットするという運用が許されるなら、ライン・プリンターを使用できます。)
連続用紙に印刷するためのライン・プリンターを選択するに当たって、考慮する点は次のとおりです。

1. 用紙のサイズ、複写枚数、全体の厚さが、プリンターの仕様の範囲であること
この点に関しては、"5400シリーズ"のライン・プリンターでは仕様の違いがほとんど無いので、仕様の範囲に収まっているかを確認すれば十分と思います。
ただ、プリンターでバーコードも印刷する場合、インク・リボンのインクを使って印刷される 1 枚目のバーコードを読み取るのか、複写された 2 枚目以降を読み取るのかの違いによって、バー幅の設定を調整する必要があるかもしれません。特に複写された 2 枚目以降を読み取る場合には、自己発色紙よりも、裏カーボンと呼ばれる用紙の裏にインクが予め塗られた用紙を使用する方が、バーコードの読み取り精度は良いようです。

2. 耐久性
ライン・プリンターに限らず、どのようなプリンターでも"想定月間平均印刷枚数"を持っています。
これによって、プリンターの各部品の月間平均故障率が決まります。それと、各部品のコスト、交換に要する時間、人件費を総合して保守に掛かる経費を算出します。それが、保守契約費用や、保証期間中の保守費用になるわけです。
そのため、"想定月間平均印刷枚数"を超えて、プリンターを使用し続けると、お客様から見れば、故障頻度が多いということになりますし、保守を行なう会社から見れば、保守のコストが掛かりすぎということになります。(ライン・プリンターの保守契約費用は、定額であるからです。)
なお、月によって印刷枚数が大きく変動する場合には、1 年間での平均を見れば良いと思います。これは、保守契約が、通常は年単位だからです。

"5400"シリーズでは、"想定月間平均印刷枚数"は次のようになっています。
 5400-F02/L02 : 6,000 枚/月
 5400-F06/L06 : 12,000 枚/月
 5400-F10/L10 : 20,000 枚/月
(15 x 11 インチ・サイズ連続用紙、文字数 1,500 字/枚、全角:半角 = 3:7を想定)

3. 印刷速度
印刷速度の印刷速度の考え方は、ライン・プリンターの全て - 第3回- 日本語ライン・プリンターの歴史-3 でもお話しましたが、カタログ値としては、行ピッチが 6LPI(行/インチ) を前提として、通常速モードで、次のようになっています。
 5400-F02/L02 : 150 行/分
 5400-F06/L06 : 410 行/分
 5400-F10/L10 : 600 行/分
("5227"以降、"5400"シリーズでは、ドットの間引きを行なわない、24 x 24 ドットの文字を印刷する時の速度を"通常速"と呼んでいます。これは、ドット・プリンターである"5577"シリーズでも共通です。しかし、何故か、他社のライン・プリンターのカタログでは、1/3 のドットを間引く時の印刷速度を"通常速"モードと呼んでいるので、カタログで比較する際には、注意が必要です。)

ライン・プリンターでは、1 文字でも文字のある行が続く場合には、この速度で印刷されます。
文字の無い空白行が続くような場合には、高速で紙送りしますが、一定時間で何枚の用紙を印刷できるかという"スループット"を計算するには、次の計算方式で良いかと思います。
 11 インチ長の用紙、5400-F06 通常速モード(410 行/分)の場合
  6 行/インチ x 11 インチ/枚 = 66 行/枚
    410 行/分 ÷ 66 行/枚 = 6.2 枚/分
この計算式を参考に、使用する用紙の長さと、業務上必要なスループット(何枚/分)から逆算していけば、どの位の印刷速度(行/分)が求められるかを計算することができます。

もし、印刷速度と耐久性の組み合わせが、どれかのモデルと大よそ一致すれば良いのですが、例えば、印刷速度を元に選択したモデルでは、耐久性が大幅に足りないといった場合には、台数を増やすことを検討することをお勧めします。
逆に、耐久性は合っているが印刷速度が足りないという場合には、高速モードや超高速モードでの使用を検討されてはいかがでしょうか。特に"高速モード"の印字品質は、通常速モードのものとほとんど変わらないと判断されたお客様も多くいらっしゃいます。
5400-F10/L10 外観
5400-F06 外観
5400-F02/L02 外観