始めの言葉

「プリンターから印刷できて当たり前」と、ユーザーからもSIerからも軽視されがちなプリンターの世界ですが、実際にはお困りだったり、思ったような印刷結果が得られないまま我慢してお使いの皆様のために、今までの経験が役立てばと、このブログを立ち上げました。印刷の基本から、応用情報、問題の解決方法を情報発信すると共に、PDF化など、これからどうするかについても、ご相談に乗れれば幸いです。ご質問はコメントでお寄せください。

2017年9月2日土曜日

AS/400 プリンティングに求められるソリューション 第5回 - POST2008でのMapping Suite -

2008年の "POST2008" の始まる前に、私たち、参加する社員は、社員番号と姓名(アルファベット)を提出するよう求められました。初めは、単に参加者リストを作るためと軽く考えていましたが、実際にはそうではありませんでした。
ホテルの会場の入り口に、空港にある金属探知機のようなゲートがあって、事前に配布された参加カードを持って各人がそこを通過すると、自動的にチェックインする仕組みができていました。これは、参加カードに、社員番号の情報を持った IC タグが埋め込まれていて、ゲートを通ると、RFID を使ってセンサーがそれを検知し、出席記録に書き込まれるという仕組みです。そして、その仕組みを実現するためのソリューションとして、"Mapping Suite" と "InfoPrint 6700" プリンターが使用されました。

"Mapping Suite" の持っている次の機能を活用していました。
1. 提供された、参加する社員の情報(社員番号と姓名)が入った CSV 形式のファイルに対して、帳票設計を行ない、InfoPrint 6700 プリンターが持っている "IGP" 形式の印刷データを生成して、参加カードを印刷する。

2. 帳票設計する際に、特定の箇所のデータ(社員番号)を参加カード内の IC タグに書き込むことを指定する。その結果、InfoPrint 6700 プリンターで参加カードを印刷する際には、同時に IC タグに社員番号を書き込まれる。

3. 特定の箇所のデータ(社員番号)に対応するイメージを追加して印刷する。その結果、私たち日本からの参加者のカードの表面には、日本の地図のイメージが、一緒に印刷されていました。
(参加カードを残さなかったので、お見せできなくて残念です。)

更に、後になって、Mapping社の Stephane さんから、次のように裏話をお聞きしました。
- 開始日の 3 日ほど前に、Stephane さんが現地入りして、この仕組みを用意した。
- 通常では 3 日程度では、ここまでの仕組みはできない、つまり、いかに Mapping Suite が、構築が容易で、高機能かということの証明となっている。
このように、自慢していました。

ちなみに、InfoPrint 6700 プリンターは、Printronix 社からの OEM 製品で、"ラベル・プリンター"という範疇に含まれます。
InfoPrint 6700 プリンター

ここで、簡単に、ラベル・プリンターは、他の種類のプリンターと比べてどこが特徴なのかをお話しします。
- 使用する用紙は、細長い台紙にラベルが1枚ずつ並んで配置され、ロール状や折りたたんだ状態になったものです。
ラベル用紙(ロール状)イメージ

- ほとんどのラベル・プリンターは、熱転写方式で印刷します。熱転写方式とは、1 ドット単位で熱を発生する素子が、フィルム上のインクに熱を与えると、その箇所だけインクが溶けて紙に印刷されるという印刷方式です。家庭用の FAX や、自動券売機で発行される切符等にも使用されています。
インパクト・プリンターのインク・リボンと異なり、インク・リボンの中の印刷に使用した箇所は、インクが抜けて透明になっていますので、繰り返し使用することはできません。その代わり、印刷後のインク・リボンを取っておくと、何を印刷したかの記録になります。
インク・フィルム・リボン

- ラベル・プリンターには、標準、若しくはオプションでカッターが付いていますので、印刷後に、ラベルを1枚ずつ自動的にカットすることができ、コマンドを使って制御することが可能です。

- 機種によっては、ラベルに埋め込まれた IC タグに情報を書き込む機能を持っています。

- InfoPrint 6700 では、OEM 元の Printronix 社の標準の、"IGP" という形式の印刷コマンドをサポートしている他に、同じ US のラベル・プリンター・メーカーである ZEBRA 社、日本の "SATO"、"TEC" 各社のコマンドもサポートしています。特に、ZEBRA 社の印刷コマンドでは、文字をイメージとして扱うこともできますので、Mapping Suite からは、日本語のラベルの印刷に使用できます。

2005年頃には、IBM として発表した RFID に対応するラベル・プリンターを、日本でも発表するかどうかと検討を行なったことがあります。しかし、国内で使用許可された周波数の規格との不一致、ラベル・プリンターの IC タグにデータを書き込むためのソリューション、もちろん日本語対応したものを特定することができず、発表を断念したという経緯があります。

なお、余談ですが、ラベルの印刷は、他にもインパクト・プリンターや、レーザー・プリンターでも可能です。
しかし、レーザー・プリンターでは、トナーを用紙に定着させる際に、紙の厚さが均一であることや糊が表面にはみ出てこないが求められます。そのために、台紙が見えないように、ラベルの周囲の紙も残してある状態になっている必要があります。
レーザー・プリンター用ラベル紙イメージ(A4サイズ10面の例)
そのような用紙に印刷したラベルと、細長い用紙に1枚ずつ並んだラベルとでは、剥がし易さや無駄が出るかどうかが、大きく異なるのではないでしょうか ?
印刷速度や印刷品質(解像度)では、レーザー・プリンターの方が優れていると思いますが、現場ではラベル・プリンターが多く使用されていることの理由は、その辺りにあるのではないかと思います。

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