始めの言葉

「プリンターから印刷できて当たり前」と、ユーザーからもSIerからも軽視されがちなプリンターの世界ですが、実際にはお困りだったり、思ったような印刷結果が得られないまま我慢してお使いの皆様のために、今までの経験が役立てばと、このブログを立ち上げました。印刷の基本から、応用情報、問題の解決方法を情報発信すると共に、PDF化など、これからどうするかについても、ご相談に乗れれば幸いです。ご質問はコメントでお寄せください。

2015年10月25日日曜日

バーコードの印刷方法 - 第1回 コマンドを使う -

前回、"バーコード"という言葉が出てきたので、今回は今までの話の流れから少し逸れますが、バーコードのお話をします。
"このプリンターでバーコードを印刷できますか?"というお問い合わせを、何度もいただくことがあります。AS/400から、プリンターにバーコードを印刷させるには、いくつもの方法があります。

1. プリンターが持っているバーコード印刷コマンドを送信する方法
これは、プリンターから見れば、バーコードを印刷するコマンドが送られてきて、それに従ってプリンターの内部でバーコードのイメージ(パターン)を作って印刷する方法です。
この方法には以下のメリットがあります。

1-1. 各バーの幅を、コマンドのパラメーターとして、個別に指定できることにより、読み取り率を向上させ易い点です。
特に、インク・リボンを使って印刷するインパクト方式のプリンターでは、細白バーは、実際に印刷される左右両側の黒バーに挟まれた、印刷されない線として表現されますので、1ドット幅にしか指定しないと、左右からのインクの滲みよって、1ドット幅以下の幅になってしまいます。そのため、バーコード・リーダーが読み取る時に、細白バーとして認識でき難くなるわけです。細白バーの幅を先ず2ドット以上と指定し、他のバーの幅をそれを元に決めていくことをお勧めしています。
1次元バーコードのパターン

1-2. 後で述べるユーザー定義文字や、シンボルの組み合わせと比べて、バー幅の修正が圧倒的に楽な点です。
これももちろん、読み 取り率向上につながりますが、コマンドのパラメーターとしてバー幅を指定することは、その値を変更するだけで、バーコードの読み取り率を向上させることが できます。ユーザー定義文字や、シンボルといった、バーコードのパターンを自分で設計する方式では、印刷結果の読み取りテストを行いながら、該当する全部のパターンを修正することになりますので、膨大な手間が掛かることになります。



1-3. OS/400上でバーコードを指定するツール(APW)が用意されている点です。
APW (Advanced Printer Writer) (正式には多機能漢字印刷ユーティリティー)は、世界標準のSCSコマンドに対して、日本独自に追加されたバーコード・コマンドを使い易く するために、日本独自で開発されたツールです。使用可能なバーコード・パラメーターの仕様は、次のサイトで公開されているマニュアルで確認できます。
http://www.ricoh.co.jp/pps/download/manual/other/apw_v3.html

1-4. ネットワークへの負荷が少なく、処理時間の短縮が期待できる点です。
印刷データの量としては、コマンドだけになりますので、ネットワーク上の負荷はその分、少なくなります。バーコードのイメージ(パターン)を生成するの は、プリンターの中のマイクロコードの処理になりますが、経験的には、その処理時間が全体の処理時間に影響することは無いと思います。
黒細バーのインクが滲んだ様子

以上のメリットに対して、次の点には注意が必要です。
- APWを使用する場合、次のバーコードは指定できません。
GS1-128(EAN128.コンビニ収納代行用のバーコード)と、QRコード(これは、正確にはバーコードではなく2次元コードになります。)。そのため、5577系のドット・プリンターや、5400ライン・プリンターはQRコードを印刷するコマンドを持っていますが、そのコマンドを送信するプログラムを作る必要があり、これがなかなか大変です。
- APWを使用する場合は、プリンターのモデルと接続方式が、限られています。
接続方式は、AS/400と直結するTwinax接続やLAN直結する"Telnet5250E"接続か、ホスト印刷変換機能を使用したLAN直結接続です。
前者のプリンターとしては、5400シリーズと、モデル名の最後2桁が"05"となっている5577シリーズ、若しくは5400エミュレーターを使って"Telnet5250E"接続した5577シリーズや、PAGESモードを持ったレーザー・プリンターになります。後者のプリンターは、PAGESモードを持ったレーザー・プリンターです。
- APWを使用する場合は、バーコードを印刷する場所は、毎ページ同じになります。

以上の制約を受けないために、APWは使用せずに、コマンドをプログラムの中に組み込む方法も採れますが、5577モードのバーコード・コマンドは16進コードでプログラムすることとなり、これもなかなか手が掛かります。そこで、コマンドを他のデータと同じ文字データ(テキスト・データ)として組み込む方法がありますので、それは次回お話します。