始めの言葉

「プリンターから印刷できて当たり前」と、ユーザーからもSIerからも軽視されがちなプリンターの世界ですが、実際にはお困りだったり、思ったような印刷結果が得られないまま我慢してお使いの皆様のために、今までの経験が役立てばと、このブログを立ち上げました。印刷の基本から、応用情報、問題の解決方法を情報発信すると共に、PDF化など、これからどうするかについても、ご相談に乗れれば幸いです。ご質問はコメントでお寄せください。

2016年12月23日金曜日

ライン・プリンターの全て - 第22回 - 日本語ライン・プリンターを賢く使う-8

2. 用紙ジャムが起きたら
本来起きてはいけないエラーですが、用紙ジャムが発生することがあります。
用紙ジャムが発生すると、ブザーが鳴り、プリンターの操作パネルの液晶表示部に、"用紙詰まり 用紙を直してください"というメッセージが表示されます。
Telnet5250E を使った AS/400 との直接接続の場合には、5250 端末画面上でも、メッセージ・ウェイト状態となり、用紙ジャムが発生している旨のメッセージが表示されます。

対応方法として先ず行なうことは、
- 5400-F10/L10 モデルや、5400-L06/006 モデルでは、プリンター内部の右側にある"プラテン開閉レバー
- 5400-F06 モデルや、5400-F02/L02 モデルでは、左側にある"FTレバー"(用紙厚設定レバー)
これを全開にして、印字ヘッドと用紙の間隔を広げ、詰まった用紙を取り除くことです。

その後は、新たに用紙をセットしたら、開いたプラテン開閉レバーを閉じて(用紙厚設定レバーは、用紙の厚さに応じた値にセットして)印刷を再開します。
ライン・プリンターでは、プリンターの持っているデータ受信用のバッファー・メモリーのサイズが小さいため、用紙ジャムが発生した時点で印刷終了したデータは、既にプリンターには残っていません。
従って、印刷を再開するページを確認した上で、そのページからの印刷データを送信する必要があります。特に、Telnet5250E を使った AS/400 との直接接続の場合には、エラー・メッセージに対する応答処理として、開始ページを指定して印刷再開させることができます。

ちなみに、レーザー・プリンターでは、印刷された用紙が排紙されるまでは、メモリーに印刷イメージを保管しています。そのため、詰まった用紙を取り除いて、プリンターが印刷可能状態となったら、自動的に用紙ジャムとなったページから印刷再開します。ただ、電源を切ってしまうと、メモリーの内容が消えてしまいますので、電源を切らないことが重要です。
その観点からは、ライン・プリンターの場合は、電源を切っても影響が無いと言えます。

以上は、その場の対応方法でしかありません。もし用紙ジャムが頻発するようであれば、根本的な対策が必要です。
私の経験から、次の点をチェックすることをお勧めします。

1. トラクターの左右の間隔
用紙の幅に合わせてトラクターの左右の間隔をセットするのですが、これが広めだったりすると、用紙ジャムの原因になります。通常、狭めにセットされることは無く、広め、つまり用紙を左右に張った状態でセットしてしまうことがあります。目安としては、用紙の送り穴の左右中央にトラクターのピンが出ていること、送り穴がピンに押されて歪んだ状態になっていないことが上げられます。
トラクター左右位置調整の目安

2. 印字ヘッドと用紙の間隔
特にラベル紙を使用している場合、用紙厚設定レバーの設定が狭いと、台紙の上のラベルが引っ掛かって印刷中にラベルが剥がれることがあります。ラベルが剥がれると糊が付いているので、プリンターの内部にくっついて、剥がすのに苦労することになります。
("5400-F06" モデルは、"5400-L06/006" モデルに比べて、プラテンと印字ヘッドの間を広げた時の間隔が狭くなって、プリンター内部につまったラベルが、剥がし辛くなったというご指摘をいただいたことがあります。)
当たり前のことですが、台紙の厚さとラベルの厚さの両方を加味した厚さに合わせてレバーの値を設定するように注意してください。

3. 用紙のミシン目の品質
プリンターのマニュアルには、次のような用紙のミシン目に対する注意事項が書かれています。
- 横ミシン目と縦ミシン目の交差部分は、アンカット部(紙が繋がっている部分)同士で交差すること。
- 用紙の紙端部分はアンカット部とすること。
これらは、ミシン目での用紙の破れやすさに影響する要素です。
ライン・プリンターで多く使用される、事前印刷された複写用紙は、印刷会社で製造されてくるものですが、用紙の品質も製造ロットの違いで異なることがあります。
また、ミシン目はカッターで切って作りますが、同じカッターを使い続けていると、刃の切れが悪くなって、ミシン目の品質に影響するという話を聞いたことがります。

4. 紙ホチキスの向きと出っ張り
複写用紙の 1 枚 1 枚は、印刷中は簡単に剥がれないように、しかし、印刷後はなるべく剥がしやすいような強さで付いていることが理想的です。
プリンターのマニュアルでは、"点のり"と言って、点の状態で糊付けする方式のみ認めていますが、実際には、紙ホチキスも併用使用しているケースが多いように思います。
紙ホチキスとは、紙を櫛の歯状態に打ち抜いて止める方法です。この場合、打ち抜いて折り返した部分が紙の表面に盛り上がるような状態になります。
プリンター内部を用紙が送られていく時に、上向きに折り返された紙ホチキスの端が、リボン・シールドに並んだ、印字ヘッドのピンの通り穴に引っ掛かってリボン・シールドを損傷し、それが用紙を破いて用紙ジャムを引き起こすという現象があります。(リボン・シールドは、非常に薄いステンレスの板ですから)
用紙の幅が、例えば 15 インチあるのであれば、紙ホチキスはリボン・シールドの穴よりも外側を通りますので、リボン・シールドを損傷することはありません。しかし、幅の狭い、例えば宅配便の用紙の場合は、リボン・シールドの穴に紙ホチキスが掛かることを防ぐことができません。
このような用紙の場合には、紙ホチキスの折り返しの向きを下側にするという、用紙側の対応が必要と思います。
用紙ジャムが多発する場合には、プリンターの設定のみではなく、用紙にも注意を向ける必要があります。
紙ホチキスと折り返しの向き




2016年12月11日日曜日

ライン・プリンターの全て - 第21回 - 日本語ライン・プリンターを賢く使う-7

今回は、エラーが発生した場合の対応方法について、お話します。
最も身近なエラーは、用紙切れと用紙ジャムです。

1. 用紙切れの対応方法
用紙切れの発生をプリンタ-が検知するために、用紙の走行経路の途中に、接触式か非接触式のセンサーが付いています。このセンサーが用紙の存在を検知しなくなった時に、"用紙切れ"の情報が操作パネルに表示されます。
ライン・プリンターのモデルによって、用紙切れを検知する方法や箇所は異なります。
"5400-F10/L10"モデルでは、一旦、"用紙がありません"というメッセージが表示されて印刷が止まった後も、再度"印刷"スイッチを押すことにより、完全に用紙の下端まで続けて印刷させます。
同様に、稼動する台数が、今も最も多い"5400-L06/006"モデルでも、用紙切れで一旦印刷が止まった時点で、"印刷"スイッチを押すことで、用紙の最後まで1ページ以上続けて印刷できます。

下の図は、"5400-L06/006"モデルのものですが、用紙切れセンサーがプリンター内部の前の方にあるため、印字ヘッドとの間隔が長めだったことが分かります。つまり、用紙切れセンサーの下を用紙の終端が通過して、"用紙切れ"を検知し、エラー表示する時点では、まだ、印字ヘッドと用紙終端までは、まだ十分印刷可能な用紙が残っていることになります。
そこで、再度"印刷"スイッチを押すことで、用紙の終端まで印刷させます。
2 度目の用紙終端の検知のために、もう 1 つのセンサーがトラクターの近傍にあるのか、それとも、印刷データに含まれる用紙長の情報を元に、プリンターが、1 回目に用紙終端を検知した時に残りの用紙長を計算するのかは、残念ながら私も知りません。そもそも、印字ヘッド近傍に用紙切れセンサーがあって、用紙終端まで印刷して止まるようにできていれば、1 回印刷が止まってから、改めて"印刷"スイッチを押す手間は不要と思うのですが。
5400-L06/006の用紙切れセンサーの位置
また、"印刷"スイッチを押した後は、かなりゆっくりと用紙を送りながら印刷するのですが、それは、用紙切れセンサーが用紙を上から押さえることなく、トラクターだけで用紙を引き上げているので、印字品質を低下させないためという説明を聞いた覚えがあるのですが、そうなのでしょうか ?

ちなみに、"5400-F10"では、用紙切れセンサーは非接触式(光センサー)のタイプになっています。そのため、プリンターの前カバーを外して使用しているお客様において、プリンターの設置場所と向き、窓から差し込んだ太陽光の角度の組み合わせによって、用紙があるのにも関わらず用紙切れ状態と誤検知を起こしたことがあります。

"5400-F06"モデルや"5400-F02"モデルでは、"用紙がありません"というメッセージが表示された時点で、既に用紙下端まで印刷完了しているようですが、どのモデルでも、"印刷"スイッチを押して、用紙下端まで印刷完了させることを習慣付けておくことをお勧めします。

そうしないと、用紙切れが発生したページの最後の何行かのデータが印刷されずに残っているため、新しい用紙をセットして印刷開始させた時に、残った行のデータから印刷が始まり、行ずれが発生することになるからです。

プリンターで発生した"用紙切れ"エラーは、Telnet5250E 接続の場合には、OS/400 側のOUTQの画面で、メッセージ・ウェイト状態として通知されます。それに対して、プリンター・セッション経由の印刷や、PC からの印刷の場合には、印刷データが送信中でない限り、OS/400 側の画面にも、PC 側の画面にもエラー表示はされません。従って、用紙切れになったことを知るには、プリンターがエラー発生時に鳴らすアラーム音が頼りになります。アラーム音は初期設定で、"連続音"、"間欠音"、もしくは"鳴らない"が選択できるだけです。音の大きさは一定です。

注意していただきたい点は他には、"電源を切らない"ということです。"用紙切れ"の場合は、用紙の下端まで印刷した後は、新しい用紙をセットするだけで済みますが、途中で、プリンターの電源を切ってしまうと、メモリーに残っているデータがあった時に、そのデータが消えてしまいます。その結果、新しい用紙をセットして電源を入れ、印刷再開した時に、行ずれを起こすことになります。それを避けるためには、AS/400 や PC から印刷再開するページを指定して、印刷指示しないとならなくなります。

2016年12月4日日曜日

ライン・プリンターの全て - 第20回 - 日本語ライン・プリンターを賢く使う-6

一見、単純に見えるインク・リボンですが、実は、なるべく永く使えるようにするための工夫が施されています。

1. リボンの生地の表も裏も使う
インク・リボンは、印字ヘッドのピンに叩かれ続けていますので、徐々に生地が弱くなっていきます。ピンがインク・リボンの両面を叩く構造とすることで、より長時間使用することができるようになります。
"メビウスの輪"という言葉を聞いたことがないでしょうか ? メビウスという数学者が発見したため、この名前が付いたとのことですが、身近なところでは、リサイクルのマークに使われています。
リサイクル・マーク
リボンの端を繋げて輪の状態にする際に、片方の端を表裏逆にして、もう片方の端と繋げるとできるものです。
できた輪の上にペンで線を書いていくと、いつの間にか表と裏の両方に線が書かれた状態となって、書き始めのところと繋がることが分かります。

インク・リボンもこの原理を使って、非常に長いリボンの端を繋げる時に、片方の端を裏返すことで、印字ヘッドのピンは、リボンの表裏、両面を叩くことになります。
ただし、インク・リボンが正しく送られるために、インク・リボンはプリンターの中で、直立した状態でいますので、途中のどこかで、表裏が逆になる部分が必要になります。
それが、インク・リボンの途中に付属する黒いプラスチック製の、次のような部品です。
インク・リボンのメビウス

マニュアルの中では、図のように"メビウス"と呼んでいますが、メビウスの部分をサポートする部品という意味です。

2. リボンつなぎ目スキップ
インク・リボンのつなぎ目部分は、次のように斜めに切られた端を接着しています。運が良ければ、詰め替えリボンを交換する時に、その部分が表に出ているのを目にすることができます。生地を溶かして接着したように見えます。
インク・リボンつなぎ目

印刷する時には、この部分も印字ヘッドのピンが叩くことになりますが、何故か"5400-006"モデルにおいてだけ、叩かれたつなぎ目が用紙面側に来た時に、叩かれてできたリボンの毛羽が、用紙の表面を汚すという問題が発生しました。
(高速の"5400-L10"や、逆に低速の"5400-L02"では発生しませんでした。)
そこで、対策として、つなぎ目をメビウスにしないインク・リボンを用意し、今でも"高品質ストレート・リボン"と称して販売継続していますが、当然、寿命はメビウスのものより短くなります。
根本的な対策は、後継機である"5400-L06"モデルで実現しています。
それは、上の図のように、インク・リボンのつなぎ目の部分の隣にマークを付け、そしてプリンター本体に、そのマークを読み取るセンサーを取り付けることによって、つなぎ目が来たことをプリンターが検知し、その部分は印字ヘッドのピンが叩かないような仕組みを取り入れたということです。
"リボン・スキップ機構対応"というインク・リボンが、これです。この仕組みは、"5400-L06"の後継機である"5400-F06"でも採用されています。

以上のような経緯から、5400 用のインク・リボンには複数の種類がありますが、中速機である"5400-F06/L06"だけでなく、低速機の"5400-F02/L02"にも、この"リボン・スキップ機構対応"のインク・リボンを使うことが、印字品質の面でも、在庫の管理の面でもメリットがあると言えます。

3. インク・リボンは斜めにセットされる。
5400 プリンターを正面から良く見ると、インク・リボンは、プリンターに対して水平ではなく、右上がりに斜めにセットされていることが分かります。
プリンターに対して斜めにセットされたインク・リボン

これも、インク・リボンを永く使う、つまりインク・リボンに沁みこんでるインクをなるべく有効に使うための工夫です。
印字ヘッドがインク・リボンを叩いて印刷した文字の高さは、"5400-F10"では、180DPI(ドット/インチ)で 24 ドットですから、1 ドットの直径を 0.3mm とすると、
23 x 25.4 / 180 + 0.3 = 3.5mm
になります。
もし、インク・リボンが水平にセットされていたら、インク・リボンの幅の内、約 3.5mm の幅しか印刷に使用しないことになります。
インク・リボンが斜めにセットされることによって、次の図のように、インク・リボンの幅の大部分を印刷に使用することができるわけです。印刷に使用する幅を広くすることによって、インク・リボンの生地の痛みを分散させ、印刷に使用してインクが減った部分に、周囲からインクが滲んで補給される効率が向上します。
インク・リボンが水平の場合vs斜めの場合