始めの言葉

「プリンターから印刷できて当たり前」と、ユーザーからもSIerからも軽視されがちなプリンターの世界ですが、実際にはお困りだったり、思ったような印刷結果が得られないまま我慢してお使いの皆様のために、今までの経験が役立てばと、このブログを立ち上げました。印刷の基本から、応用情報、問題の解決方法を情報発信すると共に、PDF化など、これからどうするかについても、ご相談に乗れれば幸いです。ご質問はコメントでお寄せください。

2017年10月21日土曜日

AS/400 プリンティングに求められるソリューション 第11回 - Mapping Suite とは- 1 -

"Mapping Suite" を使ってできることは、まだまだありますが、ここではどのようなソリューションなのかをご紹介いたします。
"Mapping Suite" は、フランス北部のリール(Lille、パリからTGVで1時間程度の距離)にある、Mapping 社で開発されたソリューションです。
Mapping 社は、元々、AS/400 関連の周辺機器、特にプリンターの販売会社だったのですが、1996年にオーナーの方が思い切って、大学卒業したばかりの若いエンジニアを採用して、AS/400 上で稼動するソリューション "Mapping Suite"を開発しました。それによって、ハードウェアの販売会社から、ソリューションとサービスの会社に、大きく業態を変えたのです。
これは、ちょうど私が経験した、2000年頃からライン・プリンターやドット・プリンターがそのまま後継機に置き換わらなくなって、お客様はプリンターのオープン化や、帳票の電子化を志向し始めたという現象が、フランスでは早めに起きていたこと、そして、Mapping のオーナーの方はいち早くそれを察知して、会社の業態をダイナミックに切り替えることに成功したことを意味していると思います。
同時に、AS/400のユーザーは、フランスでも日本でも同じような志向を持っていたという点は、おもしろいと思います。

Mapping は、初め SBCS のスプールにのみ対応していましたが、その後、2006年にユニコードに対応することで、DBCS のスプールにも対応しています。
また、2006年には、IBM のプリンティング・システムズ事業部とワールド・パートナー契約を締結して、フランス以外の国には、IBM が販売と保守を担当することになりました。そして、その契約が、インフォプリント・ソリューションズ社に引き継がれ、2008年には、日本でも発表されることになったわけです。
Mapping Suite のホームページでは、今現在、世界中で約 2,300社のユーザーが使用しているとのことです。
国内では、2008年の発表時点でのバージョンは、"V6" でしたが、その後、2015年3月に "V7" が発表されています。

"Mapping Suite"の最大の特徴は、AS/400で稼動することです。それによるメリットは次のようになると思います。
- Windows サーバーが不要です。
- お客様の RPG や CL のスキルを生かすことができます。
- Mapping は、OS/400 が元々持っている機能は活用するようにできていますので、プリンターへの印刷管理も従来どおり OUTQ によって可能です。
しかし、裏返すと、メリットも懸念点に繋がります。つまり、Mapping が行う処理は、AS/400 の CPU の負荷になるので、既存のアプリケーションの実行に影響を与える"可能性"があるということです。
(ただ、今まで国内で導入されたお客様で、実際に問題になったケースはありません。)

もう一つの大きな特徴は、出力先のプリンターのメーカーを問わないことです。
レーザー・プリンターや複合機であれば、PDF ダイレクト印刷機能、XPS ダイレクト印刷機能、あるいは PCL モードを持っていれば、LAN 直結で AS/400 から直接印刷ことが可能です。そして、それらの機能は、ほとんどのメーカーのプリンターや複合機では、標準、若しくは 2万円程度の安価なオプションとして用意されています。
なお、それらの機能が無い、若しくは今からオプションの追加ができない、設置済みのプリンターや複合機に対しては、オプションの"Mapping Virtual Printer"を使用すると、PC 経由にはなりますが、Windowsプリンター・ドライバーと Adobe Reader を使って、Mappingが生成した PDF を自動印刷することができます。"Mapping Virtual Printer"は、標準料金が 57,500円で、25個までのプリンター出力先を登録できます。つまり、Windowsプリンター・ドライバーを持ったプリンターなら、メーカーを問わず、AS/400 上の Mapping から自動印刷できるということです。
Mapping 処理の概略


2017年10月14日土曜日

AS/400 プリンティングに求められるソリューション 第10回 - Mapping Suite でできること- 2 -

"Mapping Suite" のライセンスには、帳票設計用のツールである "MapDraw"が付属しています。このツールは、Windows 上で稼動し、コピー・フリーです。従って、複数のメンバーの PC にインストールして、多くの帳票を複数のメンバーで分担して設計するといった使い方が可能です。
"MapDraw" の特徴の一つが、左右に2分割した右側の画面に、スプールや XML ファイルを表示しながら、帳票設計できる点です。XML ファイルは、そのまま直接読み込みますが、AS/400 上のスプールは、テキスト・ファイルに近い形式のファイルに変換して、IFS 上に書き出したものを読み込みます。
MapDraw の画面例

この "MapDraw" を使うと、従来の帳票をカット紙化したり、両面印刷できるようにするだけでなく、次のような、今までできなかった表現が可能になります。

1. Windows PC にあるフォントを使って帳票設計します。そのため、1つの帳票の中で、様々な書体のWindows フォントを、様々なポイント数(大きさ)で使い分けることができます。もちろん、今までどおり、情報を強調するための縦倍角や、横倍角も可能ですが、ポイント数や、太字、斜体等 Windows の世界では当たり前だった指定が、AS/400 の世界でも可能になります。
Meiryo 11P フォントとMS Gothic 10Pフォントの使い分け例

2. 条件設定機能があります。帳票設計全体に対しても条件付けできますので、例えば、請求書の"表紙"のページと、"明細"のページの設計を変えて1つの請求書の PDF とすることができます。
スプールの中の、表紙のページと明細のページのデータの違い、例えば、表紙のページには特定の場所に宛先住所の郵便番号の中の"-"が必ずあることに着目して、その有無を条件として、表紙用の設計を適用するか、明細用の設計を適用するかを指定します。
また、他にも、数字にマイナス記号が付いていたら赤色で表示するとか、データの存在する行のみ罫線を引くといった表現が可能です。
データのある行にのみ罫線を引くための条件付け例

3. データに対応したイメージを追加することができます。例えば、社員番号に対応した印影を追加する機能は、前々回のお話しでご紹介した"ケアコム"様の帳票で活用されています。他にも、部品番号に対して、その写真イメージや、図面イメージを追加して表現できれば、従来の帳票と比べて圧倒的に分かりやすい帳票に変化します。
これは、その設計と、それらのイメージを"データ.jpg"という JPEG 形式のファイルにして、IFS 上の特定のフォルダーの下に保存しておくことによって実現します。
データ"0776"を印影イメージで表示するための設計と、そのプレビュー画面

4. バーコードの指定が可能です。国内で使用されている1次元バーコードの他に、QRコードを含む2次元コードも簡単に指定できます。
1次元バーコードは、MapDraw と併せてご提供している1次元バーコード用の Windows フォントを使って表示します。
Mapping が生成する PCL データや PDF ファイルには、フォント・イメージを埋め込むことが標準となっています。そのため、設計する際に使用したバーコード用のフォントが入っていない PC 上でも同じようにバーコードが表示されます。
また、データのメモリーと結合機能がありますので、複数個所に分かれて存在するデータを結合して QR コードで表示することも可能です。
データ"07760001"をCODE39で表示するための設計と、そのプレビュー

2017年10月9日月曜日

AS/400 プリンティングに求められるソリューション 第9回 - Mapping Suite でできること-1 -


Mapping Suite は、どのような課題を解決するために役立つソリューションでしょうか ?

1. AS/400 上の既存のアプリケーションを変更すること無しに、連続用紙への印刷をカット紙に移行することができます。
特に、今は、罫線や固定文字が印刷された事前印刷用紙に、ライン・プリンターやドット・プリンターを使って、データを印刷しているような場合、例え、それが複写伝票であっても、白紙のカット紙への印刷に切り替えるのは、Mapping Suite の得意分野です。
そして、対応できるプリンターや複合機は、メーカーを問わないのも、大きな特徴です。
特に、PCL モードや、PDF ダイレクト印刷機能、XPS ダイレクト印刷機能を持つプリンターに対しては、AS/400 から、PC を介することなく、LAN 接続で直接印刷が可能です。

連続用紙への印刷からカット紙への印刷に移行することのメリットや、そのための注意点は、過去のお話で触れてきましたので、そちらをご参照ください。
ライン・プリンターの全て - 第15回 - 日本語ライン・プリンターを賢く使う-1
連続用紙への印刷から、カット紙への印刷に移行する -第6回 事前印刷用紙からの移行-
連続用紙への印刷から、カット紙への印刷に移行する -第7回 事前印刷用紙からの移行-
連続用紙への印刷から、カット紙への印刷に移行する -第1回 基本の考え方-
AS/400からの印刷 ~基礎編-8~
6枚複写の伝票から A4用紙 2枚への移行例

2. AS/400 上の既存のアプリケーションを変更すること無しに、帳票の PDF化ができます。今まで印刷していた帳票を PDF化すると、次のような運用が可能になります。

2-1. バインダーに綴じて保管していた伝票の控を PDF化して、ファイル・サーバーに保管する。
その結果、次のようなメリットが考えられます。
-> 保管スペースの大幅な削減。
-> 検索のための時間(手間)の削減。
-> 保管先フォルダーを分けて、フォルダー毎にアクセス管理を行なうことによる、セキュリティ管理の強化。
-> PDFファイル自体に管理用のパスワードを付与することによる、セキュリティ管理の強化。
IFS 上に生成されたPDFをファイル・サーバーに転送して保存

2-2. 印刷した帳票を封筒に詰めて郵送していた業務を、PDFファイルを添付したメール送信に移行する。
その結果、次のようなメリットが考えられます。
-> 印刷代、郵送代の削減。
-> 手作業による封筒詰めに伴う手間と、ミスの発生の削減。

2-3. 印刷した帳票を FAX 送信していた業務を、PDFファイルを使った FAX 自動送信に移行する。
PDFを使った FAX 自動送信は、クラウド・サービスを使用するものと、複合機の各メーカーが用意している FAX送信ソリューションを使うものの 2つの方式に分かれます。
前者は、クラウド・サービスを提供しているサービサーから指定されるメール・アドレス宛に、PDFを添付ファイルとしてメール送信する方式です。その場合、FAXの宛先番号の指定方法は、PDFのファイル名に含める方式や、別に添付するテキスト・ファイル内に記載する方式などがあります。
後者は、WindowsServer 上で稼動する FAX送信ソリューションが指定するフォルダーに対して、宛先番号を含むファイル名を付けた PDFを、AS/400 から FTP送信すると、複合機から電話回線を使って FAX送信されるという方式です。
どちらの方式でも、次のようなメリットが考えられます。
-> 印刷する必要が無いので、印刷のための時間(手間)や、用紙代等のコストの削減。
-> FAX 送信のための作業が削減されるだけでなく、送信先が自動的に指定されるので、誤送信が削減できる。
PDFを使った FAX 自動送信ソリューションの例

2-4. AS/400 上で PDFが生成されたら、リクエストしたユーザーの PCにFTP送信して、その PC上の予め決めたフォルダーに保存する。
この考え方は、2-1. の集中管理方式とは異なり、各ユーザーが個人で管理する方式です。特に、Mappingの事例でご紹介している"漁船保険中央会"様(その後、日本漁船保険組合に移行)では、各ユーザーのPCにバッチ・プログラムを用意しておいて、PDFを受信すると Adobe Readerが自動的に起動して、そのPDFを画面表示するという運用に切り替えていらっしゃいます。
-> ユーザーは、印刷結果が必要な場合には、Adobe Readerの検索機能を使って、該当するページのみを、通常使用しているプリンターから印刷させるようになりました。それまでの自動的にドット・プリンターに印刷されていた運用と比べると、大幅な用紙の削減が可能になったということです。当然、業務用に設置されていたドット・プリンターは、廃止となっています。

3. 各国語のスプールに対応して、上記のカット紙への印刷や、PDF化が可能です。
文字コードを AS/400 標準の "EBCDIC" から"ユニコード"に変換して処理するため、日本語以外の各国語のスプールに対応します。その結果、次のようなメリットがあります。

3-1. 国内にある AS/400 から海外に設置されて LAN 接続されたプリンターに、現地の言語、あるいは日本語の印刷が可能です。
-> AS/400 からプリンター・セッションを経由した日本語の帳票を印刷するには、日本語のフォントを内蔵していたプリンターが必要ですが、海外では入手できません。そのため、国内から現地に持ち込んで使用されているお客様もあるくらいです。
Mapping が生成する PCLモードの印刷データには、日本語のフォントのイメージを含んでいますので、日本語フォントを内蔵していない PCLモードのプリンターでも日本語の帳票が印刷できます。
また、PDFにも文字コードと一緒にフォント・イメージを埋め込んでいますので、日本語フォントを持っていない PC 上でも、日本語を表示します。
-> 同じ理由で、現地の言語やフォントを使った印刷や、PDFが可能です。
特に、入力データとしてスプールの代わりに、XMLファイルを使用すると、複数の言語を共存させることが可能です。
Mapping の事例でご紹介している "JFC ジャパン"様では、英語とフランス語の併記が必要なカナダ向けのラベルの印刷を、XML ファイルを元に、Mapping と ZEBRA 社のラベル・プリンターで実現されています。
XML ファイルを使ったタイ語と簡体字の共存の例

2017年10月1日日曜日

AS/400 プリンティングに求められるソリューション 第8回 - Mapping Suite のお客様第2号 -

前回のお話でご紹介したケアコム様と並行して、"滝川"というお客様にも Mapping をご提案していて、ほぼ同じ頃にご契約いただきました。
"滝川"様は、理容・美容・エステ・ネイルの用品、機器、設備の総合商社です。日本に"エステティック"という言葉を初めて導入したとのことです。
"滝川"様が、Mapping をご契約いただくに至った大きな動機は、印刷コストの削減です。
公開されている事例に記載されているように、AS/400 からの出力用に使用されていたライン・プリンターが 7台、ドット・プリンターが 30台あり、3年以内に全てが更新の時期を迎えていました。
Mapping 導入後の Mapping セミナーでは、実際にお客様にご講演いただいたのですが、その中でお客様は、次のようにおっしゃっていました。

- システム部の悲しい性(さが)として、内部処理をどれだけ改善しても、ユーザー部門から評価されない。

- それならば、効果が見えやすい画面と帳票を改善しよう。

- ライン・プリンターとドット・プリンター(合計 37台)を新しいモデルに置き換えるだけでは、約3,000万円の費用が掛かることが見込まれる。それならば、これを機に"A4 サイズ・カット紙を中心とした出力環境の移行を検討しよう。

このように考えて、様々な帳票ソリューションを検討されたそうです。その中で、Mapping をご採用いただいた理由は、他のほとんどのソリューションが、Windows Server を建てる必要があるのに対し、Mapping は、AS/400 の中で処理が完結するため、Windows Server が不要な点でした。
カット紙化するために導入されたレーザー・プリンターは、印刷速度が 75ページ/分や 50ページ/分の高速機やデスクトップ型のものと併せて、22台です。この台数になったのは、従来よりも印刷速度が高速化できたことによる、プリンターの集約化の効果によるものです。
更に、配送センターには 5台のラベル・プリンターも導入しても、導入費用を半額に抑えることができました。

コストの削減という観点では、用紙コストの削減も見逃せません。従来のストック・フォームや、納品書等の複写伝票が、安価なA4 サイズや A3 サイズのカット紙に切り替わったこと、明細帳票や保存資料には、できるだけ両面印刷を活用して印刷枚数を削減することにより、インク・リボン代よりもトナー代が高くなったことも含めても、年間 200万円以上のランニング・コストの削減ができたとのことです。

特に"両面印刷"については、お客様の次の言葉が印象に残っています。
1. 従来の連続用紙の良いところは、印刷後の用紙がまとまっていることであり、それに対してカット紙は、大量に印刷した後の用紙の取り扱いに注意しないと、大変なことになる。カット紙の欠点を防ぐには、プリンターのオプションの機能を使って、印刷後に自動的にステープル止めすることにする。

2. 社内向けのストック・フォームに印刷していた帳票を A4サイズ用紙を横長に使用して印刷させてみたところ、ユーザー部門から、文字が小さくなって見え難くなったというクレームになった。そこで、一部の帳票は、ストック・フォームとサイズが似ている A3サイズのカット紙に移行することにした。

3. 社内向けの帳票は、両面印刷にすることによって、用紙の枚数を半減させることができる。ただし、ステープル止めのスペースを取るために、奇数ページは左余白、偶数ページは右余白を大きめに取るように帳票設計したい。->これは、MapDraw の両面印刷用の設計機能を使って、簡単に実現できました。(参照->連続用紙への印刷から、カット紙への印刷に移行する -第5回 縮小して両面印刷する-)

講演では、お客様はその他にも良かった点として、次のことをおしゃっています。
1. 5250 端末でのプリンタ制御が不要になった。つまり、現場は、端末の操作、メッセージの応答、OUTQの操作等を全く意識する必要が無くなり、負担が減った。

2. プリンター資源が統合、用紙在庫のスペースや、書類の保管スペースが削減できた。つまり、A4 サイズ用紙はストック・フォーム(汎用用紙)の半分の大きさで、両面印刷も可能である。

逆に、ご苦労された点としては、次の点を上げられました。
A4サイズに拘ったが故にプログラムの修正が発生した。
1. ストック・フォーム -> B4、A3用紙への移行は、用紙サイズがほぼ同じだったため、楽だった。

2. ストック・フォーム -> A4用紙への移行には、CL プログラム(OVRPRTFコマンド)の修正が必要だった。
具体的には、基幹システムの帳票が 1400本あったため、8人の要員で、その他の業務を行ないながら、3か月掛かった。

そして最後には、次のようにおっしゃって、締めくくっていただきました。
- Mappingは安心して、導入できるソフトウェア

- 舗装された道は、既に出来上がっている。

- あとは、そのルートに乗っかるだけ!
Mappingを使った滝川様の印刷システム

2017年9月22日金曜日

AS/400 プリンティングに求められるソリューション 第7回 - Mapping Suite のお客様第1号 -

東京で行なった研修の最後に、Stephane さんは、私たちに大変心強い言葉を残してくれました。
それは、"Mapping は、永年の間、AS/400 のお客様からのご要望を取り入れて機能拡張を積み重ねてきたものです。だから、日本の AS/400 のお客様のやりたいことも、実現できるはずです。お客様から Mapping でこんなことができるか ? と聞かれたら、先ず Yes と答えてください。どうやって実現するかは、私も一緒に考えるから。" というものでした。
プリンターに関しては、経験を積んできていた私たちですが、ソリューションをお客様に提案し、導入し、日常業務で使用していただくという経験は、ゼロと言って良い状態でした。そのため、研修を受けた後は、大海原にボートで漕ぎ出すような心持でしたが、そんな不安を Stephane さんの言葉が解消してくれました。

実際、2008年に発表して提案活動を行なっていく中で、ナース・コールのシステムを中心に製造販売している"ケアコム"というお客様から、次のような課題をいただきました。
そして、Stephane さんからアドバイスをいただきながら、課題を解決していき、最終的にはもう1件の別のお客様とほぼ同時に、初めてご契約いただく運びとなりました。
その課題とは、次のとおりです。

<現行の運用>
1. 営業担当者がお客様に提出する見積書の印刷。
2. 表紙と明細の 2 種類の事前印刷用紙(連続用紙)に、ドット・プリンターを使って印刷している。(AS/400 からプリンター・セッション経由の印刷)
3. 用紙の架け替えの手間を省くため、表紙印刷用と明細印刷用の 2 台のプリンターを使用している。つまり、スプールも、表紙用と明細用に別々となっている。
4. 印刷後、用紙を 1 枚ずつ切り離した後、印刷された見積り番号を頼りに、表紙と明細を組み合わせる作業が発生している。

<課題>
1. ケアコム様では、お客様先でも見積りを作成できるように、営業担当者にモバイル環境が提供済みとなっている。
2. しかし、見積り書は営業所に設置されたプリンターでないと印刷できないため、見積り書を提出するためには、営業所に戻らないとならない。そのため、モバイル環境の効果が十分発揮できていない。
(四国では、営業所が 1 箇所しかないため、お客様の場所によっては、提出までかなりの時間が掛かっているとのことでした。)
3. 別々のプリンターで印刷された表紙と明細を、見積り番号を使って組み合わせるため、ミスが起きることがある。

<要件>
1. 現行のアプリケーションを変えずに、見積りと明細をセットにした 1 つの PDF ファイルを生成する。
2. PDF のファイル名には、スプールの中に見積り番号を使用する。
3. 表紙には、担当者と上司が押印していたが、PDF ファイルでは、印影が付いた状態とする。(見積り番号の先頭の 4 桁が社員番号)
4. 提示金額が消費税込みの見積りと、そうでない見積りの 2 種類がある。現行では、表紙に消費税込みであることを事前印刷していて、そうでない場合は、その上に "====" を印刷して消している。PDF ファイルでは、消費税込みか込みではないかの文章を切り替えて表示したい。

<技術的な課題>
要件の "2", "3", "4" は、Mappingの帳票設計ツールである "MapDraw" の機能を使えば簡単に実現できるのですが、"1" は難しいものがありました。
具体的には、表紙用の OUTQ と明細用の OUTQ に同じ見積り番号のスプールが同時に書き込まれるわけではないため、必ず両者のスプールが揃った時点で、Mapping がスプールを結合しないとなりません。しかし、Stephane さんのアドバイスをいただいて CL を用意し、解決することができました。
ケアコム様のお話では、2002年頃から各社に声を掛けてソリューションを探してきたのですが、この課題を解決できる会社が見つからなかったとのことです。
Mappingによる処理概念-1



Mappingによる処理概念-2

<効果>
ケアコム様の具体的なお話は、Mapping Suite の事例のサイトでご覧いただけます。
導入の効果として、見積書をお客様にメール送信できるようになったり、家庭のプリンターでも印刷できるようになったことによって、営業担当の方の時間の余裕ができて、訪問件数が 30% 増えただけでなく、時短にも繋がったとのことです。
もちろん、ドット・プリンターの維持費や用紙代の削減も実現しています。
それだけでなく、情報システム部が新たに導入したシステムの中でも、ユーザーに感謝された稀有なケースだとも、お客様はおっしゃっていました。
ケアコム様見積り書表紙イメージ
ケアコム様見積り書明細イメージ

2017年9月9日土曜日

AS/400 プリンティングに求められるソリューション 第6回 - Mapping Suite 準備開始 -

"POST2008" の翌週に行なわれた、Infoprint Solutions 社の SE に対する研修の様子を、前々回に掲載しましたが、日本からは私と、もう 1 名のSE が参加しました。
実習のために、自分のPCを持ち込み、会場に設置された AS/400 と接続するのですが、私の隣の 2 名の若いロシア人の画面を覗くと、AS/400 の中に入り込んで、何か実習とはまったく別のことをやっているようでした。逆に、Mapping 社から講師の Stephane さんの他に、助手として参加していたアメリカ人の Don さんは非常に真面目な方で、各人の PC の画面を見ながら、"ブラウザーの画面を閉じて" とか、"メールは止めて" と注意して、研修に集中するように促していたことを覚えています。 (Don さんは、元 IBM 社員。)
一口に外国人と言っても、一人一人は、実に様々な個性の持ち主で、皆違うのだと印象付けられました。


新生 Infoprint Solutions Company の全体集合研修である "POST" は、その費用のためか、2007年と 2008年の 2回で終わってしまいましたが、"POST2007" でのデモを切っ掛けとして、日本でも "Mapping Suite" を 2008年に発表するための準備が始まりました。社内調整は別として、主な作業は次のとおりです。
1. 翻訳
画面やメッセージの文字、マニュアル、ヘルプを日本語に翻訳します。1 回目の翻訳は、翻訳サービスの会社に依頼しましたが、OS/400 を始め他のソフトウェアで使用している用語との整合性のために、自分たちで修正することも必要でした。
例えば、表記に関しても、"property" は、IBM の翻訳ルールに従えば、"プロパティー"となりますが、Windows の世界では"プロパティ"なので、最終的には"プロパティ"とするといった注意です。

2. 検証テスト
Mapping 社からは、ユニコードを使用しているので、日本語のスプール・データにも対応していると聞いてはいたのですが、実際に自分たちで検証する必要があります。しかし、いくら基礎研修を受けたとは言え、初めは私たちも手探りの状態で使い始めたため、何度も Mapping 社のエンジニアの方と英文のメールやファイルのやり取りを行いました。その結果、Mapping のプログラムに修正が入ったこともありますし、Mapping 社では気づいていなかった注意点を私たち側で見つけたこともあります。具体的には、次の点です。
- OS/400 上の Mapping の実行環境のCCSIDのみは、"5035" にセットすること。
CHGJOB CCSID(5035)の実行

- その上で、半角カナ文字と英小文字の文字化けを防ぐために、Mapping のコマンドのパラメーターの一つとして、"コード・ページ"を "290" か"1027" に指定すること。
MAPCPYSPLFコマンドの中のコードページ指定
- Mapping コマンドを実行する端末画面の"コード・ページ"は、"939"か"1399"にセットすること。
5250端末画面の通信の設定

この翻訳や検証テストを行なっていくことで、Mapping を日本国内で担当する SE としてのスキルが身についていったわけです。
Mapping の研修としては、"POST2008" 以外に、その直後の 2008年 4月には東京で、オーストラリアも含むアジア・パシフィック各国の Infoprint Solutions 社の SE 向けの研修を行なっています。
その際に、やはり講師となっていただいた Mapping 社の Stephane や Nathalie さんには、日本のメンバーに対しても、追加の研修を行なっていただきました。
更に続けて、同じ 2008年の 5月には、私と、もう 1名の SE が、Mapping 社があるフランスのリール(Lille)に行って、研修を受けています。

そのような積み重ねと営業努力の結果、2008年中に製品発表を行ない、2008年末には第 1 号のお客様に契約をいただくことになったのです。

2017年9月2日土曜日

AS/400 プリンティングに求められるソリューション 第5回 - POST2008でのMapping Suite -

2008年の "POST2008" の始まる前に、私たち、参加する社員は、社員番号と姓名(アルファベット)を提出するよう求められました。初めは、単に参加者リストを作るためと軽く考えていましたが、実際にはそうではありませんでした。
ホテルの会場の入り口に、空港にある金属探知機のようなゲートがあって、事前に配布された参加カードを持って各人がそこを通過すると、自動的にチェックインする仕組みができていました。これは、参加カードに、社員番号の情報を持った IC タグが埋め込まれていて、ゲートを通ると、RFID を使ってセンサーがそれを検知し、出席記録に書き込まれるという仕組みです。そして、その仕組みを実現するためのソリューションとして、"Mapping Suite" と "InfoPrint 6700" プリンターが使用されました。

"Mapping Suite" の持っている次の機能を活用していました。
1. 提供された、参加する社員の情報(社員番号と姓名)が入った CSV 形式のファイルに対して、帳票設計を行ない、InfoPrint 6700 プリンターが持っている "IGP" 形式の印刷データを生成して、参加カードを印刷する。

2. 帳票設計する際に、特定の箇所のデータ(社員番号)を参加カード内の IC タグに書き込むことを指定する。その結果、InfoPrint 6700 プリンターで参加カードを印刷する際には、同時に IC タグに社員番号を書き込まれる。

3. 特定の箇所のデータ(社員番号)に対応するイメージを追加して印刷する。その結果、私たち日本からの参加者のカードの表面には、日本の地図のイメージが、一緒に印刷されていました。
(参加カードを残さなかったので、お見せできなくて残念です。)

更に、後になって、Mapping社の Stephane さんから、次のように裏話をお聞きしました。
- 開始日の 3 日ほど前に、Stephane さんが現地入りして、この仕組みを用意した。
- 通常では 3 日程度では、ここまでの仕組みはできない、つまり、いかに Mapping Suite が、構築が容易で、高機能かということの証明となっている。
このように、自慢していました。

ちなみに、InfoPrint 6700 プリンターは、Printronix 社からの OEM 製品で、"ラベル・プリンター"という範疇に含まれます。
InfoPrint 6700 プリンター

ここで、簡単に、ラベル・プリンターは、他の種類のプリンターと比べてどこが特徴なのかをお話しします。
- 使用する用紙は、細長い台紙にラベルが1枚ずつ並んで配置され、ロール状や折りたたんだ状態になったものです。
ラベル用紙(ロール状)イメージ

- ほとんどのラベル・プリンターは、熱転写方式で印刷します。熱転写方式とは、1 ドット単位で熱を発生する素子が、フィルム上のインクに熱を与えると、その箇所だけインクが溶けて紙に印刷されるという印刷方式です。家庭用の FAX や、自動券売機で発行される切符等にも使用されています。
インパクト・プリンターのインク・リボンと異なり、インク・リボンの中の印刷に使用した箇所は、インクが抜けて透明になっていますので、繰り返し使用することはできません。その代わり、印刷後のインク・リボンを取っておくと、何を印刷したかの記録になります。
インク・フィルム・リボン

- ラベル・プリンターには、標準、若しくはオプションでカッターが付いていますので、印刷後に、ラベルを1枚ずつ自動的にカットすることができ、コマンドを使って制御することが可能です。

- 機種によっては、ラベルに埋め込まれた IC タグに情報を書き込む機能を持っています。

- InfoPrint 6700 では、OEM 元の Printronix 社の標準の、"IGP" という形式の印刷コマンドをサポートしている他に、同じ US のラベル・プリンター・メーカーである ZEBRA 社、日本の "SATO"、"TEC" 各社のコマンドもサポートしています。特に、ZEBRA 社の印刷コマンドでは、文字をイメージとして扱うこともできますので、Mapping Suite からは、日本語のラベルの印刷に使用できます。

2005年頃には、IBM として発表した RFID に対応するラベル・プリンターを、日本でも発表するかどうかと検討を行なったことがあります。しかし、国内で使用許可された周波数の規格との不一致、ラベル・プリンターの IC タグにデータを書き込むためのソリューション、もちろん日本語対応したものを特定することができず、発表を断念したという経緯があります。

なお、余談ですが、ラベルの印刷は、他にもインパクト・プリンターや、レーザー・プリンターでも可能です。
しかし、レーザー・プリンターでは、トナーを用紙に定着させる際に、紙の厚さが均一であることや糊が表面にはみ出てこないが求められます。そのために、台紙が見えないように、ラベルの周囲の紙も残してある状態になっている必要があります。
レーザー・プリンター用ラベル紙イメージ(A4サイズ10面の例)
そのような用紙に印刷したラベルと、細長い用紙に1枚ずつ並んだラベルとでは、剥がし易さや無駄が出るかどうかが、大きく異なるのではないでしょうか ?
印刷速度や印刷品質(解像度)では、レーザー・プリンターの方が優れていると思いますが、現場ではラベル・プリンターが多く使用されていることの理由は、その辺りにあるのではないかと思います。