始めの言葉

「プリンターから印刷できて当たり前」と、ユーザーからもSIerからも軽視されがちなプリンターの世界ですが、実際にはお困りだったり、思ったような印刷結果が得られないまま我慢してお使いの皆様のために、今までの経験が役立てばと、このブログを立ち上げました。印刷の基本から、応用情報、問題の解決方法を情報発信すると共に、PDF化など、これからどうするかについても、ご相談に乗れれば幸いです。ご質問はコメントでお寄せください。
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2017年4月1日土曜日

IBM 小型レーザー・プリンターの今まで -第5回- 5577互換からの拡張と更なる拡張

J.D.氏が赴任される前までのチームの方針は、プリンターの機能の中核を成すマイクロコードと、それを実装する制御基板は、アーキテクチャーと基本設計を内製することでした。
しかし、J.D.氏の方針は、"3812"プリンターで採用した外部会社のアーキテクチャーと基本設計を基礎とすることでした。
IBM 3812 プリンター

- アーキテクチャーとしては、2層構造となっています。つまり、実際に印刷するイメージを生成する層と、入力データを処理して印刷イメージを生成する層の内部処理に渡すためのデータ変換を行なう層でできています。その効果として、PC からの印刷データ以外にも、AS/400 や、汎用コンピューターからのデータに対しても、データ変換層を変えるだけで対応できるという点があります。

- ハードウェアとしては、当時はまだ珍しかった"3.5 インチ・フロッピー・ディスク"にマイクロコードを格納して、起動時に読み込むようにできていました。これによって、マイクロコードの修正や、機能拡張があっても、フロッピー・ディスクの内容を書き換えるだけで簡単に対応可能になります。

私たち、チームのメンバーは、自分たちの力が発揮できる、別の表現をすれば外部会社に依存することを避けられる内製を主張したのですが、最終的には、J.D.氏の方針で進めることに決まりました。この決定までの時間も、開発全体の遅れに影響したことは、否定できないと思います。

もう一方の、重要な要素であるレーザー・プリンターの機構部分も、どの OEM メーカーのものを採用するか決まるまでも時間を要しました。
特定のお客様向けに開発した "5569" レーザー・プリンターの経験から、国内で多くのお客様に採用していただける製品とするには、用紙サイズは "A4" だけでは不十分で、"B4"サイズも必須であることは分かっていましたので、その条件を元に、J.D.氏と共に、開発中の OEM 製品を何社も見て回ったものです。
実は、メンバーの間では某社の B4 サイズ機に決めていたのですが、突然、天の声がかかり、まだ試作機段階以前とも言えるレベルの、別の会社の A3 サイズ機を採用することになってしまいました。大は小を兼ねると言いますが、さずがに A3 サイズの用紙に対応するプリンターとなると、かなり大きくなります。それにも増して、デスク・トップ型のコピー機としてできているだけで、これから改造してプリンターとするわけですから、とても短期間では困難であることは明らかです。
案の定、開発期間は長期化し、最後に、そのメーカーのリーダーの方が、原稿を元にコピーを作成する機械と、原稿そのものを作成する機械では、印字品質一つをとっても、要求されるレベルが全く違うことが良く分かりましたとおっしゃっていたことを、よく覚えています。

開発期間が長期化した影響もあって、製品としての価格が予定よりも高くなってしまうことも、問題となりました。そこで、J.D.氏のアイデアで、プリンターの構成を次のように分けることになりました。
- 基本モデルは、5577互換レベルの機能
- 追加オプション(基盤のカードに指す、カートリッジ)によって、"3222"と呼んだ、レーザー・プリンターとしてのコマンド機能を追加
という構成です。
"3222"と呼んだ機能の主なものは、5577コマンドに追加する機能として下記のとおりです。
- 用紙方向縦/横の切り換え
- 縮小印刷
- 給紙トレイの指定
- 明朝体とゴシック体の内蔵フォントの切り換え
- 解像度 240DPI のイメージ・データ
- 32 x 32 ドットで構成された外字

このようにして、発表されたのが、"5587-G01" プリンターです。
(残念ながら、写真等を残していないので、形をお目に掛けられません。)

一方で、当時、PS/55 の OS は、J-DOS と OS/2 で、その上で稼動するアプリケーションが、直接印刷データを生成する方式でした。
今の Windows のプリンターに付属するドライバーが印刷データを生成する方式と異なり、様々なアプリケーション・プログラムが直接、プリンターが持っているコマンドを発行することで、初めてそのプリンターの機能を使って刷できるという方式です。
従って、いくらプリンター側で高機能なコマンドを用意しても、アプリケーション・プログラムがそのコマンドを送って来なければ、宝の持ち腐れでしかありません。
そのため、レーザー・プリンターを販売する各社は、それぞれ独自の定義で決めたコマンドを、様々なアプリケーション・プログラムのメーカーに開示して、対応していただくよう働きかけをしていたものです。
例えば、ワープロ(文書作成)プログラムでは、"一太郎"が圧倒的なシェアを占めていましたので、各プリンター・メーカーは、開発元であるジャスト・システム様に日参していたはずです。
つまり、当時のレーザー・プリンターのメーカーは、独自コマンドを拡張し、それに対応するアプリケーション・プログラムを増やし、その結果、自社コマンドが業界標準の地位を築くことを目指していたという訳です。

私も、IBM 社内のソフトウェアの開発チームに対して、"3222" のコマンド対応をお願いして回りましたが、各製品の開発項目の優先順位とリソースの関係もあって、なかなか思ったようには進みませんでした。最終的に、OS/2 や J-DOS という OS の開発チームからは、32 ドット対応の外字をサポートするという協力はいただけたのですが、当初は、何故、外字の対応だけなのかが理解できていないというありさまでした。
コマンドの拡張に関しては、プリンター開発チームの中で、他社のものと同等以上のものを目指して行なわれ、後に "PAGES" と呼ぶ、コマンドのセットが定義されました。


2016年9月3日土曜日

ライン・プリンターの全て - 第8回- 日本語ライン・プリンターの歴史-8

"5400-L06"が発表されてから 3 年後の 2006 年に、その後継機であり、2016 年の現在も販売中の"5400-F06"が発表されました。中速機のシリーズでは久し振りに筐体が変わりました。特に、上面に平らな部分ができたので、5327 以来、久し振りに、印刷後の用紙を置くことができるようになりました。
"5400-F06"は、それまでの、"5400-006"、"5400-S06"、"5400-L06"と比較して、次の点が異なります。
  1. カバーが全て金属製となったためか、印刷中の音が、明らかに小さくなりました。
  2. 印刷後の用紙を取り出すための扉が、左側の他に右側にも付きました。そのため、左右どちらの部屋の隅にも置くことができます。
  3. Twinax 接続のオプションが無くなりました。
  4. Telnet5250E と LPR の自動切換えモードを選択できるようになりました。これによって、AS/400 からの印刷と、Windows PC からの LAN 経由の印刷が混在する時に、プリンターの初期設定を変更して再起動を待つ必要が無くなりました。
  5. 印刷速度が、10% 以上、速くなりました。
  6. 印刷速度を落とさずに、印刷用のピンの押す力(印字圧)を強めるモードが、コピー強化モードに加わりました。用紙の厚さに対応して、印字圧調整レバーが、"1" よりも大きな値にセットされると、自動的にこのコピー強化モードとなり、操作パネルの"コピー強化"ランプが点灯します。
逆に、用紙表面の汚れを防ぐ"リボンつなぎ目スキップ機能"に対応したインク・リボンやインク・リボン・カートリッジは、従来と共通となっています。
5400-F06 外観

<"5400-F06"プリンターの主な仕様>
- 印刷速度 : 410 行/分(通常速モード)
                  570 行/分(高速モード、横方向1/3ドット間引き)
                  680 行/分(超高速モード、横方向2/3ドット間引き)
- 想定月間平均印刷枚数 : 12,000枚(15x11 インチ・サイズ用紙)
- 複写枚数 : オリジナル + 8 枚(コピー強化モード、厚さ 0.5mm まで)
- インターフェイス(標準) : LAN、パラレル
- 対応コマンド : SCSコマンド、テキスト・コマンド(Telnet5250E)
                      5577コマンド (LPR、パラレル・インターフェイス)、
                      ESC/Pコマンド (LPR、パラレル・インターフェイス)
- 内蔵日本語フォント : IBM 明朝体、平成明朝体、新旧JIS規格選択(5577モード)
- 英小文字と半角カナの共存印刷 : 可
- バーコード・コマンド : 対応(8 種類、SCS、テキスト・コマンド、5577 モード)
- 販売期間 : 2006 年 -

2007 年は、インフォプリント・ソリューションズ・ジャパンになった年ですが、その 2 年後、2009 年に、"5400-L02"は"5400-F02"に、"5400-L10"は"5400-F10"にモデル・チェンジしています。大きな変更はありませんが、LAN カードの機能の共通化を生かして
  • "5400-F02"、"5400-F10"共通に、Telnet5250E と LPR の自動切換えに対応しました。
  • "5400-F10"では、"5400-L10"では間に合わなかった"プリンターWebページ"が、追加されました。
それぞれのモデルが、2016 年現在、現行モデルとして販売中です。

これで、2016 年現在まで戻ってきましたので、次回からは、ライン・プリンターの使い方をお話ししたいと思います。

2016年8月27日土曜日

ライン・プリンターの全て - 第7回- 日本語ライン・プリンターの歴史-7

前回ご紹介した"5400-L02"と同じく、2002 年に発表された、最高速モデル"5400-L10"は、他のモデルと異なり、1回の移動で縦 12 ドットを印刷する印字ヘッドを、上下 2 組持っています。そのため、縦 24 ドットの 1 行を印刷するには、印字ヘッドが右から左、若しくは左から右に 1 回移動するだけで済んでしまうので、高速印刷が可能になっています。しかし、それだけに、2 組の印字ヘッドの位置の調整を正しく行なわないと、文字は罫線が歪んで印刷されることになります。
また、1 回の印字ヘッドの移動で 1 行印刷できるために、インク・リボンの幅も広くなっています。そのため、他の中速モデルと低速モデルは、同じ詰め替えリボンが使えますが、"5400-L10"は別のものとなっています。
また、印刷速度が速いということは、その分、耐久性も高くないとなりません。そのために、用紙を送るためのトラクターも、他のモデルと異なり、かなりがっちりしたものとなっています。
5400-L10 外観
<"5400-L10"プリンターの主な仕様>
- 印刷速度 : 600 行/分(通常速モード)
                  800 行/分(高速モード、横方向 1/3 ドット間引き)
                  1,000 行/分(超高速モード、横方向2/3ドット間引き)
- 想定月間平均印刷枚数 : 20,000枚(15x11 インチ・サイズ用紙)
- 複写枚数 : オリジナル + 7 枚(コピー強化モード、厚さ 0.5mm まで)
- インターフェイス(標準) : Twinax、LAN、パラレル
- 対応コマンド : SCSコマンド、テキスト・コマンド(Telnet5250E、Twinax)
                      5577コマンド (LPR、パラレル・インターフェイス)、
                      ESC/Pコマンド (LPR、パラレル・インターフェイス)
- 内蔵日本語フォント : IBM 明朝体、平成明朝体、新旧JIS規格選択(5577 モード)
- 英小文字と半角カナの共存印刷 : 可
- バーコード・コマンド : 対応(8 種類、SCS、テキスト・コマンド、5577 モード)
- 販売期間 : 2002 年 - 2009 年

翌年、2003 年には、"5400"シリーズの中核となる中速モデル"5400-L06"が、発表されました。このモデルによって、中速モデルも内蔵 LAN カードが他の速度のモデルと共通となり、共通仕様となっています。
5400-L06 外観
<"5400-L06"プリンターの主な仕様>
- 印刷速度 : 360 行/分(通常速モード)
                  500 行/分(高速モード、横方向1/3ドット間引き)
                  600 行/分(超高速モード、横方向2/3ドット間引き)
- 想定月間平均印刷枚数 : 12,000枚(15x11 インチ・サイズ用紙)
- 複写枚数 : オリジナル + 8 枚(コピー強化モード、厚さ 0.5mm まで)
- インターフェイス(標準) : LAN、パラレル
                        (オプション) : Twinax(LAN、パラレルと共存可能)
- 対応コマンド : SCSコマンド、テキスト・コマンド(Telnet5250E、Twinax)
                      5577コマンド (LPR、パラレル・インターフェイス)、
                      ESC/Pコマンド (LPR、パラレル・インターフェイス)
- 内蔵日本語フォント : IBM 明朝体、平成明朝体、新旧JIS規格選択(5577 モード)
- 英小文字と半角カナの共存印刷 : 可
- バーコード・コマンド : 対応(8 種類、SCS、テキスト・コマンド、5577 モード)
- 販売期間 : 2003 年 - 2006 年

細かい点ですが、"5400-L06"では、"5400-006/S06"から改善された点があります。それは、印刷中に印字ヘッドの前に来たインク・リボンにつなぎ目があることを、自動的に検知して、その部分は印刷に使用せず、飛ばす機能が追加されたことです。
インク・リボン・カートリッジとインク・リボン
インク・リボンは、長い布のリボンの両端を、溶かして接着し、大きな輪の状態になっています。リボンを 1 回ひねってから接着すると、"メビウスの輪"となりますので、印刷する際にインク・リボンが回転していくと、自動的に表と裏の両面を印字ヘッドのピンが叩くことになります。これは、1 本のインク・リボンをできるだけ有効に使用するための知恵なのですが、このつなぎ目の部分をピンが叩くと、他の部分よりも毛羽立ちしやすくなります。その毛羽立った先が用紙の表面をこすり、インク汚れを付けるという現象が、この中速モデルで発生しました。
(不思議なことに、高速モデルや低速モデルでは発生していないようです。)
その対策として、インク・リボンのつなぎ目の近傍にマークを付け、プリンター側に追加したセンサーが印字中にそれを検知したら、その部分が通過してから印刷するような改良を加えました。その結果、5400 プリンター用のリボンには"スキップ機構対応"とそうでないものの 2 種類が存在しますが、当然、"5400-L06/F06"用には"スキップ機構対応"のものが、お勧めです。

2016年8月20日土曜日

ライン・プリンターの全て - 第6回- 日本語ライン・プリンターの歴史-6

AS/400用ライン・プリンターの標準機として、"5400-006"が1998年に発表され、更に、2年後の2000年には、LAN 接続用のオプションも発表されて、当時の IBM ライン・プリンターは磐石の地位を築いたように思えましたが、やはり世の中に"競合"は常にあるものです。互換機メーカーから同じクラスのライン・プリンターが発表され、そのモデルでは、プリンターの左側面に、印刷済みの用紙を取り出せる扉が付いていました。
保守も含めて必要な設置スペース
ライン・プリンターでは、一度に大量のページを印刷することが多くあります。印刷が終了すると、通常は、操作パネルで、印刷中断状態にしてから"改ページ"ボタンを押して、印刷した最終のページの下側のミシン目で用紙を破れるように紙送りします。

印刷済みの用紙は、プリンター内部の後ろ側に落としますので、それを回収するには、後ろの扉を開けないとなりません。それは、プリンターの後ろ側には予め、扉を開けるためのスペースを空けておかないとならないことを意味します。マニュアルにも左のような図で説明してあるのですが、実際にはそのような空きスペースの余裕が無いお客様が多く、プリンターの後ろは壁に付けて設置したいというご要望は、古くからありました。



 その点で、プリンターの左側面や右側面に扉があれば、背面を壁に付けて設置しても、横から印刷済みの用紙を取り出すことができます。
左側の扉を開けた様子
 そこで、急遽、2002年に、左側に扉を付けた"5400-S06"という、"5400-006"の派生モデルを発表しました。
この"5400-S06"では、3種類のインターフェイス、パラレル、Twinax、LAN を標準装備していたのも大きな特徴です。


2002年は、ライン・プリンターの当たり年で、新製品が、他に 2 種類発表されています。
低速モデルの"5407-001/011"の後継製品である、"5400-L02"と、高速モデルの"5427-001"の後継製品である、"5400-L10"です。
先に発表された"5400-L10"は、後にバージョン・アップも行われて、"5400-L02"、"5400-L06"、"5400-L10"は、共通となる仕様を多く持つようになりました。その共通の仕様とは、次の 8 点です。
  1. LAN とパラレル・インターフェイスが標準("L10"モデルは、Twinax 接続も標準)
  2. Telnet5250E で必要な、外字の保存可能な文字数は、4,370 文字(5400-S06は、4,370文字、5400-006 の LAN オプションでは1,152 文字)
  3. JIS第3、JIS第4標準の文字を内蔵し、CCSID1399(バージョン1)に対応
  4. 内蔵フォントの書体は、IBM 明朝体のセットの他に、平成明朝体のセットも選択可能
  5. Web ページにより、操作パネルの液晶表示を PC 上で表示、初期設定を PC から変更可能(← 訂正 : L10モデルでは、後継のF10モデルから実装)
  6. バーコード・コマンドによるバーコードを印刷する行のみ、ドットを間引かない通常速モードで印刷することによって、高速モード、超高速モードでも読み取り精度の低下なくバーコード印刷が可能
  7. バーコードの種類は、元々ある6種類の他、郵便番号、CODE128、QRコード(5577モードのみ)
  8. SCS コマンド以外に、文字データのようにして、バーコードや文字拡大を指定可能な、テキスト・コマンドの採用(バーコードの印刷方法 - 第2回 コマンドを使う、もう一別の方法 -を併せてお読みください。)
5400-L02外観
<"5400-L02"プリンターの主な仕様>
- 印刷速度 : 150 行/分(通常速モード)
                  205 行/分(高速モード、横方向1/3ドット間引き)
                  225 行/分(超高速モード、横方向2/3ドット間引き)
- 想定月間平均印刷枚数 : 6,000枚(15x11 インチ・サイズ用紙)
- 複写枚数 : オリジナル + 8 枚(コピー強化モード、厚さ 0.5mm まで)
- 対応コマンド : SCSコマンド、テキスト・コマンド(Telnet5250E、Twinax)
                      5577コマンド (LPR、パラレル・インターフェイス)、
                      ESC/Pコマンド (LPR、パラレル・インターフェイス)
- 内蔵日本語フォント : IBM 明朝体、平成明朝体、新旧JIS規格選択
- 英小文字と半角カナの共存印刷 : 可
- バーコード・コマンド : 対応(8 種類、SCS、テキスト・コマンド、5577 モード)
- 販売期間 : 2002年 - 2009年

2016年8月6日土曜日

ライン・プリンターの全て - 第4回- 日本語ライン・プリンターの歴史-4

第2回に出てきた"5417"プリンターは、耐久性の指標となる"想定月間平均印刷枚数"が、その前の"5327"プリンターの 2/3 だったことが影響してか、耐久性 = 故障率の面でお客様から問題を指摘されることが多くありました。

因みに、"想定月間平均印刷枚数"は、プリンターを設計する時に、どの程度の耐久性を持たせるかを判断する元の数字となるものです。そして、この値を元に、各部品の故障率が算定され、それを元に保守作業のコスト(部品代と人件費)が計算され、それを元に年間保守契約料金が決まってきます。また、日本語ライン・プリンターの無償保証期間は1年間ですが、その間の保守コストは、製品価格を決める時に組み込まれます。
従って、"想定月間平均印刷枚数"以上の枚数を継続して印刷すると、お客様から見れば、故障頻度の高いプリンターとなり、現場のユーザーのクレームの元になります。一方、保守する側から見れば、一定料金の保守契約料金に対して、コストが大きくなり、赤字になる可能性が出てくるということに繋がります。

そこで、"5417"が発表された 1994年から4年というライン・プリンターとしては比較的短期間の後、1998年に、耐久性を改良した"5400-006"プリンターが発表されました。
  • 5400-006

"5400-006"は、"5417"の改良版ですから、外観上は操作パネルの色が変わった程度で、大きな違いはありません。しかし、中身は改善されています。
  1. <耐久性>懸案だった"想定月間平均印刷枚数"は、"5327"と同じ"12,000枚(15x11インチ用紙)/月"になりました。
  2. <インターフェイス>Twinax ケーブル用のコネクターと、パラレル・インターフェイス・ケーブル用のコネクターの両方を持ち、初期設定で、どちらの接続方式を使うかを選択できるようになりました。これによって、発注時にモデルを意識する必要がなくなったと共に、初めはTwinaxケーブルで接続し、将来はパラレル・インターフェイスで接続するという使い方も可能になりました。一方、販売する上からは、在庫管理が楽になりました。なお、"5400-006"から、パラレル・インターフェイス・モードでは、従来からの"5577"モードに加え、"ESC/P"モードも初期設定で選択可能となっています。
  3. <印刷速度>通常速モードの印刷速度が、330行/分から360行/分に向上しました。それに伴い、高速モードは、430行/分から500行/分に、超高速モードは、500行/分から600行/分に向上しています。
  4. <バーコード・コマンド>少し前に始まった、郵便番号用のバーコード・コマンドを追加しています。
5400-006プリンター外観
 <"5400-006"プリンターの主な仕様>
- 印刷速度 : 360 行/分(通常速モード)
                  500行/分(高速モード、横方向1/3ドット間引き)
                  600行/分(超高速モード、横方向2/3ドット間引き)
- 想定月間平均印刷枚数 : 12,000枚(15x11 インチ・サイズ用紙)
- 複写枚数 : オリジナル + 7 枚(コピー強化モード)
- 対応コマンド : SCSコマンド(Twinax接続)、5577コマンド(パラレル・インターフェイス)、
                       ESC/Pコマンド(パラレル・インターフェイス)
- 内蔵日本語フォント : IBM 明朝体、新旧JIS規格選択
- 英小文字と半角カナの共存印刷 : 可
- バーコード・コマンド : 対応(7種類)

- 販売期間 : 1998年 - 2003年
- 保守終了 : 2017年予定

2016年7月23日土曜日

ライン・プリンターの全て - 第2回- 日本語ライン・プリンターの歴史-2

  • 5427-001

5327 プリンターの上位機種という位置づけで発表されたのが、5427-001 プリンターです。"001"というモデル名しか無いことから、Twinax 接続のみだったことが、分かります。
<"5427-001"プリンターの主な仕様>
- 印刷速度 : 500 行/分(通常速モード)
                  640行/分(高速モード、18x24 ドットという高さ2/3の文字になります。)
- 想定月間平均印刷枚数 : 12,000枚(15x11 インチ・サイズ用紙)
- 複写枚数 : オリジナル + 4 枚(コピー強化モード無し)
- 内蔵日本語フォント : IBM 明朝体、旧JIS規格
- 英小文字と半角カナの共存印刷 : 不可
- バーコード・コマンド : 非対応
- 販売期間 : 1992年 - 2002年
- 保守終了 : 2008年3月31日

当時は最上位モデルという位置づけでしたが、現行のライン・プリンターの仕様と比較すると、印刷速度も、想定月間平均印刷枚数も、"中速"プリンター・クラスだったことに、時代の変化を感じさせられます。
  • 5417-001、5417-011

5327-001/011の後継機という位置づけプリンターです。5327 同様に、"001"モデルが"Twinax"接続、"011"モデルが"パラレル・インターフェイス"接続です。
外観が大きく変わり、トップ・カバーは金属ではなく樹脂製に変わって、丸みを帯びたデザインとなっています。ただ、そのため、印刷後の用紙を置くと、滑って落下するという、お客様のご指摘をいただいたことがあります。
また、機能面では、5327 と比較すると、数々の機能拡張が行なわれました。
  1. 高速モードや超高速モードを実現するために、横方向のドットをそれぞれ1/3、2/3間引く方式が取り入れられました。周囲のドットの配置に配慮して適切なドットを間引くロジックの効果によって、文字の品質を然程落とさず、縦24ドットの文字で高速化を実現しています。この方式は、その後の5400シリーズでも採用されています。
  2. 同じ行を2度打ちする"コピー強化モード"により、複写可能枚数は、オリジナル+7枚まで増えました。
  3. "英小文字セット"、"カナ文字セット"と呼ぶ2種類の半角文字のセットを内蔵して選択可能としたことにより、"CCSID5026"と"CCSID5035"という 2種類の、英小文字と半角カナ文字が共存する印刷に対応しました。(文字コードの話 - 文字化けはなぜ起きるか? 参照)
  4. バーコード・コマンドに対応しました。バーコードを含む帳票を設計するための"APW(APSU)"も用意されたことで、AS/400 の世界で簡単にバーコード付きの帳票を印刷できるようになりました。(ただし、Twinax接続の場合のみ) 
5417プリンター外観
<"5417-001/011"プリンターの主な仕様>
- 印刷速度 : 330 行/分(通常速モード)
                  430行/分(高速モード、横方向1/3ドット間引き)
                  500行/分(超高速モード、横方向2/3ドット間引き)
- 想定月間平均印刷枚数 : 8,000枚(15x11 インチ・サイズ用紙)
- 複写枚数 : オリジナル + 7 枚(コピー強化モード)
- 内蔵日本語フォント : IBM 明朝体、旧JIS規格
- 英小文字と半角カナの共存印刷 : 可
- バーコード・コマンド : 対応(6種類)

- 販売期間 : 1994年 - 1998年
- 保守終了 : 2005?年


超高速  高速 通常速モードのドット構成例
ドットを間引かない、本来の 24x24 ドットの文字を印刷するモードを"通常速"モードと名づけて、操作パネルを始め、マニュアルやカタログに記載しましたが、他社のライン・プリンターでは、1/3ドットを間引く"高速モード"を"通常速モード"と呼ぶようになっています。この呼び方の違いで、誤解を招いた例は少なくなく、未だに続いています。

5327 プリンターの後継機という位置づけだったにも関わらず、想定月間平均印刷枚数が 2/3 となっていたことにより、耐久性の面でトラブルとなってしまったお客様があったことの反省が、後の5400-006モデルに生かされたということは、忘れられません。

2016年7月17日日曜日

ライン・プリンターの全て - 第1回 日本語ライン・プリンターの歴史 -

これからしばらくは、プリンター自体、特に AS/400 からの印刷では標準と言えた、"ライン・プリンター"のお話を続けたいと思います。今回は、日本語ライン・プリンターの歴史です。
  • 5227-001、5227-011

 180dpi(ドット/インチ)の解像度により、24x24ドットの漢字を印刷できる、日本語ライン・プリンターの最初のモデルです。
これ以前に、5224 や 5225 という日本語を印刷できるライン・プリンターがあったということを聞いたことがあります。実物は私も見たことがありません。ただ、解像度が低いため、日本語プリンターの範疇には入れられないと聞きました。5577 シリーズと同じ、180dpi の解像度で、24x24 ドットの漢字が印刷できる、国内製造の印刷機構を持ったライン・プリンターとしては、初めてのモデルであることは、確かです。

<001モデルと011モデルの違い>
"001"モデルは、Twinax インターフェイスを持った、System36/38(発表当時は、まだ AS/400 は出ていません。)接続用のモデルです。"001"モデルの後に発表された"011"モデルは、COAX インターフェイスを持った、メイン・フレームと呼ばれる汎用コンピューター接続用のものです。

<"5227-001"プリンターの主な仕様>

- 印刷速度 : 180 行/分
- 想定月間平均印刷枚数 : 8,000枚(15x11 インチ・サイズ用紙)
- 複写枚数 : オリジナル + 4 枚(コピー強化モード無し)
- 内蔵日本語フォント : IBM 明朝体、旧JIS規格
- 英小文字と半角カナの共存印刷 : 不可
- バーコード・コマンド : 非対応
- 販売期間 : 1985年(001モデル)1986(011モデル)年 - 1995/05/31
- 保守終了 : 2000年12月31日
  • 5327-001、5327-011

5227 プリンターを高速化したモデルです。そのため、耐久性も 1.5 倍に向上しています。
また、5327 プリンター用に開発されたインク・リボンやカセットは、5427、5400-L10/F10を除く、その後のライン・プリンターのモデルに共通に使用できるようになっています。
5327プリンター

<001モデルと011モデルの違い>
"001"モデルは、Twinax インターフェイスを持った、AS/400 接続用のモデルです。一方、"011"モデルは、5227 の場合と異なり、インターフェイスはパラレル・インターフェイスとなっています。そのため、制御コマンドも"5577"モードとなっています。
5227-011モデル同様、汎用機からの印刷を想定しているのですが、3270PC(DOS版のホスト・エミュレーター)や、ダム端末と呼ばれていたホスト接続専用端末に接続して、それらを介してホスト・システムと接続する仕組みとなっています。これは、5227-011のように、プリンターが COAX インターフェイスを持つということは、ホスト・エミュレーション端末をプリンターの内部に持つことを意味していて、その結果、多大な開発コストが掛かることになります。5227 の時のそのような苦い経験を生かして、5327-011 では、ホスト・システムとの間に端末を置くこととしたわけです。

<"5327-001"プリンターの主な仕様>
- 印刷速度 : 330 行/分(通常速モード)
                  430行/分(高速モード、18x24 ドットという高さ2/3の文字になります。)
- 想定月間平均印刷枚数 : 12,000枚(15x11 インチ・サイズ用紙)
- 複写枚数 : オリジナル + 4 枚(コピー強化モード無し)
- 内蔵日本語フォント : IBM 明朝体、旧JIS規格
- 英小文字と半角カナの共存印刷 : 不可
- バーコード・コマンド : 非対応
- 販売期間 : 1988年 - 1992/02/24
- 保守終了 : 2002年12月31日

余談ですが、5327が開発された時には、その下位モデルとしては、5577 プリンターを Twinax 接続でSCSコマンド対応とした"5317"プリンターが、上位モデルとしては、連続用紙とカット紙両用のレーザー・プリンター"5337"プリンターが、開発、発表されました。しかし、残念ながら、どちらも期待された程には、実績を残せませんでした。330行/分という印刷速度を持つライン・プリンター"5327-001"が、AS/400プリンティングの世界では、圧倒的に主流を占めたと言っても過言ではない実績を残しました。

2015年5月9日土曜日

フォント(書体)の話 - 平成書体とIBM書体

今回は、文字コードから少し外れて、文字の書体(デザインそのもの)についてです。
1文字をデザインするだけでも多額の費用が発生することをお話しましたが、それへの対策の一つが「平成書体」と聞いています。つまり、IBMも含めたコンピューター・メーカーが独自にフォントの開発を行うのを止め、共通のフォントを開発することで費用負担を減らすという狙いで「平成フォント協議会」(当時、流行っていたテレビ番組名をもじってそのように呼んでいましたが、正式な名前かどうかは分かりません。)を結成したと聞いた覚えがあります。
IBM書体と平成書体の違い-1
IBM書体と平成書体の違い-2
その結果、従来からのプリンターの内蔵フォントである明朝体のフォントにおいて、IBM書体と少し異なるデザインの文字ができたのは、避けられないことだと思います。もちろん、ほとんどの文字に違いは無いのですが、714文字には僅かにデザインが異なる箇所があります。そのため、5577系のドット・プリンターや5400系のライン・プリンターでは、初期設定で「IBM書体」か「平成書体」を選択できるようになっています。それらの文字の一部を表示しますので、間違い探しのように、どこが違っているか、見つけてみてください。 (お問い合わせをいただくケースが多かったのは、しんにょうの点の数です。)

平成書体は、Windowsのフォントに標準として採用されたことから、印刷結果の「互換性」を考えるとどちらの書体を使って印刷するかという判断が迫られることになります。つまり、Windows以前の時代からの印刷結果との互換性を重視するのであれば、「IBM書体」を選択することになりますし、PC画面の文字との互換性を重視するのであれば、「平成書体」を選択することになります。
【余談】
Windows以前のIBM 5550シリーズやPS/55では、画面の文字は、プリンターの内蔵フォントと同様に、コンピューター本体の中にあるディスプレイ用のカードに搭載されたメモリー内の内蔵フォントを使って表示されていました。その方式を大きく変えたのが、DOS/Vです。DOS/Vでは「ソフト・フォント」と言って、DOS/V自体がデータとしてフォント・イメージを持っていて、画面にそれを表示させていました。それ以来、Windowsでもフォントはソフト・フォントを使用するようになっています。
プリンターの内蔵フォントは、前々回ご紹介したような 24 x 24 個の升目を埋めるようにして設計されていて、このようなフォントを「ラスター・フォント」と呼びます。一方、Windowsで使用しているフォントは、大きさをポイント数で指定して自由に変えられるようになっていますが、このようなフォントを「アウトライン・フォント」と呼びます。画面の文字がラスター・フォントからアウトライン・フォントに変わっていった背景には、CPUの処理能力の急速な発達があります。アウトライン・フォントはCPUが計算して、ポイント数に合わせた大きさの文字の形を計算して表示しているのです。
因みに、「1 ポイント」は文字の高さを表し、「1/72インチ」(1インチ = 25.4mm)を意味しています。