始めの言葉

「プリンターから印刷できて当たり前」と、ユーザーからもSIerからも軽視されがちなプリンターの世界ですが、実際にはお困りだったり、思ったような印刷結果が得られないまま我慢してお使いの皆様のために、今までの経験が役立てばと、このブログを立ち上げました。印刷の基本から、応用情報、問題の解決方法を情報発信すると共に、PDF化など、これからどうするかについても、ご相談に乗れれば幸いです。ご質問はコメントでお寄せください。

2017年2月4日土曜日

ライン・プリンターの全て - 第26回 - たまにいただくお問合せ-3

Q7. 複写帳票に印刷する業務に使用するライン・プリンターは、どのように選択したら良いか。

A7. 先ず、複写帳票が予めカット紙になっている場合は、ドット・プリンターしか対応できません。
(もし、連続用紙に印刷した後、ページ毎にカットするという運用が許されるなら、ライン・プリンターを使用できます。)
連続用紙に印刷するためのライン・プリンターを選択するに当たって、考慮する点は次のとおりです。

1. 用紙のサイズ、複写枚数、全体の厚さが、プリンターの仕様の範囲であること
この点に関しては、"5400シリーズ"のライン・プリンターでは仕様の違いがほとんど無いので、仕様の範囲に収まっているかを確認すれば十分と思います。
ただ、プリンターでバーコードも印刷する場合、インク・リボンのインクを使って印刷される 1 枚目のバーコードを読み取るのか、複写された 2 枚目以降を読み取るのかの違いによって、バー幅の設定を調整する必要があるかもしれません。特に複写された 2 枚目以降を読み取る場合には、自己発色紙よりも、裏カーボンと呼ばれる用紙の裏にインクが予め塗られた用紙を使用する方が、バーコードの読み取り精度は良いようです。

2. 耐久性
ライン・プリンターに限らず、どのようなプリンターでも"想定月間平均印刷枚数"を持っています。
これによって、プリンターの各部品の月間平均故障率が決まります。それと、各部品のコスト、交換に要する時間、人件費を総合して保守に掛かる経費を算出します。それが、保守契約費用や、保証期間中の保守費用になるわけです。
そのため、"想定月間平均印刷枚数"を超えて、プリンターを使用し続けると、お客様から見れば、故障頻度が多いということになりますし、保守を行なう会社から見れば、保守のコストが掛かりすぎということになります。(ライン・プリンターの保守契約費用は、定額であるからです。)
なお、月によって印刷枚数が大きく変動する場合には、1 年間での平均を見れば良いと思います。これは、保守契約が、通常は年単位だからです。

"5400"シリーズでは、"想定月間平均印刷枚数"は次のようになっています。
 5400-F02/L02 : 6,000 枚/月
 5400-F06/L06 : 12,000 枚/月
 5400-F10/L10 : 20,000 枚/月
(15 x 11 インチ・サイズ連続用紙、文字数 1,500 字/枚、全角:半角 = 3:7を想定)

3. 印刷速度
印刷速度の印刷速度の考え方は、ライン・プリンターの全て - 第3回- 日本語ライン・プリンターの歴史-3 でもお話しましたが、カタログ値としては、行ピッチが 6LPI(行/インチ) を前提として、通常速モードで、次のようになっています。
 5400-F02/L02 : 150 行/分
 5400-F06/L06 : 410 行/分
 5400-F10/L10 : 600 行/分
("5227"以降、"5400"シリーズでは、ドットの間引きを行なわない、24 x 24 ドットの文字を印刷する時の速度を"通常速"と呼んでいます。これは、ドット・プリンターである"5577"シリーズでも共通です。しかし、何故か、他社のライン・プリンターのカタログでは、1/3 のドットを間引く時の印刷速度を"通常速"モードと呼んでいるので、カタログで比較する際には、注意が必要です。)

ライン・プリンターでは、1 文字でも文字のある行が続く場合には、この速度で印刷されます。
文字の無い空白行が続くような場合には、高速で紙送りしますが、一定時間で何枚の用紙を印刷できるかという"スループット"を計算するには、次の計算方式で良いかと思います。
 11 インチ長の用紙、5400-F06 通常速モード(410 行/分)の場合
  6 行/インチ x 11 インチ/枚 = 66 行/枚
    410 行/分 ÷ 66 行/枚 = 6.2 枚/分
この計算式を参考に、使用する用紙の長さと、業務上必要なスループット(何枚/分)から逆算していけば、どの位の印刷速度(行/分)が求められるかを計算することができます。

もし、印刷速度と耐久性の組み合わせが、どれかのモデルと大よそ一致すれば良いのですが、例えば、印刷速度を元に選択したモデルでは、耐久性が大幅に足りないといった場合には、台数を増やすことを検討することをお勧めします。
逆に、耐久性は合っているが印刷速度が足りないという場合には、高速モードや超高速モードでの使用を検討されてはいかがでしょうか。特に"高速モード"の印字品質は、通常速モードのものとほとんど変わらないと判断されたお客様も多くいらっしゃいます。
5400-F10/L10 外観
5400-F06 外観
5400-F02/L02 外観

2017年1月29日日曜日

ライン・プリンターの全て - 第25回 - たまにいただくお問合せ-2

Q4. 新たに導入して使用開始した"5400-F10"プリンターにおいて、不可解な問題が発生することがある。

A4. "5400-F10/L10" プリンターの電源スイッチを入れた後、順調に起動しない、一定しないタイミングで、余分に改行したり改ページしたりするという不可解な現象が発生している時は、初めに電源をチェックしてください。
ライン・プリンターの全て - 第7回- 日本語ライン・プリンターの歴史-7 の回でお話したように、"5400-F10/L10" は、高速印刷を実現するために、印字ヘッドを 2 組使っています。そして、その結果、消費電流も大きくなっています。電源の規格は、通常のものと同じく、100V/15Aとなっていますが、実際には、他の機器と同じ電源コンセントを使用していると、電圧低下の影響を受けて、初めに記したような不可解な現象を起こすことがあります。
私自身の経験として、当時本社だった六本木のオフィスにいた頃に導入、設置したばかりの "5400-L10" プリンターが、電源スイッチを入れた後、初期診断テストを繰り返すばかりで、"印刷中断"状態にならなかったことを覚えています。
初めは初期不良を懸念したのですが、最終的には、電源を壁のコンセントから直接取ることに変えて解決しました。

Q5. 5400-L02/F02/006/S06/L06/F06用インク・リボンには 3 種類あるが、それぞれどのように違うのか。

A5. ライン・プリンター用のサプライ品のホーム・ページ を見ると、次の 3 種類のインク・リボンがあることが分かります。
  • 高品質ストレート・リボン
  • リボン・スキップ機構対応リボン
  • リボン
ライン・プリンターの全て - 第20回 - 日本語ライン・プリンターを賢く使う-6 の回でお話したように、中速ライン・プリンター"5400-006/S06"では、インク・リボンの繋ぎ目が印字ヘッドのピンに叩かれ、毛羽立ちが起きると、その面が反転して用紙側に来た時に、用紙の表面を擦ってインクによる汚れを付けるという問題が発生したことがあります。
当時は、お客様が、お客様のお客様に提出する請求書の印刷において発生したため、早急の対策が必要でした。
そこで、印字ヘッドのピンで叩かれる面が用紙側に来ないように、リボンの繋ぎ目で反転させずに接着したリボンの作成しました。それが 1 番目の「高品質ストレート・リボン」です。
インク・リボンの片面しか叩かないようにしましたので、汚れが発生しない代わりに、寿命は標準のものの半分程度になります。
この後の "5400-L06" 以降のモデルでは、繋ぎ目を叩かない機構を組み込んでいますので、このリボンを使用する対象となるプリンターは、"5400-006/S06" のみとなります。

逆に、"リボン・スキップ機構対応リボン"を使用する対象のプリンターは、リボン・スキップ機構を持つ "5400-L06/F06" ということになります。もちろん、低速機である "5400-F02/L02" に使用しても、何も問題はありませんので、例えば、それらと "5400-F06" の両方を使用しているお客様には、在庫管理が簡単になりますので、こちらのリボンを選択することをお勧めします。

Q6. 用紙の長さの仕様は、8 インチから 12 インチとなっているが、もっと短い長さ、あるいは長い長さの用紙は、しようできないのか。

A6. ライン・プリンターは、元々"連続用紙"用のプリンターです。"連続用紙"に印刷するのですから、用紙の長さに制約のあること自体が、おかしなことと言えます。
プリンターの仕様となっている用紙の長さとは、何を意味しているのでしょうか。それは、ミシン目とミシン目の感覚ではなく、用紙の折りたたみのミシン目の間隔と理解して良いと思います。
通常は、印刷データの観点からは、1 ページの長さは、ミシン目の間隔と等しくなります。
しかし、例えば、1 ページの長さが 3 インチの場合、実物の用紙としては、4 ページ毎に折りたたまれるようにできていれば、プリンターの仕様の観点では、3 x 4 = 12 インチの長さの用紙と見なされます。
ページ長3インチ->用紙長12インチ
別の言い方で言えば、印刷された用紙が、プリンターの背面に折りたたまれて溜まっていく際に、折りたたまれる用紙の長さの単位が、8 インチから 12 インチまでなら、プリンターの内部にきれいに折りたたまれていくということを、仕様は謳っているということです。
従って、もし 12 インチ以上の長さの用紙に印刷する場合には、後ろのドアーを解放状態にして、更に、印刷された用紙が初めの折りたたまれた状態のとおり、また折りたたまれて溜まっていくように注意していれば、印刷は可能と言えるわけです。
もちろん、きれいに折りたたまれていなくても、後で人手でたたみ直すということであれば、後ろのドアを開けたままで印刷中は放置しておけます。

2017年1月22日日曜日

ライン・プリンターの全て - 第24回 - たまにいただくお問合せ-1

今回は、今までいただいたお問合せの中から、思い出した順にお話したいと思います。

Q1. 購入したばかりの 5400 プリンターを、Telnet5250E を使って AS/400 と接続するために初期設定を行なっているが、装置記述も OUTQ も自動構成できず、接続できない。

A1. IPアドレスの指定ミスといった単純な理由以外には、次の原因と対策が考えられます。
- 接続先の OS/400 の設定で、自動構成が OFF になっている。
- 接続先の OS/400 の設定で、自動構成は ON だが、接続した装置の数が既に、設定した最大値になっている。
-> これらの場合は、OS/400 の設定を変更する必要があります。

- 既存の装置記述や OUTQ と同じ名前を指定しようとしている。
-> それまで、プリンター・セッション経由の接続で使用していたプリンターを置き換えるに当たって、同じ OUTQ 名をそのまま使用したい場合に、このような現象が起こり得ます。この場合は、既存の装置記述や OUTQ は一旦削除する必要があります。

Q2. プリンター・セッション経由の印刷の時には、プリンターの電源を投入した後は"印刷可能"状態となったが、Telnet5250E による LAN 直結印刷に変更したら、電源投入後は"印刷中断"状態になる。そのため、"印刷"スイッチを押して、"印刷可能"状態に変えないと印刷開始できない。

A2. Twinax ケーブルによる接続の時代もそうだったのですが、AS/400 と直接接続の場合には、プリンターの起動時には"印刷中断"状態となるように決めているようです。
"印刷可能"状態で起動すると、印刷データを送信済みの場合に、プリンターにセットされた用紙が正しいかを確認する間も無く、印刷が始まってしまうことを避けたいと考えられていたのが理由かもしれません。
しかし、通常の PC 用のプリンターの起動時は"印刷可能"状態になりますし、それで不都合はありませんから、私も「印刷可能」状態で起動する方が良いと思っています。

Q3. AS/400 が英語環境の場合でも、5400 プリンターで印刷したい。

A3. 2次言語に"日本語"が導入されていれば、Telnet5250E を使った直接印刷は可能です。しかし、"日本語"環境が全く導入されていないと、直接接続での印刷はできません。
これは、5400 のような日本語プリンターは、OS/400 上では"5553"という名前の"日本語プリンター"として認知されるのですが、日本語環境が無いと、OS/400 上には"5553"が選択肢として存在しないからです。
ちなみに、"5553"という型式は、"マルチステーション5550"の中のプリンターとして発表された、16 ドット漢字用の"5553-A01"、24 ドット漢字用の"5553-B01"というドット・プリンターのものです。
マルチステーション5550 向かって左端が5553

そこで、日本語環境が無くても 5400 プリンターに印刷する方法は、プリンター・セッション経由の接続とすることです。この場合は、OS/400 から見てプリンター・セッションがプリンターの役割を担うことになりますので、実際のプリンターが日本語プリンターであっても関係ないからです。
IBM 6500 シリーズ
IBM 6400 シリーズ
このご質問の背景には、英数文字専用のライン・プリンターの置き換えがあります。
IBM では従来、6400 シリーズ、6500 シリーズという、英数文字専用のライン・プリンターを販売していました。
英数文字専用のプリンターと日本語プリンターの最大の違いは、解像度です。日本語ライン・プリンターは、ドット・プリンターと同じく、漢字を省略無く印刷するために 24 x 24 ドットで印刷します。そのために、180 ドット/インチの解像度、直径 0.2mm の印刷用のピンを使用します。
しかし、アルファベットや数字の印刷にはそこまでの解像度やピンの細さは必要ありません。
その結果、英数文字専用のライン・プリンターは、メリットとして高速印刷と高い耐久性を持っています。
また、接続先のサーバーの種類や、接続インターフェイスの種類も非常に多いという特徴もありました。
ただ、それらのプリンターも販売が終了し、今は OEM 元のプリントロニクス社の P シリーズが販売されているのが現状です。
参考情報

IBM 6500 シリーズ発表レター
IBM 6400 シリーズカタログ

2017年1月3日火曜日

ライン・プリンターの全て - 第23回 - 日本語ライン・プリンターを賢く使う-9

3. インク・リボン・ジャム
印刷中に、インク・リボンが正しく送られない状態が発生すると、操作パネルの液晶表示部に、"リボン ジャム リボンを直してください"というメッセージが表示されて、印刷が止まります。

インク・リボンのジャムで最も多い現象は、用紙厚設定レバーの値が小さ過ぎるため、印字ヘッドと用紙の間隔が狭すぎて、インク・リボンが圧迫された状態、つまり、インク・リボンの走行にブレーキが掛かった状態となってしまっているケースです。
プリンターの印刷中は、プリンターがリボン送りローラーを回転させて、操作員から見て左から右へ一定の速度で、インク・リボンを送っています。しかし、印字ヘッドと用紙の間隔が狭すぎると、プリンターがどんなにリボン送りローラーを回転させても、インク・リボンを送ることができなくなってしまいます。
エラーとして検知されれば、操作員はすぐに気が付きますが、検知されないで印刷を続けていると、インク・リボンの同じ箇所を印字ヘッドが叩き続けることになります。その結果、印字がすぐに薄くなったり、極端な場合はインク・リボンが破れたりすることに、後で気が付くということも起き得ます。繰り返しになりますが、用紙厚設定レバーの設定には、くれぐれも細心の注意を払ってください。
5400-F10/L10のインク・リボン・カートリッジ

他の原因としては、同じインク・リボン・カートリッジに対して、詰め替えリボンの交換を10回以上繰り返しているケースがあります。
ライン・プリンターは印刷量が多いため、印刷用紙から大量の紙粉が発生して、プリンターの中や周囲を舞っています。
これは余談ですが、"5400-L10"を 10 台以上並べて印刷業務を行なっているお客様先で、私が作業していた時に、使用していたノート PC の画面に紙粉が積もってきたことに気づいたことがあります。その時は、それだけの紙粉を自分自身も吸い込んでいることに気づき、愕然としたことを覚えています。
この紙粉は、インク・リボンの表面にも付着し、それがリボン送りローラーの表面にも移って付着していきます。それと、リボン送りローラーの材質であるゴムの劣化の両方が原因となって、同じリボン送りローラーを使い続ける、即ちインク・リボン・カートリッジを使い続けると、リボン送りローラーの表面でインク・リボンがスリップし、正しく送れなくなるという現象が発生します。
そのため、経験的には、詰め替えリボンの交換は、1 つのインク・リボン・カートリッジに対して、10 回までとすることが、お勧めです。

稀に、カートリッジの中で、インク・リボンが倒れたような状態となり、それが原因となってカートリッジの中でインク・リボンが正しく折りたたまれずにジャムとなるという現象があります。
インク・リボン・カートリッジの蓋を開けて、リボン送りローラーを手で回してみると分かりますが、インク・リボンはカートリッジの内側で、自動的にきれいに折りたたまれていくものです。
それが何らかの阻害要因があると、きれいに折りたたまれなくなり、その結果、リボン送りに支障が出ることがあります。
5400-F06/L06のインク・リボン・カートリッジ
そうなったら、そのリボンの使用は諦めて、新しい詰め替えリボンに交換することになります。しかし、カートリッジ内部に収納されるべきインク・リボンを、カートリッジの外に出した状態で、カートリッジをプリンターにセットして印刷することで、最終的にカートリッジ内部にインク・リボンが正しく畳まれた状態を作るという荒業を聞いたことがあります。

2016年12月23日金曜日

ライン・プリンターの全て - 第22回 - 日本語ライン・プリンターを賢く使う-8

2. 用紙ジャムが起きたら
本来起きてはいけないエラーですが、用紙ジャムが発生することがあります。
用紙ジャムが発生すると、ブザーが鳴り、プリンターの操作パネルの液晶表示部に、"用紙詰まり 用紙を直してください"というメッセージが表示されます。
Telnet5250E を使った AS/400 との直接接続の場合には、5250 端末画面上でも、メッセージ・ウェイト状態となり、用紙ジャムが発生している旨のメッセージが表示されます。

対応方法として先ず行なうことは、
- 5400-F10/L10 モデルや、5400-L06/006 モデルでは、プリンター内部の右側にある"プラテン開閉レバー
- 5400-F06 モデルや、5400-F02/L02 モデルでは、左側にある"FTレバー"(用紙厚設定レバー)
これを全開にして、印字ヘッドと用紙の間隔を広げ、詰まった用紙を取り除くことです。

その後は、新たに用紙をセットしたら、開いたプラテン開閉レバーを閉じて(用紙厚設定レバーは、用紙の厚さに応じた値にセットして)印刷を再開します。
ライン・プリンターでは、プリンターの持っているデータ受信用のバッファー・メモリーのサイズが小さいため、用紙ジャムが発生した時点で印刷終了したデータは、既にプリンターには残っていません。
従って、印刷を再開するページを確認した上で、そのページからの印刷データを送信する必要があります。特に、Telnet5250E を使った AS/400 との直接接続の場合には、エラー・メッセージに対する応答処理として、開始ページを指定して印刷再開させることができます。

ちなみに、レーザー・プリンターでは、印刷された用紙が排紙されるまでは、メモリーに印刷イメージを保管しています。そのため、詰まった用紙を取り除いて、プリンターが印刷可能状態となったら、自動的に用紙ジャムとなったページから印刷再開します。ただ、電源を切ってしまうと、メモリーの内容が消えてしまいますので、電源を切らないことが重要です。
その観点からは、ライン・プリンターの場合は、電源を切っても影響が無いと言えます。

以上は、その場の対応方法でしかありません。もし用紙ジャムが頻発するようであれば、根本的な対策が必要です。
私の経験から、次の点をチェックすることをお勧めします。

1. トラクターの左右の間隔
用紙の幅に合わせてトラクターの左右の間隔をセットするのですが、これが広めだったりすると、用紙ジャムの原因になります。通常、狭めにセットされることは無く、広め、つまり用紙を左右に張った状態でセットしてしまうことがあります。目安としては、用紙の送り穴の左右中央にトラクターのピンが出ていること、送り穴がピンに押されて歪んだ状態になっていないことが上げられます。
トラクター左右位置調整の目安

2. 印字ヘッドと用紙の間隔
特にラベル紙を使用している場合、用紙厚設定レバーの設定が狭いと、台紙の上のラベルが引っ掛かって印刷中にラベルが剥がれることがあります。ラベルが剥がれると糊が付いているので、プリンターの内部にくっついて、剥がすのに苦労することになります。
("5400-F06" モデルは、"5400-L06/006" モデルに比べて、プラテンと印字ヘッドの間を広げた時の間隔が狭くなって、プリンター内部につまったラベルが、剥がし辛くなったというご指摘をいただいたことがあります。)
当たり前のことですが、台紙の厚さとラベルの厚さの両方を加味した厚さに合わせてレバーの値を設定するように注意してください。

3. 用紙のミシン目の品質
プリンターのマニュアルには、次のような用紙のミシン目に対する注意事項が書かれています。
- 横ミシン目と縦ミシン目の交差部分は、アンカット部(紙が繋がっている部分)同士で交差すること。
- 用紙の紙端部分はアンカット部とすること。
これらは、ミシン目での用紙の破れやすさに影響する要素です。
ライン・プリンターで多く使用される、事前印刷された複写用紙は、印刷会社で製造されてくるものですが、用紙の品質も製造ロットの違いで異なることがあります。
また、ミシン目はカッターで切って作りますが、同じカッターを使い続けていると、刃の切れが悪くなって、ミシン目の品質に影響するという話を聞いたことがります。

4. 紙ホチキスの向きと出っ張り
複写用紙の 1 枚 1 枚は、印刷中は簡単に剥がれないように、しかし、印刷後はなるべく剥がしやすいような強さで付いていることが理想的です。
プリンターのマニュアルでは、"点のり"と言って、点の状態で糊付けする方式のみ認めていますが、実際には、紙ホチキスも併用使用しているケースが多いように思います。
紙ホチキスとは、紙を櫛の歯状態に打ち抜いて止める方法です。この場合、打ち抜いて折り返した部分が紙の表面に盛り上がるような状態になります。
プリンター内部を用紙が送られていく時に、上向きに折り返された紙ホチキスの端が、リボン・シールドに並んだ、印字ヘッドのピンの通り穴に引っ掛かってリボン・シールドを損傷し、それが用紙を破いて用紙ジャムを引き起こすという現象があります。(リボン・シールドは、非常に薄いステンレスの板ですから)
用紙の幅が、例えば 15 インチあるのであれば、紙ホチキスはリボン・シールドの穴よりも外側を通りますので、リボン・シールドを損傷することはありません。しかし、幅の狭い、例えば宅配便の用紙の場合は、リボン・シールドの穴に紙ホチキスが掛かることを防ぐことができません。
このような用紙の場合には、紙ホチキスの折り返しの向きを下側にするという、用紙側の対応が必要と思います。
用紙ジャムが多発する場合には、プリンターの設定のみではなく、用紙にも注意を向ける必要があります。
紙ホチキスと折り返しの向き




2016年12月11日日曜日

ライン・プリンターの全て - 第21回 - 日本語ライン・プリンターを賢く使う-7

今回は、エラーが発生した場合の対応方法について、お話します。
最も身近なエラーは、用紙切れと用紙ジャムです。

1. 用紙切れの対応方法
用紙切れの発生をプリンタ-が検知するために、用紙の走行経路の途中に、接触式か非接触式のセンサーが付いています。このセンサーが用紙の存在を検知しなくなった時に、"用紙切れ"の情報が操作パネルに表示されます。
ライン・プリンターのモデルによって、用紙切れを検知する方法や箇所は異なります。
"5400-F10/L10"モデルでは、一旦、"用紙がありません"というメッセージが表示されて印刷が止まった後も、再度"印刷"スイッチを押すことにより、完全に用紙の下端まで続けて印刷させます。
同様に、稼動する台数が、今も最も多い"5400-L06/006"モデルでも、用紙切れで一旦印刷が止まった時点で、"印刷"スイッチを押すことで、用紙の最後まで1ページ以上続けて印刷できます。

下の図は、"5400-L06/006"モデルのものですが、用紙切れセンサーがプリンター内部の前の方にあるため、印字ヘッドとの間隔が長めだったことが分かります。つまり、用紙切れセンサーの下を用紙の終端が通過して、"用紙切れ"を検知し、エラー表示する時点では、まだ、印字ヘッドと用紙終端までは、まだ十分印刷可能な用紙が残っていることになります。
そこで、再度"印刷"スイッチを押すことで、用紙の終端まで印刷させます。
2 度目の用紙終端の検知のために、もう 1 つのセンサーがトラクターの近傍にあるのか、それとも、印刷データに含まれる用紙長の情報を元に、プリンターが、1 回目に用紙終端を検知した時に残りの用紙長を計算するのかは、残念ながら私も知りません。そもそも、印字ヘッド近傍に用紙切れセンサーがあって、用紙終端まで印刷して止まるようにできていれば、1 回印刷が止まってから、改めて"印刷"スイッチを押す手間は不要と思うのですが。
5400-L06/006の用紙切れセンサーの位置
また、"印刷"スイッチを押した後は、かなりゆっくりと用紙を送りながら印刷するのですが、それは、用紙切れセンサーが用紙を上から押さえることなく、トラクターだけで用紙を引き上げているので、印字品質を低下させないためという説明を聞いた覚えがあるのですが、そうなのでしょうか ?

ちなみに、"5400-F10"では、用紙切れセンサーは非接触式(光センサー)のタイプになっています。そのため、プリンターの前カバーを外して使用しているお客様において、プリンターの設置場所と向き、窓から差し込んだ太陽光の角度の組み合わせによって、用紙があるのにも関わらず用紙切れ状態と誤検知を起こしたことがあります。

"5400-F06"モデルや"5400-F02"モデルでは、"用紙がありません"というメッセージが表示された時点で、既に用紙下端まで印刷完了しているようですが、どのモデルでも、"印刷"スイッチを押して、用紙下端まで印刷完了させることを習慣付けておくことをお勧めします。

そうしないと、用紙切れが発生したページの最後の何行かのデータが印刷されずに残っているため、新しい用紙をセットして印刷開始させた時に、残った行のデータから印刷が始まり、行ずれが発生することになるからです。

プリンターで発生した"用紙切れ"エラーは、Telnet5250E 接続の場合には、OS/400 側のOUTQの画面で、メッセージ・ウェイト状態として通知されます。それに対して、プリンター・セッション経由の印刷や、PC からの印刷の場合には、印刷データが送信中でない限り、OS/400 側の画面にも、PC 側の画面にもエラー表示はされません。従って、用紙切れになったことを知るには、プリンターがエラー発生時に鳴らすアラーム音が頼りになります。アラーム音は初期設定で、"連続音"、"間欠音"、もしくは"鳴らない"が選択できるだけです。音の大きさは一定です。

注意していただきたい点は他には、"電源を切らない"ということです。"用紙切れ"の場合は、用紙の下端まで印刷した後は、新しい用紙をセットするだけで済みますが、途中で、プリンターの電源を切ってしまうと、メモリーに残っているデータがあった時に、そのデータが消えてしまいます。その結果、新しい用紙をセットして電源を入れ、印刷再開した時に、行ずれを起こすことになります。それを避けるためには、AS/400 や PC から印刷再開するページを指定して、印刷指示しないとならなくなります。

2016年12月4日日曜日

ライン・プリンターの全て - 第20回 - 日本語ライン・プリンターを賢く使う-6

一見、単純に見えるインク・リボンですが、実は、なるべく永く使えるようにするための工夫が施されています。

1. リボンの生地の表も裏も使う
インク・リボンは、印字ヘッドのピンに叩かれ続けていますので、徐々に生地が弱くなっていきます。ピンがインク・リボンの両面を叩く構造とすることで、より長時間使用することができるようになります。
"メビウスの輪"という言葉を聞いたことがないでしょうか ? メビウスという数学者が発見したため、この名前が付いたとのことですが、身近なところでは、リサイクルのマークに使われています。
リサイクル・マーク
リボンの端を繋げて輪の状態にする際に、片方の端を表裏逆にして、もう片方の端と繋げるとできるものです。
できた輪の上にペンで線を書いていくと、いつの間にか表と裏の両方に線が書かれた状態となって、書き始めのところと繋がることが分かります。

インク・リボンもこの原理を使って、非常に長いリボンの端を繋げる時に、片方の端を裏返すことで、印字ヘッドのピンは、リボンの表裏、両面を叩くことになります。
ただし、インク・リボンが正しく送られるために、インク・リボンはプリンターの中で、直立した状態でいますので、途中のどこかで、表裏が逆になる部分が必要になります。
それが、インク・リボンの途中に付属する黒いプラスチック製の、次のような部品です。
インク・リボンのメビウス

マニュアルの中では、図のように"メビウス"と呼んでいますが、メビウスの部分をサポートする部品という意味です。

2. リボンつなぎ目スキップ
インク・リボンのつなぎ目部分は、次のように斜めに切られた端を接着しています。運が良ければ、詰め替えリボンを交換する時に、その部分が表に出ているのを目にすることができます。生地を溶かして接着したように見えます。
インク・リボンつなぎ目

印刷する時には、この部分も印字ヘッドのピンが叩くことになりますが、何故か"5400-006"モデルにおいてだけ、叩かれたつなぎ目が用紙面側に来た時に、叩かれてできたリボンの毛羽が、用紙の表面を汚すという問題が発生しました。
(高速の"5400-L10"や、逆に低速の"5400-L02"では発生しませんでした。)
そこで、対策として、つなぎ目をメビウスにしないインク・リボンを用意し、今でも"高品質ストレート・リボン"と称して販売継続していますが、当然、寿命はメビウスのものより短くなります。
根本的な対策は、後継機である"5400-L06"モデルで実現しています。
それは、上の図のように、インク・リボンのつなぎ目の部分の隣にマークを付け、そしてプリンター本体に、そのマークを読み取るセンサーを取り付けることによって、つなぎ目が来たことをプリンターが検知し、その部分は印字ヘッドのピンが叩かないような仕組みを取り入れたということです。
"リボン・スキップ機構対応"というインク・リボンが、これです。この仕組みは、"5400-L06"の後継機である"5400-F06"でも採用されています。

以上のような経緯から、5400 用のインク・リボンには複数の種類がありますが、中速機である"5400-F06/L06"だけでなく、低速機の"5400-F02/L02"にも、この"リボン・スキップ機構対応"のインク・リボンを使うことが、印字品質の面でも、在庫の管理の面でもメリットがあると言えます。

3. インク・リボンは斜めにセットされる。
5400 プリンターを正面から良く見ると、インク・リボンは、プリンターに対して水平ではなく、右上がりに斜めにセットされていることが分かります。
プリンターに対して斜めにセットされたインク・リボン

これも、インク・リボンを永く使う、つまりインク・リボンに沁みこんでるインクをなるべく有効に使うための工夫です。
印字ヘッドがインク・リボンを叩いて印刷した文字の高さは、"5400-F10"では、180DPI(ドット/インチ)で 24 ドットですから、1 ドットの直径を 0.3mm とすると、
23 x 25.4 / 180 + 0.3 = 3.5mm
になります。
もし、インク・リボンが水平にセットされていたら、インク・リボンの幅の内、約 3.5mm の幅しか印刷に使用しないことになります。
インク・リボンが斜めにセットされることによって、次の図のように、インク・リボンの幅の大部分を印刷に使用することができるわけです。印刷に使用する幅を広くすることによって、インク・リボンの生地の痛みを分散させ、印刷に使用してインクが減った部分に、周囲からインクが滲んで補給される効率が向上します。
インク・リボンが水平の場合vs斜めの場合