始めの言葉

「プリンターから印刷できて当たり前」と、ユーザーからもSIerからも軽視されがちなプリンターの世界ですが、実際にはお困りだったり、思ったような印刷結果が得られないまま我慢してお使いの皆様のために、今までの経験が役立てばと、このブログを立ち上げました。印刷の基本から、応用情報、問題の解決方法を情報発信すると共に、PDF化など、これからどうするかについても、ご相談に乗れれば幸いです。ご質問はコメントでお寄せください。

2016年11月27日日曜日

ライン・プリンターの全て - 第19回 - 日本語ライン・プリンターを賢く使う-5

ライン・プリンターだけに限らず、インパクト方式のプリンターでは、"インク・リボン"を使用しますが、"インク・リボン"には、大きく分けて 2 つの種類があります。

1 つは、ラベル・プリンターや家庭用の FAX で使用される、"熱転写方式"のプリンター用のものです。
このタイプでは、フィルムの上に塗られたインクを、印字ヘッドの素子が熱で溶かし、紙に付着させます。通電され、熱を持った素子 1 つが 1 ドットに相当するわけです。
インクが溶かされて紙に付着した後の部分は、インク・リボン上にはインクは残りませんので、このタイプのインク・リボンは繰り返し使用することはできません。その分、ランニング・コストは高くなりますが、一方で、印刷後のインク・リボンを見ると、印刷した内容を白黒反転状態で確認することができるというメリット(?)があります。

もう 1 種類がインパクト・プリンターで使用される、布にインクを沁みこませたタイプのものです。印字ヘッドのピンで押された部分からインクが滲み出て、紙に付着します。インクの滲み出た後には、毛細管現象によって、周囲にあるインクが徐々に沁みこんでくるため、インク・リボンがプリンター内で 1 周して再び印字ヘッドのピンに押される頃には、既に、元のようにインクが存在する状態となっています。そのため、このタイプのインク・リボンは、繰り返し使うことができるという大きな特徴を持っています。

では、インパクト・プリンターで使用されるインク・リボンが使えなくなる、つまり寿命と判断されるのは、どのような状態になった時でしょうか ?
それには、2 つの要素があります。
1 つ目は、インク・リボンの中のインクをほぼ使いきった時です。毛細管現象で、印字に使用した部分の周囲のインクが沁みこんでくると言っても、何度か繰り返して使用しているうちに、周囲のインクも無くなってきます。つまり、最大限でも、初めにリボンに沁みこませたインクの量までしか使うことはできません。その頃のインク・リボンをプリンターから取り出して見てみると、初めは黒かったものが、灰色になっていますし、印字結果の文字も薄くなっています。
あるいは、プリンターに取り付けたまましばらく使用しないでいると、インクが乾いてきてしまい、インクとして使えなくなるということも起こり得ます。

5400 プリンターのインク・リボン・カセット
もう 1 つの要素は、リボンそのものです。リボンの生地は印字ヘッドのピンによって叩かれ続けますので、永く使っていると弱くなって、平面ではなくなり歪んできます。この頃になると、インク自体も使い切ってしまって、灰色のリボンになっているはずです。

ところで、インク・リボンの寿命はどの位ですか? というお問い合わせをいただくことがありますが、実際には、ユーザーの方が、どの程度の印字の濃さまでを良しと判断するかで変わってきますので、公開されている文字数は、目安でしかありません。

5400 プリンターでは、印刷した行数をカウントしていて、それがある数字になった時に、リボンの交換を促すメッセージを表示するようになっているのですが、その基準となる数字に対しても、50% から 200% まで、10% 刻みで変更できるようになっています。
特に、インク・リボンを使って印刷する 1 枚目にバーコードがあるような帳票の場合には、バーコードの読み取り精度を、リボン交換次期の考慮に入れる必要があります。

更にインク・リボンを納めているカセットに注目すると、カセット自体にも寿命があります。カセットの寿命を決める大きな要素は、リボン送りローラーです。5400 ライン・プリンターの"F10"、"F06"モデルでは、カセット右側に 1 組のリボン送りローラーがあります。プリンターがこのローラーを回転させることによって、インク・リボンが送られています。("F02"モデルでは、カセットは無く、送りローラーはプリンターの一部となっています。)
リボン・カセットのリボン送りローラー
プリンターを使っているとお分かりと思いますが、プリンターの内部では、印刷用紙から発生する非常に微細な紙の埃が舞っていて、プリンター内部に蓄積されていきます。その埃は、インク・リボンの表面にも付着しますので、インク・リボンと常に接しているリボン送りローラーにも付着していきます。それが徐々に積み重なっていくことや、ローラーの材料である樹脂自体の劣化によって、インク・リボンを正しく送ることができなくなってきます。
そこで、5400 プリンターでは、詰め替えリボンを 10 回、交換したらカセットも新しいものに交換するようにガイドされています。

0 件のコメント:

コメントを投稿