始めの言葉

「プリンターから印刷できて当たり前」と、ユーザーからもSIerからも軽視されがちなプリンターの世界ですが、実際にはお困りだったり、思ったような印刷結果が得られないまま我慢してお使いの皆様のために、今までの経験が役立てばと、このブログを立ち上げました。印刷の基本から、応用情報、問題の解決方法を情報発信すると共に、PDF化など、これからどうするかについても、ご相談に乗れれば幸いです。ご質問はコメントでお寄せください。

2017年5月14日日曜日

IBM 小型レーザー・プリンターの今まで -第10回- "PAGES"-4

IBM の Boulder(ボルダー)事業所にあるプリンティング・システムズ事業部は、永年、大型のメイン・フレームや AS/400 といったシステムと直接接続して印刷する、大型のシステム・プリンターを開発してきました。それが、1997年に、"Network Printer"というブランド名で、カット紙用の小型レーザー・プリンターを 3 モデルも一気に発表したということは、私にとって驚きでした。
さすがに、プリンターの機構部(エンジンと呼びますが)は、日本のメーカーからの OEM 提供になっていますが、コントローラーと呼ばれる制御基盤や、ネットワークに接続するためのオプション・カードは、独自の設計のものでした。
世界共通仕様の製品になりますから、安価な低速モデルと、その上の中速モデルは、A4 サイズまでの対応となっています。A3 サイズに対応するのは、最上位モデルになりますので、速度が最も速く、給紙ユニットや排紙機構のオプションも、豊富に用意されていました。

各モデルの主な仕様は、次のとおりです。
- Network Printer12(4312-001)
印刷速度 : 12 枚/分(レター・サイズの場合なので、A4 サイズでは、11 枚/分)
最大用紙サイズ : レター、A4
解像度 : 600DPI
Netwrok Printer 12

- Network Printer17(4317-001)
印刷速度 : 17 枚/分(レター・サイズの場合なので、A4 サイズでは、16 枚/分)
最大用紙サイズ : レター、A4
解像度 : 600DPI
Network Printer 17 給紙カセット2段と10ビン・メール・ボックス付き

- Network Printer24(4324-001)
印刷速度 : 24 枚/分(レター・サイズの場合なので、A4 サイズでは、23 枚/分)
最大用紙サイズ : レター、A3
解像度 : 600DPI
Network Printer 24

"Network Printer"と名付けたくらいですから、その特徴は様々な接続方式を選択できるところにありました。

1. 通常のLAN(イーサネットもトークン・リングも)接続の他に、メイン・フレームと接続するための "COAX" 接続用のカードや、AS/400 と接続するための "Twinax" 接続カードを選択できました。

2. "COAX" 接続や "Twinax" 接続のために、"SCS" 形式と、"IPDS"(AFP)形式のコマンドをサポートしていました。


3. 通常のLAN接続やパラレル・インターフェイス用には、"PCL"形式と"PostScript"形式、そして"PAGES"形式のコマンドをサポートしていました。

4. 複数のユーザーがネットワークを介して共有する場を想定して、Network Printer17 モデルには"10ビン・メール・ボックス"と呼ぶ、10 段の引き出しになった排紙オプションがありました。この引き出しは、それぞれにパスコードを設定して、プリンターの操作パネルから自分用のパスコードを入力しないと開かないように設定することができました。

5. ネットワークを使って、プリンターがユーザーから離れた場所に設置された場合でも、プリンターの状態を把握できるようにするため、ユーザーの PC にインストールする "Network Printer Manager Utility" という、無償の管理ツールが提供されていました。

また、Network Printer 独自のエピソードとしては、1998年に開催された長野オリンピックで、IBM がスポンサーとなったこともあって、大量の Network Printer 17 が使用されたことが挙げられます。そして、それらは、オリンピック終了後、日本IBM 社内に配布され、オフィス用のプリンターとして使用されたものです。

ただ、COAX接続や、Twinax接続を使ったホスト・システムからの直接印刷は、残念ながら日本語対応されていませんでした。日本語のデータの印刷に対応できたのは、Windows3.1、95、NT4.0 や、OS/2 からの PCL モード用のプリンター・ドライバーと、PAGESを使った印刷でした。

Network Printer 用の PAGES コマンドは、それまでの 558x プリンターのものと次のような違いがあります。
- 対象となるプリンターの解像度が、600DPIであるため、300DPI、600DPI のイメージ・データを扱えること
- n-up 印刷や、排紙トレイの指定等、プリンターの機能に合わせたコマンドが拡張されていること
- APTi 社ではなく、大和研究所のプリンター開発チームによる開発であること

その後、"Network Printer" は、"InfoPrint" にブランド名を変えて、新たにモデルが発表されていきます。





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