始めの言葉

「プリンターから印刷できて当たり前」と、ユーザーからもSIerからも軽視されがちなプリンターの世界ですが、実際にはお困りだったり、思ったような印刷結果が得られないまま我慢してお使いの皆様のために、今までの経験が役立てばと、このブログを立ち上げました。印刷の基本から、応用情報、問題の解決方法を情報発信すると共に、PDF化など、これからどうするかについても、ご相談に乗れれば幸いです。ご質問はコメントでお寄せください。

2016年2月23日火曜日

LAN 直結で双方向通信する印刷方式"Telnet5250E" - 第3回 -

IBMの独自規約だった"SNA(System Network Architecture)"に基づくことにより、Twinax接続では可能だった、スプール印刷の保留や取り消しを、"TCP/IP"の世界で実現する"Telnet5250E"では、どのようにして実現しているのでしょうか?
考え方は簡単で、OS/400 が、印刷データを700バイト程度の大きさの単位に切ってプリンターに送信し、プリンターはそのデータを印刷完了すると、完了通知("Ack"と呼びます。Acknowledgement)を OS/400 に返信します。それを受けて、OS/400 は後続の印刷データを700バイト程度の大きさに切って、プリンターに送信するというやり取りを繰り返すというものです。
"繰り返し印刷とポートの設定"の回でお話したように、"LPR"印刷では、OS/400 は、印刷データを一塊にまとめてプリンターに送信しますので、印刷途中で保留したり、取り消したりできなかったのに対し、"Telnet5250E"での印刷では、印刷データを細かく分けてプリンターに送信するため、途中で止めたりする操作が可能になった訳です。
併せて、プリンターはデータを受信するだけではなく、用紙切れや用紙ジャムといったエラー状態を、OS/400 側に通知する機能も持たせています。ただし、初めてプリンターを接続して自動構成によって装置記述ができた時に、デフォルトでは"印刷装置エラー・メッセージ"は、"*INFO"になります。そのため、エラー・メッセージに対して何か応答してから印刷再開させようとするには、この値を"*INQ"に変更する必要があります。
"Twinax"接続と同様の操作性とは言え、"Twinax"接続では、OS/400 からプリンターに接続、あるいは切断しに行くのに対して、"Telnet5250E"接続では、逆にプリンターから、OS/400 に接続・切断しに行くことから、例えば"5400"シリーズのライン・プリンターでは、次のような初期設定メニューを設けています。
5400シリーズ・ラインアップ

1. パワーオン自動印刷
デフォルトでは、"5分"という値にセットされています。これは、プリンターが、OS/400 と接続できていない時に、5分間隔で接続を試みるという意味です。例えば、プリンターの電源は入っているが、AS/400 が起動中で、TCP/IP サービスも立ち上がっていないという状態では、プリンターから"Telnet5250E"接続しに行っても、接続できません。そのような場合、5分間隔で接続を試みることを繰り返すことによって、自動的に接続状態に変わります。

2. ホスト接続監視
デフォルトでは、"はい(する)"になっています。これは定期的に、プリンターから AS/400 に対して ping コマンドを発行して、ネットワークの切断が発生していないかどうかをチェックするという意味です。もし、接続が切れていれば( ping の返信が無ければ)、一定時間後に再度 ping コマンドを発行して接続を確認することを繰り返します。

Twinax 接続の時には、印刷データは、AS/400 との言わば専用線上を流れていて、安定した通信でした。それが、TCP/IP 接続に変わると、他の様々なデータとネットワーク上に共存するようになることや、ルーターやハブ(スイッチ)などの機器を経由することで、Twinax 接続よりも不安定な通信になります。例えば、次のような事例がありました

<現象1>
遠隔地の 5400 プリンターにおいて、100ページ程度の帳票を印刷後に接続が切れる。数ページの印刷では切れない。プリンターの電源を入れ直すと接続する。
<調査>
プリンターから、ping コマンドを定期的に発行して、AS/400 が稼動中であることを確認しているが、ネットワーク容量に比較して通信量が大きいと、ping コマンドの返信がタイム・アウトになる。そのため、プリンターは AS/400 が非稼動状態と判断して接続を切るという現象が発生していることが判明した。
<対策>
"ホスト接続監視"を"いいえ(しない)"に変更して解決した。

<現象2> 
IP電話を導入後、印刷できなくなった。
<調査>
IP電話のために、ルーターのMTU設定でパケットを細分化していた。(1,450→360 バイト
そのため、印刷データも細分化されてしまい、それを受信したプリンター側で再構成できなくなった。
<対策>
OS/400 上で、プリンターのIPアドレスに対して、"MTU 自動調整"を"*YES"に変更して解決。

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