始めの言葉

「プリンターから印刷できて当たり前」と、ユーザーからもSIerからも軽視されがちなプリンターの世界ですが、実際にはお困りだったり、思ったような印刷結果が得られないまま我慢してお使いの皆様のために、今までの経験が役立てばと、このブログを立ち上げました。印刷の基本から、応用情報、問題の解決方法を情報発信すると共に、PDF化など、これからどうするかについても、ご相談に乗れれば幸いです。ご質問はコメントでお寄せください。

2018年4月14日土曜日

AS/400 プリンティングに求められるソリューション 第35回 - MVPを使ったPDFの自動印刷 - 1 -

前回までのお話で、Mapping を使って IFS 上に PDF ファイルを生成するところまで来ました。この後の処理としては、PDF ファイルをファイル・サーバーに FTP 送信して、電子保存するか、LAN 接続されたレーザー・プリンターや複合機に送信して印刷するかの 2 通りが考えられます。
電子保存のお話は、別の機会に譲るとして、印刷の方法に関しては、かつて、"連続用紙への印刷から、カット紙への印刷に移行する -第14回 PDFダイレクト印刷における印刷制御-"
から3回に渡ってお話していますので、こちらをご参照いただけますでしょうか。


また、印刷させるためのコマンドのパラメーターの一つである、出力先のプリンターを指定する OUTQ については 2 種類あって、どのように定義するかはそれぞれ、"HPT機能を使った印刷 - 簡単な双方向通信可能なOUTQを作る方式 -" の回と、"HPT機能を使った印刷 - リモートOUTQの作成 -"の回でお話しているので、そちらをご参照ください。

ただ、この時のプリンターには、"PDF ダイレクト印刷機能" か、"PCL モード" を持っているという前提条件がありました。そのような機能を持っていないプリンターへの自動印刷には、Mapping のオプション・ライセンスである "MVP(Mapping Virtual Printer)" を使用します。MVPを使った自動印刷については、"連続用紙への印刷から、カット紙への印刷に移行する -第14回 PDFダイレクト印刷における印刷制御-" の回でも簡単に触れていますが、ここでもう少し詳しくお話したいと思います。
"MVP"は、人が Windows 上で PDF ファイルを印刷する時に行う次の操作を自動的に行うものです。
ビューワーで PDF ファイルを開く。 -> ビューワーの印刷メニューから印刷するプリンター・ドライバーを指定して印刷する。
MVP を使用する場合、2 つのモードがあります。PC の画面上に次のような MVP の画面が表示される "GUI(Graphycal User Interface) モード" と、Windows のサービスとして稼動するので、何も表示されない "サービス・モード" です。
MVP GUI モードの画面例
 GUI モードの画面では、リスト表示された PDF ファイルを指定して、再印刷させたり、印刷するプリンターを変更させたりすることができます。そのような操作を行う可能性がある場合には、GUI モードがお勧めですし、PC 上で他の業務をも行っているので、MVP の画面が表示されない方が良いという場合には、サービス・モードがお勧めです。
サービス・モードで使用していても、MVP の画面を開くとて GUI モードに切り替わりますし、GUI モードの画面を閉じるとサービス・モードに戻るようになっています。

MVP を初めに設定する際には、GUI モードの画面を使用します。MVP にも MapDraw 同様にプリファレンスの画面があります。
MVP プリファレンスの画面
MVP を使用するには、ライセンス・キーが必要です。ライセンス・キーは、その上の欄にある "ID" を元に生成されます。そして、この "ID" は MVP をインストールした PC やサーバーのハードウェアの属性を元に決まります。そのため、もし PC を変更する場合には、新しい PC に先ず MVP をインストールしていただき、"ID" を確認してお知らせいただきます。その後、ライセンス・キーを発行して入力するという手順になります。
その上には、いくつかのチェック・ボックスがあります。MVP は受信した PDF を勝手に削除することはしませんので、だんだんと PDF ファイルが PC のHDD の領域を侵食し、PC の動きが遅くなるという現象が発生する可能性が出てきます。そのため、"起動時に印刷済みのスプール・ファイルを削除する" や、 "印刷後にスプール・ファイルを削除する" という設定メニューがあります。PC の再起動の間隔が長い場合には、後者の設定を行うことをお勧めします。なお、"LPD サーバーのポート" という項目があるので、選択できるように見えますが、実際にはデフォルトで指定されている "515" から変えないようにしてください。
次回は、プリンターの登録を行います。
 
 




2018年4月7日土曜日

AS/400 プリンティングに求められるソリューション 第34回 - Mapping Suite の帳票設計方法 - 12 -

今回、設計に使用したスプール・ファイルは、次のような "STD132P" という名前の、2 ページのものです。(スプールのリストの中の下から 2 番目のスプールです。)
Mapping メイン・メニュー-> 1.スプール・ファイルの処理 ->STD132Pを指定して表示した画面
これに対して、これから "STD" という名前のフォーマットを合成して、PDFファイルを生成します。
使用するコマンドは、Mapping V7 では "MAPCPYSPLF" コマンドです。
因みに、Mapping V6 では、"MAPSPLPDF" というコマンドを使いますが、この場合は、MapDraw 上でのフォーマットの生成手順が異なります。ここでは、V7 の手順を前提にしてフォーマットの生成を行なってきましたので、"MAPCPYSPLF" コマンドを使用します。"MAPCPYSPLF" コマンドを使用すると、Mapping は次のような処理を続けざまに実行します。
- IFS 上に、パラメーターで指定したファイル名ですが、XPS 形式のファイルを生成します。
- XPS ファイルを PDF 形式に変換します。
このような処理は、V7 になって、XPS 形式のファイルを中間言語として生成した後、様々な種類の形式のファイルに変換するというアーキテクチャーに変わったことを表わしています。その結果、予め帳票設計する際の言語やフォーマットの種類は "XPS" の 1 種類だけで済みますので、フォーマットの管理を簡素化できます。なお、V6 と同じように、PDF 用のフォーマットを用意して、"MAPSPLPDF" コマンドを使って、1 回の処理で PDF ファイルを生成することも引き続き可能ですが、処理速度は、MAPCPYSPLF コマンドの方が早いようです。

コマンド・ラインに MAPCPYSPLF と入力して、キーボードの "F4" キーを押すと、次のような画面が現れます。
MAPCPYSPLF コマンドの 1 画面目
それぞれのパラメーターには、次のような値を指定します。
- spooled file <- スプール・ファイル名です。ここでは "STD132P" を指定します。
- spooled file number <- ファイルNOです。ここでは "6055" を指定します。
- Job Name <- ジョブです。ここでは "QPRTJOB" を指定します。
- Job Number <- (ジョブ) 番号です。ここでは "00308" を指定します。
- User <- ユーザーです。ここでは "QSECOFR" を指定します。
以上のパラメーターによって、対象となるスプールを 1 つに特定します。
- Mapping format <- 今回取り込んだ "STD" を指定します。
- Sequence <- フォーマットのシーケンスを指定します。"STD" では 1種類で "00010" になります。複数のフォーマットを 1 つのスプールに対して適用する場合には、"*MRG" を指定します。

ここで、キーボードの "F10" キーを押して "追加のパラメーター" を実行した後、キーボードの "PageDown" キーを押して、次のページに移動します。次のような画面になります。
MAPCPYSPLF コマンドの 2 画面目
この画面では、パラメーターに次のような値を指定します。
- Start page と End page <- スプール・ファイル内で PDF 生成する対象の開始ページと終了ページをそれぞれ指定できるのですが、今回のスプールは 2 ページしかないので、そのままとします。("999999" は、ページ数に関わらず最終ページという意味です。)
- Mapdraw format language <- MapDraw のプロパティで指定した"言語"のことです。"*XPS" を指定します。
- XPS Printer/outfile language <- XPS 形式から変換する先のファイル形式を指定します。"*PDF" を指定します。

ここで、キーボードの "PageDown" キーを押して、次のページに移動します。次のような画面になります。
MAPCPYSPLF コマンドの 3 画面目
 この画面では、パラメーターに次のような値を指定します。
- XPS outfile <- 生成する PDF ファイルのフォルダーとファイル名を指定します。ここでは、
/home/mapping/std/STD.pdf
と指定します。IFS 上の mapping フォルダーの下の STD フォルダーの下に、STD.pdf という固定のファイル名で PDF ファイルを生成することを表わします。

- Code Page <- 日本語スプールの場合は、半角カナ文字と半角英小文字の文字化けを防ぐため、"290" か "1027" を指定します。今回のスプールでは、どちらも含まないので、どちらの値でも結構です。

以上を指定して、実行キーを押すと、すぐ画面は元の状態に戻ります。指定したファイル名の PDF ファイルが指定した場所に生成できたことが、次のようにして確認できます。
IFS 上に PDF ファイルが生成された
生成された PDF ファイルの 1 ページ目
生成された PDF ファイルの 2 ページ目


2018年4月1日日曜日

AS/400 プリンティングに求められるソリューション 第33回 - Mapping Suite の帳票設計方法 - 11 -

帳票設計のスキルには、"条件付け" 等の重要な機能がまだありますが、ここでは、前回までで設計できたところ一旦完了として、先へ進むことにしましょう。
"DrawF" の画面全体と、"MapF" の画面全体を表示してみると、次のようになっています。
"DrawF" の画面
"MapF" の画面
"ホーム" タブを選択すると表示されるメニューの中で "プロジェクトを生成する" ボタンを押すと、次のように 3 種類のファイルを保存する "プロジェクトの保存" 画面が表示されます。
"プロジェクトの保存" 画面
この画面を見ると、MapDraw のプリファレンスで設定した "共有フォルダー"(ここでは、Z:\home\mapping\) の下にある "\docpc" というフォルダーに、MapDraw のプロパティで定義した "フォーマット名"+"シーケンス番号"(ここでは、STD00010) という共通のファイル名で、拡張子が "mpp"、"mpw"、"mpi" という 3 種類のファイルを保存することになることが、分かります。
拡張子が "mpw" のファイルは、"DrawF"、"mpi" のファイルは、"MapF"、"mpp" のファイルは、両者を結びつけるためのファイルとなっています。
このまま、"OK" ボタンを押しても結構ですし、例えば、次のような変更は可能です。
- ファイル名を変更する。ただし、3 つのファイルのファイル名は共通でないとなりません。(この画面では、"プロジェクト名" 欄の記述を変更すると、自動的に他の 2 つの欄の記述も変更されます。)
- 保存先フォルダーを変更する。複数のメンバーで帳票設計している場合など、"\docpc" のサブ・フォルダーとして、担当者毎のフォルダーを用意して、各自が自分のフォルダーに保存するという運用は可能です。ただし、必ず "\docpc" の下であることが必要です。上にあると、後で、OS/400 上の Mapping メニューから保存したプロジェクト・ファイルを探しに行く時に、見つからないことになります。

1 つのフォーマット名に対して、シーケンス番号を使って複数の帳票を作る場合には、デフォルトのファイル名のように "フォーマット名" + "シーケンス番号" というファイル名が管理しやすいのですが、このサンプルでは 1 種類の帳票になりますので、ファイル名は簡単に "STD" としておきます。

"OK" ボタンを押すと、次のような画面が表示されます。
"生成の設定" 画面
 この画面で注意する箇所は、"フォント" のチェック・ボックスです。Mapping は、OS/400 上で印刷データや、PDF ファイルを生成しますし、その際には MapDraw で帳票設計に使用された Windows のフォントを使ってそれらを生成しないとなりません。そのために、このプロジェクトの生成を行なう時に帳票設計に使用した種類のフォント・セット(この場合は、MS ゴシック)を一緒に IFS 側に送信します。しかし、同じフォント・セットの文字を使って設計している場合には、何度も繰り返して同じフォント・セットを IFS に送信するのは、処理時間の無駄になりますし、ネットワークに影響を及ぼす可能性もあります。そこで、このチェック・ボックスは、帳票設計の初めの 1 回目と、その後、別のフォント・セットを使用して設計した場合のみチェックするようにしてください。
なお、外字を使用している場合には、外字は自動的に送信しませんので、手動で Windows 外字のファイルを IFS 側にコピーしていただくことになります。詳細は別の機会にお話しします。

"OK" ボタンを押すと、"プロジェクトを生成しています" 等のメッセージを表示した後、次のような "生成レポート" の画面が表示されます。この画面では、赤いマークさえ出ていなければ、生成完了となります。例えば、次の画面の黄色の注意マークは、"フォントは生成されませんでした。" というメッセージは、前の "生成の設定" 画面でフォントのチェックを外したからです。(赤いマークが出た時には、出なくなるようにする対処が必要です。)
"生成レポート" の画面
"OK" ボタンを押したら、MapDraw 上での操作は完了です。この後は、OS/400 上のメニュー画面を使って、送信したプロジェクトをオブジェクトに変換します。

OS/400 上の "Mapping メイン・メニュー" 画面で "2. MapDraw フォーマットの取り込み" を選択します。
2. MapDraw フォーマットの取り込みの選択
次のような画面が表示されます。"オブジェクト名" 欄には、"フォーマット名"+"シーケンス番号" が表示されています。取り込みたいオブジェクトであることを確認したら "1" を指定して実行します。
オブジェクトの取り込み画面
他に送信したプロジェクトが無ければ、取り込みが完了すると次のような画面に変わりますので、そのまま "F3" キーを押して終了します。
取り込みが完了した画面
以上で、準備完了です。次回は、実際に PDF ファイルを生成します。