始めの言葉

「プリンターから印刷できて当たり前」と、ユーザーからもSIerからも軽視されがちなプリンターの世界ですが、実際にはお困りだったり、思ったような印刷結果が得られないまま我慢してお使いの皆様のために、今までの経験が役立てばと、このブログを立ち上げました。印刷の基本から、応用情報、問題の解決方法を情報発信すると共に、PDF化など、これからどうするかについても、ご相談に乗れれば幸いです。ご質問はコメントでお寄せください。

2018年2月24日土曜日

AS/400 プリンティングに求められるソリューション 第28回 - Mapping Suite の帳票設計方法 - 6 -

前回、"データの配置を設計する方法は、2 つに分かれます" と申し上げて、その内の 1 つの方法をお話ししました。今回は、残るもう 1 つの方法をお話しします。
前回の方法は、スプール・データの中の、特定の場所(行と、桁の範囲)にあるデータを、帳票上の任意の場所に配置するという方法でした。この方法では、ある範囲のデータ毎に配置場所を指定できますので、配置の自由度は高い反面、ある特定の桁の範囲にあるデータが何行も繰り返されるような場合、実際にはこのようなデータの並びであることの方が多いのですが、この方法では非常に手間が掛かります。
そのような場合に使用するのが、もう 1 つの方法で、縦と横の組み合わせを使用します。

具体的には、次のような手順になります。
スプール・ビューに表示された見積り書のスプール・データ "DEMO1.pag" の 1 ページ目のデータの中で、各分野毎の分野名と合計金額が、28 行目から 40 行目まで繰り返されています。その時には、スプール・ビュー画面上でマウスを使って、横幅は任意、縦幅が 28 行目から 40 行目までの領域(次の図の "Group" と書かれた領域)を指定し、左側の画面にドラッグ & ドロップします。
Group 範囲の指定
そうすると、次のような "固定グループ" という画面が自動的に開きます。
固定グループのプロパティ画面
ここで、グループ名は任意です。私は、ゾーンの名称と同様に "g1" から順番に定義しています。"開始行" と "終了行" が、自分で指定した領域の縦幅を表わしています。もちろん、後でそれぞれ修正して縦幅を変更することが可能です。
"OK" ボタンを押すと、左側の画面に次のように、赤い四角形が表示されます。
これで "縦" の指定はできたので、次は "横" の指定を行います。
スプール・データを見ると、分野名と金額の間がかなり空いていますので、A4 サイズの横幅の中に自然に収まって見えるように、間隔を詰めて配置するものとします。そのために、番号と分野名は一緒に 1 つのゾーンとし、金額は別のゾーンとして、間隔を詰めて先ほどの固定グループの中に配置します。つまり、番号と分野名に必要な桁の範囲、8 桁目から 23 桁を範囲指定したゾーンを、固定グループ "g1" の中にドラッグ & ドロップします。
そうすると、次のような "ゾーンのプロパティ" 画面が表示されます。やはりゾーンの名称は任意なので、ここでは、"g1" の中の 1 番目のゾーンなので、"Z11" と名付けます。
グループの中へゾーンを定義する
注意していただきたい点は、独立したゾーンと異なり "データ位置" に行の指定が無いことです。(行は、グループ "g1" の方で指定しているからです。)
"OK" ボタンを押すと、次の左側画面のように、固定グループ "g1" の中にゾーン "Z11" が配置されたことが分かります。更に Ctrl + W キーを押してプレビューすると、右側画面のように、ゾーン "Z11" で指定した桁の範囲のデータが、グループ "g1" で指定した行に対して繰り返し表示されたことが分かります。
(右側のスプール・ビューの画面では、左側画面でプレビューされたデータが、黄緑色で表示されていることにお気づきでしょうか。)
ゾーン "Z11" の追加とその結果
"縦と横の組み合わせ" とお話しした意味は、このように "横 = ゾーン" を "縦 = グループ" で指定した行数だけ繰り返して実行するということを表わしています。
続けて、金額を表示させるために、つまり金額の桁数のゾーンを配置するために、左側画面の固定グループの赤四角を、少し右横へ幅を広げます。
その後、右側の画面で金額に必要な桁 116 桁目から 11 桁を範囲指定して、左側画面の グループ "g1" の中へ、ドラッグ & ドロップします。ゾーン名を "Z12" としてから、"OK" ボタンを押します。
ゾーン "Z12" の追加
次の左側画面のように、固定グループ "g1" の中にゾーン "Z12" が追加されて配置できたことが分かります。更に Ctrl + W キーを押してプレビューすると、右側画面のように、ゾーン "Z11" と "Z12" で指定した桁の範囲のデータが、グループ "g1" で指定した行に対して繰り返し表示されたことが分かります。
また、グループをクリックして、黒四角が表示された状態にすると、右側画面では、グループとゾーンの組み合わせで表示されるデータの範囲が、紫色の四角形で表示されます。
ゾーン "Z12" の追加とその結果
 次回は、位置の調整と、文字ピッチ、行ピッチの調整方法をお話しします。

2018年2月18日日曜日

AS/400 プリンティングに求められるソリューション 第27回 - Mapping Suite の帳票設計方法 - 5 -

では、固定文字や罫線等の、所謂オーバーレイをDrawF画面で設計するのは後回しにして、スプール・データの配置を先に行ないましょう。
データの配置を設計する際には、"MapF" をクリックして、"MapF" が黄色になっている状態に切り替えます。これによって、"DrawF" 画面に設計済みの罫線や固定文字があったら、それらの色がグレイに変わって、編集できない状態になります。
データの配置を設計する方法は、2 つに分かれます。

1 つ目は、特定のデータの行と桁の範囲を指定して、帳票上の特定の位置に配置するための方法です。
例えば、宛先の中の "財団法人国際会議支援センター" の配置を設計するには、MapDraw の右側の "スプール・ビュー" 画面上で、その範囲をマウスの左ボタンを押しながら指定した後、マウスの左ボタンを押したままで左側画面に移動し、配置したい場所の近くで指を離します。
すると、次のような "ゾーンのプロパティ” という画面が自動的に開きます。
MapDraw ゾーンの定義の画面
  ここで、各項目の意味は次のとおりです。
- ゾーン名 : スプール・ファイルの中のデータを表示させるための定義を、Mapping では "ゾーン" と呼びます。ゾーンの名前は任意ですし、全角文字も使用できます。私自身は、単純に "z1" から順番に定義しています。
- 開始行、桁、長さ : マウスで範囲指定した、スプール・ファイルの中のデータの、行、左端の桁、そして、指定した範囲の桁数を表します。
- タイプ "文字" : データを文字で表示することを表します。追って、詳しくお話ししますが、他の選択肢の中には "バーコード" があります。

"ゾーン名" を"Z1" と指定して、"OK" ボタンを押すと、左側の画面に "Z1" というゾーンが表示されます。次の画面でお分かりのように、ゾーンをクリックして、周囲に黒四角が表示された状態にすると、スプール・データの該当する部分が紫色の長方形で表示されますので、どこのデータを表示しているかが一目で分かるようになっています。
ゾーン"Z1"ができた状態
MapDraw ではプレビューの機能がありますので、この状態でプレビュー・アイコンを押すか、そのショート・カット・キーである、キーボードの "Ctrl + W" ボタンを押すと、次の画面のように、プレビューが表示されます。
プレビューの画面
この画面サンプルでは分かり辛いかもしれませんが、プレビュー状態にすると、スプール・ファイルの該当する範囲の文字が、黄緑色で表示されます。全てのデータのゾーンを設計した後でプレビューした時に、もし、右側のスプール・ビュー画面で黒色のデータが残っていたら、その部分はまだ設計が終わっていないことが分かります。
このゾーンの位置は、仮に置かれた場所なので、正しい位置に移動させます。移動させるには、マウスのポインターが上下左右の矢印状態になるようにゾーンを指定した後、マウスを使ってドラッグすれば良いのですが、微妙な移動には向きません。
- 左右にのみ移動させるには、ゾーンの左端の真ん中にある黒四角を左右に移動させます。これによって、上下にずれることなく、左右にのみ移動できます。
- 上下にのみ移動させるには、ゾーンの左右中央の下側の黒四角を上下に移動させます。これによって、左右にずれることなく、上下にのみ移動できます。
- もっと細かく移動させるには、画面下にある "X座標"、"Y座標" に直接数値を入力します。"X座標" は、帳票の左端からゾーンの左端までの距離、"Y座標" は、帳票の上端からゾーンの上端までの距離を現します。細かい調整を行なうには、"X座標" の左横にある "単位" を "10/mm"(1/10mmのこと) か、"Points"(1/300 インチ単位) にセットすることをお勧めします。
また、プレビューした状態でゾーンの位置の調整を行いたいところですが、ある程度大きなサイズのメモリーを搭載した PC でないと、MapDraw がフリーズしてしまうことがあります。なるべく、プレビューを解除して状態で位置の調整を行なうことをお勧めしています。
ゾーンの位置の調整

2018年2月11日日曜日

AS/400 プリンティングに求められるソリューション 第26回 - Mapping Suite の帳票設計方法 - 4 -

新規の帳票を設計するに当たって、Excel やパワーポイント等で作った新しい帳票の罫線や固定文字を、イメージではなく、そのまま MapDraw の左側画面である "DrawF" に取り込むことが可能です。帳票の設計に当たっては、Excel の 1 つのセルを 1 桁に対応させて設計書を作ることがありますので、その場合には、それをそのまま "DrawF" 画面に取り込めたら、便利であることはご想像いただけると思います。
ただ、この方法も完璧ではなく、"DrawF" の画面に取り込んだ後で、編集する必要が出てくる場合が多くあることも事実です。
実際に、Excel で簡単な帳票イメージを作って試してみましょう。使用しているのは、Excel2010 です。簡単な以下のような"見積り書"(サイズ A4)を作成します。
Excel で設計した帳票イメージ
 このファイルを保存する時に、何種類も出てくるファイル形式の選択肢の中から、"XPS ドキュメント(*.xps)"を選択して、"Test1.xps" ファイルとして保存します。
"XPS" は、以前もお話したようにマイクロソフト社の提唱する電子保存用のファイル形式ですから、Windows7 以降の PC なら標準で選択できます。("名前を付けて保存" の代わりに "印刷" を選択し、ドライバーに "Microsoft XPS Document Writer"を指定すると、ファイル名と保管場所を求められますので、同じ結果が得られます。)
なお、XPS 形式のファイルを画面表示するための "XPS ビューアー" もWindowsには標準機能として用意されていますので、保存した "Test1.xps"ファイルをダブル・クリックすると、次のような画面が起動し、Excel 上の印刷プレビューと同じように表示されます。
XPS ビューアーで表示した画面
MapDraw でこの XPS ファイルを取り込むには、MapDraw のホーム・ボタンを押して表示されるメニューの中から、"インポート"、そして "リソース" を選択します。
MapDraw でインポート->リソースを選択
 すると、次のような画面が表示されますので、"..." ボタンを押して、保存した"Test1.xps" ファイルを指定し、更にページの選択で "1" を指定して "Import" ボタンを押します。
XPSファイルを指定して取り込む画面
 その結果、MapDraw には、次の画面のように取り込まれます。Excel では A4 サイズを指定したのですが、残念ながら小さめに表示されています。そこで、キーボードの Ctrl キーと A キーを同時に押して、画面に取り込んだ全要素を一度に選択したら、右下の黒四角ボタンを移動させて、A4 画面全体に対して適当な大きさに拡大、移動します。
XPSファイルを取り込んだ初めの状態とその拡大、移動後
 一見このままで良さそうに思えますが、実は DrawF の画面を拡大してみると、少し疑問が出てきます。
- 固定文字は、Excel の1つのセルの文字が、そのまま 1 つのテキスト・ゾーンとなっていますが、フォント・サイズが小さくなっています。(これ例では、11 ポイントから 9ポイントになっています。)
- 周囲の罫線が、何故か二重線のようになっています。また、各項目間の区切りの縦罫線は、Excel では点線で指定したのですが、通常の実線に変わっています。
DrawF画面の拡大
ただ、そのような細かい点を気にしなければ、多数の罫線の込み入った帳票や、固定文字の多い帳票の DrawF 画面を設計するには有効な方法と言うことも可能ではないかと思います。
ただ、実際に帳票設計を行なってみると分かるのですが、実は、先にデータの配置を設計する MapF 画面を先に設計する方が、多くの場合は効率的なのです。


2018年2月3日土曜日

AS/400 プリンティングに求められるソリューション 第25回 - Mapping Suite の帳票設計方法 - 3 -

MapDraw の右半分の画面に、スプール・ファイルを表示させます。スプール・ファイルは、AS/400 プリンティングに求められるソリューション 第20回 - Mapping Suite の画面 - 2 - で取得した "DEMO1.pag" というファイルです。
"ホーム" タブの画面右上にある "スプール・ファイルのロード" ボタンを押すと、次のような画面が開きます。MapDraw のプリファレンス画面で設定した "共有フォルダー" の下にある "pag" 形式のファイルを表示するわけです。(余談ですが、ここではファイル形式としては、"pag" の他に、テキスト形式 "*.txt" も指定できます。これは、AS/400 版ではなく、Windows 版の場合に使用します。)
スプール・ファイルのロード画面
その結果、次の画面のように、スプール・ファイルが表示されます。画面の見方、使い方は、次のとおりです。
- ページをめくるには、画面左下にある横矢印ボタンを使用します。(キーボードの PageUP や PageDOWN キーではありません。)
- マウスのポインターを右画面においた状態では、その場所の桁を X 座標、行を Y 座標として表します。
- スプール画面を拡大表示、縮小表示するには、画面右下に並んでいるアイコンを使用します。アイコンを使うと、スプールの1ページ全体を表示できる大きさに縮小表示します。アイコンは、横幅全体を表示するように縮小表示するために使用します。アイコンを一旦クリックすると、ポインターがこの虫眼鏡の形に変わりますので、その状態で、スプール・ファイルの見たい範囲を範囲指定します。その横には、パーセント表示があります。ただ、数字で選択できるのは、12%, 25%, 50%, 67%, 100%と限られています。それよりも、その横のズーム・バーを調整した方が、細かい縮小率を指定できます。
他に、PageUP キーを押すと拡大表示、PageDOWN キーを押すと縮小表示できます。

DEMO1.pag を表示した画面
 - ご存知のように、英数半角文字は 1 桁、漢字等の全角文字は 2 桁の場所を取ります。それを反映させるために、MapDraw の右半分のスプール・ビューの画面では、半角文字は1 桁に 1 文字を配置しますが、全角文字は 1 文字置きに配置されます。

この後は、実際に帳票設計の作業に入ります。どのような順序で作業を進めたら、効率的に作業できるでしょうか?罫線や固定文字といった、従来の帳票の事前印刷部分に相当するオーバーレイから設計し始め勝ちですが、実は真っ白な画面に好きなように罫線や固定文字を配置していくというのは、あまりに自由過ぎて、かえって戸惑ってしまうものです。
そこでお勧めする方法は、次のとおりです。
1. 既存の帳票の印刷結果や、EXCEL 等のソフトウェアや手書きで書いた新しい帳票イメージのスキャン・イメージを取ります。
2. スキャン・イメージを MapDraw 左側の画面全体に貼り付けます。
3. それに対してスプール・データの配置を設計していきます。
4. その後、左側の画面で貼り付けたイメージを上書きするように、罫線や固定文字を書きこんでいきます。
5. 最後に、2 で貼り付けたスキャン・イメージを削除します。

注意点は、次のとおりです。
- 2 で貼り付けられるイメージ・ファイルの形式は、"bmp", "jpg", "tif" の 3 種類です。
- 4 の手間を省くために、2 で貼り付けたスキャン・イメージをオーバーレイとしてそのまま使用するという方法も、技術的には可能です。しかし、ある程度解像度が高いイメージ・ファイルを使用する必要がありますが、その結果、Mapping よって生成される PDF ファイルや、PCL 形式の印刷データのサイズが、その分非常に大きくなりますし、生成時間も余計に掛かります。それはシステム全体のスループットに対して影響を与える可能性が高くなりますので、やはり、4, 5 の手間を掛けていただくことをお勧めしています。