始めの言葉

「プリンターから印刷できて当たり前」と、ユーザーからもSIerからも軽視されがちなプリンターの世界ですが、実際にはお困りだったり、思ったような印刷結果が得られないまま我慢してお使いの皆様のために、今までの経験が役立てばと、このブログを立ち上げました。印刷の基本から、応用情報、問題の解決方法を情報発信すると共に、PDF化など、これからどうするかについても、ご相談に乗れれば幸いです。ご質問はコメントでお寄せください。

2017年11月25日土曜日

AS/400 プリンティングに求められるソリューション 第16回 - Mapping Suite とは- 6 -

"Mapping Suite" のライセンス・キーには、導入する時に発行される "On Demand キー"と、90 日後に発行される "Refill キー"、そして、Refill キーと同時に発行される "Safety キー" の 3 種類があります。

"On Demand キー" は、処理数の制限が無いのですが、有効期限が 90日となっています。これは、お客様の導入後の開発やテストを考慮して措置です。MAPKEY コマンドを使って、端末画面から入力します。そして、その後で MAPADDPTS コマンドを実行すると表示される "ID値" を Mapping 社に報告します。Mapping 社では、それを使って、次に発行される "Refill キー" や "Safety キー" を生成します。なお、この時点で、IFS 上の "mapping" フォルダーの下に "key" というフォルダーが自動的に作成されます。このフォルダーの下には、ライセンス・キーに関わる 2つのファイルが保管されます。
IFS 上の key フォルダーとキー関連ファイル
"Refill キー"は、"On Demand キー"の有効期間が切れる前に発行されるもので、期限は無期限ですが、最大処理数をセットします。一緒に発行される"On Demand キー" とセットで入力します。"Refill キー" の入力には、MAPADDPTS コマンドを使用します。ライセンスをグレード・アップして年間最大処理数を変更する場合には、"Refill キー" と "Safety キー" が発行され、それを入力することになります。

"Safety キー"は、前回お話ししたように、処理数が足りなくなった時に、処理数を 5% 追加するためのキーです。1 回しか使用できませんので、入力せずに保管しておいて、いざと言う時に MAPADDPTS コマンドを使って入力します。

これらのライセンス・キーはや英数文字の組み合わせで、導入先のサーバー(AS/400)の、モデル名、シリアル番号、プロセッサー・タイプという 3 つの値と、どのオプション(E-Document 等)の機能を使用するか(契約されたか)を元に、Mapping 社で生成されます。"Refill キー"と "Safety キー" は、更に契約されたライセンスの年間最大処理数の情報も反映されます。
そして、生成されると、ライセンス契約書に記載されたお客様の E-Mail アドレスに英文のメールで送信されて来るのですが、国内のお客様の場合、英文のメールは直接ゴミ箱に直行になるケースが多いので、同時に受信している私たちから日本語のメールに変えて、導入手順と一緒にメールでお送りしています。
また、Mapping 社では、ご契約いただいたお客様毎に、ユーザー ID とパスワードで管理している "Mapping Suite" のウェブ・サイトを用意しています。そこにアクセスすると、契約したライセンスの構成や年間最大処理数が分かる他、マニュアルのダウンロードもできるようになっています。ただ、メニューが英語であることから、私たちがお客様の代わりにアクセスして、必要な情報をお客様に提供しています。
Mapping Webサイトの画面例

ライセンス・キーは、導入先のサーバー固有の値を下に生成されていますので、サーバーの移行や、災害対策にレプリカを取っている別のサーバーがある場合には、注意が必要です。
移行の場合、移行先の新サーバーでは通常、検証テストを行なうと思いますが、その期間中は稼働中のサーバーと検証中の新サーバーの2台で同時に Mapping が稼動することになります。そこで、新サーバーの値に対応した期間限定のライセンス・キーを無償でご提供しています。新サーバーが本番稼動開始する時には、期間無制限のキーを発行して再入力していただくと同時に、旧サーバーからは Mapping をアンインストールした旨の証明書に署名していただいています。検証用の無償のキーの有効期間は、お客様と相談して決めています。
レプリカを取っているサーバーがある場合には、そのサーバー用にもライセンス契約が必要です。そのキー情報は、レプリカ・サーバー側に保管されていますので、IFS 上の"key" フォルダーは、レプリカの対象から外すように設定していただくことが必要です。

"Mapping Virtual Printer(MVP)" は、PC にインストールします。ライセンス・キーは、その PC の基板や HDD 等の情報を元に生成されています。実際には、MVP をインストールしてから MVPのメニュー画面を使って確認できる "ID値" を元に生成されます。従って、PC を置き換える際には、キーの再発行と同時に、旧 PC からのアンインストール済みの証明書への署名をお願いしています。
MVP のID値とキー入力画面例
帳票設計ツールである "MapDraw" は、コピー・フリーなので、ライセンス・キーの入力はありません。

2017年11月18日土曜日

AS/400 プリンティングに求められるソリューション 第15回 - Mapping Suite とは- 5 -

ぞれぞれのライセンスの費用は、どうなっているでしょうか ?
AS/400 上で稼動するソフトウェアの多くは、稼動させる AS/400 の機械クラス(P05 とか P10 という呼び方が付いています。)によって分かれています。つまり、稼動するAS/400 の大きさが大きいほど、ライセンス料金も高くなるという考え方です。
しかし、"Mapping Suite" の場合は、Mapping が生成する XPS ファイルの、1年間の累積ページ数によって、料金クラスが分かれます。つまり、Mapping を多く使うお客様から、ライセンス料金を多くいただくという考え方です。
そのために、Mapping のコマンドを使って生成される XPS ファイルのページ数をカウントする仕組みが、Mapping の内部で稼動しています。そして、お客様が契約された上限の処理数は、ライセンス・キーの情報から分かります。カウントし始めてから 1 年経過する時に、カウンターの値が上限を越えていなければ、カウンターはリセットされて 0 になり、新たにカウントし始めます。その結果、翌年もそのまま続けて使用できることになります。
"カウンター" という言葉は、コピー機のように、使用実績に応じて毎年料金が請求されるように誤解される元になるのですが、あくまでも、機械クラスの代わりに、年間最大処理数を使ってクラス分けしているので、ライセンス料金のお支払いは、初めの1回だけです。下のグラフは、年間最大処理数のクラスと、ライセンス料金の関係を表したものです。縦軸が標準ライセンス料金、横軸が年間最大処理数(ページ数)になっている、階段状のグラフになります。
これを見ると、次のことがお分かりいただけるかと思います。
- 年間最大処理数は、30万、150万、300万、750万、1,500万、3,000万、無制限(ページ/年)というように、さほど細かく分かれている訳ではありません。(3,000万と無制限の間にもまだクラス分けはありますが、省略しています。)
- 当然のことながら、年間最大処理数が大きいクラスの料金ほど、1ページ当たりの単価は割安になります。
標準ライセンス料金の例(基本パック+E-Document)  
例えば、本番環境の他に、開発環境やバック・アップ環境のあるお客様の場合に、本番環境は業務上必要な処理数を元にライセンスを選択するが、開発環境やバック・アップ環境には、最も小さい処理数のライセンスを選択して全体の金額を抑えることができるのが、このような料金体系のメリットと思います。
もっとも、実際には、業務上必要な処理数をお聞きしても、把握されていないお客様は非常に多くあります。つまり、AS/400 から何ページ位印刷しているかを、会社全体となると把握されていないお客様がほとんどです。そのような時には、購入されている印刷用紙の量を調べていただいた上で、上記のようにライセンスのクラス分けはさほど細かくないので、安心のために大き目の処理数のものを選択していただくことを、お勧めしています。

では、もし、1年経過する前に、契約した最大処理数に届いてしまったら、どうなるでしょうか ?
- 最大処理数の 95% に届くと、QSYSOPR にメッセージが上がります。その時点で処理が止まることはありません。
- 100% に届くと、処理が止まり、ライセンス・キーが不正である旨のエラー・メッセージが上がります。その時には、予めお客様にお渡しする緊急用のライセンス・キーを入力します。それによって、契約処理数に対して 5% 追加され、Mapping 処理を再開することができます。
- しかし、緊急用のキーは、1 回しか使用できません。従って、追加した 5% を使い切った後や、2 年目以降のことを考えて、ライセンス・クラスのグレード・アップをお勧めしています。ライセンス料金の差額 x 1.25 の料金をお支払いいただくと、ライセンス・キーが発行されて、年間最大処理数がグレード・アップされます。実際には、何らかの形でお客様のご発注の確認ができれば、ライセンス・キーを先に発行することで、お客様の業務を止めないよう、配慮しています。

そこで、慎重なお客様は定期的に、例えば毎月 1 回、残りの処理数を確認されています。MAPADDPTS コマンドで表示される画面では、下の画面のように次の情報が表示されます。(下の画面で処理数の値が 0 となっているのは、処理数無制限ライセンスのためです。)
- 残りの処理数
- 契約した処理数
- カウンターが次にリセットされる日付
MAPADDPTS コマンドで表示される画面例

2017年11月11日土曜日

AS/400 プリンティングに求められるソリューション 第14回 - Mapping Suite とは- 4 -

前回のお話で出できた "Mapping Virtual Printer" も含めて、"Mapping Suite" のライセンスの構成をお話しします。
先ず、3 種類のパックから 1 つを選択します。前回のお話にある表をご覧いただくと分かりやすいと思いますが、それぞれのパックの違いは、入力データ形式と出力データ形式の組み合わせの違いです。

1. Mapping V7 基本パック
AS/400 のスプールをカット紙化する、電子化するというほとんど多くのケースでは、このパックで対応できます。

2. Mapping V7 Industrial パック
出力データ形式として、"ZEBRA" や "IBM ProPrinter" 等が追加されています。
"ZEBRA" は以前ご説明した US 製のラベル・プリンターですが、Mapping と組み合わせて使用すると、AS/400 から LAN 直結で日本語のラベルを印刷できます。これは印刷データの中に、文字イメージも含めることができるからです。(国内には、何社かの販売、保守を行なう代理店があります。)
しかし、"IBM ProPrinter" や "EPSON FX" は、日本語対応していないドット・プリンター用の印刷データ形式なので、このパックは、国内用としては "ZEBRA" ラベル・プリンター用のパックと言えるかと思います。

3. Mapping V7 Premium パック
Industrial パックに対して追加された入力データ形式として、"SAP GOF"があります。これは、SAP 社の R/3 からの出力データ形式です。R/3 では細かな帳票設計機能は無いと聞いていますので、自由な帳票設計を行ないたい場合には、Mapping のこのパックが有効と思います。
また、追加された出力データ形式に、"GDI" があります。前回お話ししたように、Windows ドライバーを使った印刷を行なうためのデータ形式です。WindowsServer 上で稼動する MOM と組み合わせて使用します。
他のパックでは、"E-Document" を追加しないとできない PDF 生成が、基本機能の中で用意されている点も他のパックと異なります。

パックを選択したら、次は、"E-Document" と "DataBase" を追加するかを決めます。
"E-Document" の大きな特徴は、出力データ形式として "PDF" を追加できることです。つまり、PDF ダイレクト印刷や、電子化のためには、必須のオプションということになります。他に、出力した帳票を Web ブラウザーで見るためには、"HTML" 形式での出力が使えます。他に、Mapping の前処理として、スプールの並べ替え、結合、分割ができます。その機能を使うと、封入封緘機が必要とする OMR(Optical Mark Read) を帳票に追加できるようになります。

"DataBase"は、アプリケーションから出力されたデータや、取引先から渡されるデータが CSV 形式だった場合に、それを AS/400 上でスプールに変換する機能を提供します。また、DB2 等のデータベースから、必要なデータのみを取り出して、スプール生成することができます。
(残念ながら、現時点では、DBCS 文字の処理に問題があるため修正中です。)

他に単独のオプションとして、"Mapping Virtual Printer(MVP)" があります。PDF ダイレクト印刷や、XPS ダイレクト印刷、PCL モードや ZEBRA モードを持たないプリンターに対して、Mapping から自動印刷するために用意されたものです。Windows のPC に導入します。(もちろん、WindowsServerでも結構です。)
MVP は、Mapping で生成された PDF ファイルを受信すると、Adobe Reader(無償ライセンス)とプリンターのWindows ドライバーを使って自動的に印刷します。1 ライセンスで、25 個のプリンターを登録できます。1 台のプリンターにおいて、例えば、両面印刷と片面印刷の設定を使い分けたい場合には、プロパティの設定を変えて、プリンターの名称を変えた 2 つのプリンターを登録することになります。また、AS/400 から見ると、MVP 上に登録されたプリンター毎に、OUTQ が対応することになります。
MVP は、Windows のサービスとして稼動するサービス・モードと、画面が表示される GUI モードがあります。サービス・モードでは、処理中でも画面には何も表示されませんが、GUI モードでは MVP の画面が表示される他、瞬間的に Adobe Reader の画面が開きます。
MVP を使った自動印刷の流れ

2017年11月5日日曜日

AS/400 プリンティングに求められるソリューション 第13回 - Mapping Suite とは- 3 -

今回は、Mapping の特徴の中でも、ユーザーの方にとって直接関わることは少ないのですが、Mapping V7 を理解する上で重要な、内部のアーキテクチャーをお話します。

アーキテクチャーという言葉は、IT の世界では、基本構造という言葉に置き換えられると思います。
"Mapping Suite" では、V6 から V7.1 にバージョン・アップされる際に、アーキテクチャーが大きく変わりました。V6 までは、PCL 形式の印刷データを生成したり、PDFファイルを生成したりするのは、単にそれぞれ別の処理を行っているだけでしたが、V7.1 からは、XPS 形式のファイルを中間言語として活用するアーキテクチャーに変わりました。
具体的には、様々な形式の入力データを、一旦、XPS 形式のファイルに変換してから、その XPS ファイルを望みの出力データ形式に変換するという処理の流れに変わったということです。
"XPS" という言葉は、あまり耳にされたことの無い方が多いと思いますが、実は、Windows7 以降のバージョンの Windows にはプリンター・ドライバーの一つとして、"Microsoft XPS Document Writer" が標準で組み込まれていますし、XPS ファイルを読み込んで画面表示するための、"XPS ビューアー" も標準で付属しています。例えば、Word や Excel 等、Windows のアプリケーション上で、ドライバーとして "Microsoft XPS Document Writer" を指定して文書を印刷させると、紙に印刷される代わりに、XPS ファイルが生成されます。そして、その XPS ファイルを画面上で見るためのツールとして "XPS ビューアー" があるというわけです。

"XPS" とは、"XML Paper Specification" の略で、Microsoft 社が開発して、WindowsVista から採用し始めたた、電子文書を記述するための XML を活用した公開規格のフォーマットです。Microsoft 社が Adobe社の PDF に対抗するために開発したとも聞いています。
Mapping 社は早くから XPS に着目して、V7.1 のアーキテクチャーに採用しました。それによって、入力データ型式と出力データ型式の選択の幅が大きく広がったのです。Mapping V7.1 のライセンス・パックの種類とオプションとの組み合わせによって、選択可能な入力、出力データ型式の種類は、次の図のとおりです。
Mapping V7.1 による入力データと出力データの組み合わせ
例えば、"基本パック"に、オプションの "E-Document" を付けると、入力データとして扱えるデータの形式は、"TEXT"、"XML"、"SCSスプール"となり、変換後の出力データは、"PCL5,6"、"TEXT"、"XML"、"CSV"、"XPS"、"PDF"、"HTML"になるという見方ができます。
そして、単にデータ変換するだけでなく、ファイル変換を行なうプログラム "map_xps" のパラメーターである"プロファイル"を使って、ファイル変換の際の細かい設定を指定することができます。例えば、出力データの解像度や、カラーかモノクロかの指定、ページのサイズ等です。

特に、PDF 生成においては、2008年に"ISO32000"として規格化された所有者パスワードや利用者パスワードに応じた9種類の操作(印刷や編集等)の可/不可を、プロファイルを使って指定できます。

その他には、 生成された複数の XPS ファイルの分割や、結合、ページの並べ替えができます。元々、Mapping には前処理として、スプールの分割や結合、並べ替えを行なう機能がありますが、"前処理"の他に"後処理"でもできるようになったということです。"後処理"でページの並べ替えや分割を行なえるということは、キーとなる値を後から指定することができるということを意味しています。

"Premium パック"では、イメージ・データの一つとして、"GDI" に変換することができます。"GDI" とは "Graphics Device Interface" の略で、Windows の世界で、印刷の際にプリンター・ドライバーに渡す印刷データのイメージを意味しています。"GDI" を生成して、"MOM(Mapping Output Manager)"上のプリンター・ドライバーに送信すれば、ドライバーで指定されたプリンターから印刷することができます。
Mapping では、PCL モードや、PDF ダイレクト印刷機能を持たないプリンターや複合機に、"Adobe Reader" プリンター・ドライバーを使って自動印刷するために、"Mapping Virtual Printer" というオプション・ライセンスを用意していますが、上記の "GDI" に変換する機能を使うと、その代わりになると言えます。