始めの言葉

「プリンターから印刷できて当たり前」と、ユーザーからもSIerからも軽視されがちなプリンターの世界ですが、実際にはお困りだったり、思ったような印刷結果が得られないまま我慢してお使いの皆様のために、今までの経験が役立てばと、このブログを立ち上げました。印刷の基本から、応用情報、問題の解決方法を情報発信すると共に、PDF化など、これからどうするかについても、ご相談に乗れれば幸いです。ご質問はコメントでお寄せください。

2017年6月4日日曜日

IBM 小型レーザー・プリンターの今まで -第13回- "PAGES"-7

PC の OS の主流が、まだ、J-DOS や DOS/V だった頃には、ワープロや表計算、オンライン端末といったアプリケーションが、それ自身で印刷データを生成して、プリンターに送信してくるという仕組みでした。
一方、インパクト・プリンターと比べて、レーザー・プリンターは、縮小指定、用紙トレイ指定、用紙方向縦/横指定、4 辺の余白の指定等々、制御コマンドの種類が多いのですが、メーカー間で統一されたコマンドは、ありませんでした。
そうなると、各レーザー・プリンター・メーカーは、標準のプリンター制御コマンドを独自の規格で決めて、多くのアプリケーション・メーカーに対応していただくことで、競争力になると判断したわけです。そして、更に、他社が真似して同じコマンドに対応してきたとしても、その時には、自社が先行してコマンドを拡張しておくことで、自社の優位性が保たれるとも考えました。

その際に、インパクト・プリンターの実績のあった、IBM と EPSON 社は、インパクト・プリンターのコマンドを独自に拡張する方式で、それぞれ、PAGES、ESC/Page というレーザー・プリンター向けの規格を作りました。それ以外のレーザー・プリンター・メーカー、例えば、CANON 社は、LIPS という全くレーザー・プリンター独自の自社規格を決めて、多くのアプリケーション・メーカーのサポートを得ていました。
その中で、多くのプリンター・メーカーがターゲットにしたのが、IBM の AS/400 やメイン・フレームのシステム・ユーザーです。この市場は大きいと判断したのだと思います。
それらのシステムからの印刷を行なうためのアプリケーションは、3270PC であったり、5250PC ですが、それらは、5577 形式か、ESC/P 形式のコマンドしか送信しません。そこで、5577 のマニュアルに記載されているコマンドの説明や、それらアプリケーションからの印刷データを調べて、5577 互換 + 各社独自のレーザー・プリンター制御コマンドという組み合わせの、所謂「5577 エミュレーション・コマンド」(エミュレーションとは、真似という意味)を、レーザー・プリンターのオプションとして販売しました。
5577 コマンドに対する各社の拡張

しかし、その後、Windows の登場によって、印刷データの流れは大きく変化し、アプリケーションは印刷データの生成という作業から解放され、その分の仕事は、自社プリンター用のドライバーの開発として、プリンター・メーカーに移ったわけです。自社の規格を業界標準として競争力を維持するという戦略の下に、独自規格でコマンドを決めてきたことが、Windows の登場によって、自社の負担になってしまったという、皮肉な結果になっています。

そのような時代の変化の下で、AS/400 も含めたホスト・システムから、端末アプリケーションを介して、(PAGES も含めた)5577 互換のレーザー・プリンターへの印刷という図式も、いつの間にか崩れてきたようです。
つまり、一般の Windows アプリケーションと同様に、PCOMM プリンター・セッション経由の印刷も、最早、PDT 印刷ではなく、PDT を指定しないドライバー印刷で対応可能になってきているようです。
これは、PCOMM 側の改良や、プリンター・メーカーによるドライバーの改良の両方が寄与していると思います。

さて、そうなってくると、PAGES の必要性は、どこかに残っているのでしょうか ?
それは、次の 3 つのケースに絞られるかと思います。
1. OS/400 のHPT 機能を使った、AS/400 からの LAN 直結印刷の場合
2. AS/400 上のアプリケーションとして、PAGES コマンドをキャラクター・モードを使って送信する場合
3. AIX 等の UNIX 系のシステムからの文字印刷の場合

Windows のドライバー印刷では、印刷データは、アプリケーションとプリンター・ドライバーが、MS 明朝や、MS ゴシック等々の Windows に付属のフォントのイメージを使って、文字もイメージ・データと各ページのイメージをプリンターに送信してきます。
それに対して、"1" と "3" は、途中にWIndows を介しませんから、文字は文字コードとしてプリンターに送られ、プリンターが内蔵フォントを使って印刷イメージを生成します。
次の画面は、OS/400 V7R1 において、リモートOUTQの設定の画面ですが、コマンド変換するための選択肢である "MFRTYPMDL" にも、例えば "*IBMPAGES300" が準備されています。これは、前回までお話した、300DPI の解像度を持つ、ネットワーク・プリンター・シリーズの PAGES オプション用のものです。
MFRTYPMDL *IBMPAGES300

"2" は、文字通り、キャラクター = 文字としてプリンターを制御する PAGES コマンドをプリンターに届けないとなりませんから、プリンター・セッションでは、印刷データはイメージではなく、文字コードや制御コマンドとしてプリンターに送信する必要があります。
例えば、スプール・データの 1 ページ目は、A3 サイズの用紙に印刷するが、2 ページ目以降は、A4 サイズ用紙に印刷するといった業務の場合、データの先頭で、A3 サイズの用紙がセットされた用紙トレイを指定し、2 ページ目の先頭では、A4 サイズの用紙がセットされた用紙トレイを指定するコマンドを、印刷データの中に埋め込むことになり、このような場合に、キャラクター・モードが使用されます。
この業務を継続するために、PAGES モードを持ったプリンターを使い続けるという方法以外に、PAGES という一種の制約を外すことを検討するのであれば、Mapping Suite のようなソリューションの導入を検討されるのが良いと思います。

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