始めの言葉

「プリンターから印刷できて当たり前」と、ユーザーからもSIerからも軽視されがちなプリンターの世界ですが、実際にはお困りだったり、思ったような印刷結果が得られないまま我慢してお使いの皆様のために、今までの経験が役立てばと、このブログを立ち上げました。印刷の基本から、応用情報、問題の解決方法を情報発信すると共に、PDF化など、これからどうするかについても、ご相談に乗れれば幸いです。ご質問はコメントでお寄せください。

2015年5月25日月曜日

文字コードの深い世界 - "はしごだか"は印刷できるか -

「たかはし」さんの「たか」の字の多くは、「くちだか」と呼ばれる「」という文字ですが、一方で無視できない数の「はしごだか」と呼ばれる「」の方がいらっしゃいます。(「くちだか」と「はしごだか」の違いが分かりますか?)
ところが、この「はしごだか」がコンピューターの世界では、あまり親切には扱われていないように思います。また、例えば、文字として入力も表示もできない携帯電話もあるようです。

IBMのホスト・コンピューターの世界では、EBCDICの文字コードの中では、「IBM選定文字」として特別に追加された文字のグループの中に、文字コード"x676B"が割り振られています。
5400全文字印刷の一部抜粋






同様に、5577等の内蔵フォントの文字コードShift-JISでは、IBM選定文字に対応する文字コードの中でも後ろの方に、文字コード"xFBFC"が割り振られています。
5577プリンター操作マニュアル抜粋














ユニコードの世界ではどうかと言うと、"9AD9"というコードが割り振られていますので、PCのみならず、携帯電話の世界でもユニコードに対応していれば、入力も表示も可能なはずと思います。
Windows付属ツール"文字コード表"の画面
どうも、この文字が、このような扱いになっている理由は、「」の「異体字」として扱われていて、JISコードでは、単独の文字コードを割り振られていないことが原因のように思われます。
「異体字」と呼ばれる文字は他にもあるのですが、現実には姓に使用されている、この「」が、様々な問い合わせをいただくケースが最も多いように感じます。
JISコードでは、文字コードが割り振られていないということは、内蔵フォントがJISコードになっている「ESC/Pモード」では、「」は、内蔵フォントを使った印刷はできないということになります。
【余談】ESC/Pモードは、EPSON社の日本語インパクト・プリンター用の制御コードの名称で、「イーエスシーピー」とか「エスクピー」と呼んだりします。昔、DOS/Vではプリンターの制御コード体系としては「標準」として扱われました。(5577モードが標準にならなかったのは、当時の市場全体の台数では、ESC/Pのプリンターよりも5577系の方が少なかったということと、IBM色が強くなり過ぎないようにという配慮があったのでしょうね。)
そのため、5577系のドット・プリンターや5400系のライン・プリンターでも対応しています。

次回からは、文字コードの話を離れて、他のテーマにしたいと思っています。

2015年5月18日月曜日

フォント(書体)の話 - JIS2004改訂で元に戻る


IBM書体に対して平成書体は、簡略化された漢字となっていて、この書体がJIS90年改訂で採用されたわけですが、その後、JIS2004年改訂では、正しい漢字(書体)に戻りました。以下の比較資料は、Adobe社の資料ですが、これを見ると、例えばJIS90年字形では、しんにょうの点が1つであるのが、JIS2004年字形では2つに戻るといった変更が行われたことが分かると思います。
余談ですが、昔、私が受けた研修の講師の方が、「進捗」の「」の旁は「」とは点の数が違うことを知っているかと言われたことを、今でも覚えています。この比較資料の中の85番の文字がそれですが、確かにJIS90年字形では「歩」になっていますが、JIS2004年字形では点が1つ減っていますので、講師の方のコメントは正しかったと言えると思います。
このような経緯の結果、今の時点では、プリンターの内蔵フォントを使って印刷する直結型のプリンターやドット・プリンターの場合、画面の文字と同じ書体の文字を印刷するには、初期設定で「IBM書体」を選択するのが適切というように、元へ戻ったと言えます。
ただし、前々回お話したように、CCSID1399バージョン1までの文字という制限は残ります。
JIS90年書体とJIS2004年書体の比較-1

JIS90年書体とJIS2004年書体の比較-2

JIS90年書体とJIS2004年書体の比較-3

JIS90年書体とJIS2004年書体の比較-4

JIS90年書体とJIS2004年書体の比較-5

JIS90年書体とJIS2004年書体の比較-6

JIS90年書体とJIS2004年書体の比較-7

2015年5月9日土曜日

フォント(書体)の話 - 平成書体とIBM書体

今回は、文字コードから少し外れて、文字の書体(デザインそのもの)についてです。
1文字をデザインするだけでも多額の費用が発生することをお話しましたが、それへの対策の一つが「平成書体」と聞いています。つまり、IBMも含めたコンピューター・メーカーが独自にフォントの開発を行うのを止め、共通のフォントを開発することで費用負担を減らすという狙いで「平成フォント協議会」(当時、流行っていたテレビ番組名をもじってそのように呼んでいましたが、正式な名前かどうかは分かりません。)を結成したと聞いた覚えがあります。
IBM書体と平成書体の違い-1
IBM書体と平成書体の違い-2
その結果、従来からのプリンターの内蔵フォントである明朝体のフォントにおいて、IBM書体と少し異なるデザインの文字ができたのは、避けられないことだと思います。もちろん、ほとんどの文字に違いは無いのですが、714文字には僅かにデザインが異なる箇所があります。そのため、5577系のドット・プリンターや5400系のライン・プリンターでは、初期設定で「IBM書体」か「平成書体」を選択できるようになっています。それらの文字の一部を表示しますので、間違い探しのように、どこが違っているか、見つけてみてください。 (お問い合わせをいただくケースが多かったのは、しんにょうの点の数です。)

平成書体は、Windowsのフォントに標準として採用されたことから、印刷結果の「互換性」を考えるとどちらの書体を使って印刷するかという判断が迫られることになります。つまり、Windows以前の時代からの印刷結果との互換性を重視するのであれば、「IBM書体」を選択することになりますし、PC画面の文字との互換性を重視するのであれば、「平成書体」を選択することになります。
【余談】
Windows以前のIBM 5550シリーズやPS/55では、画面の文字は、プリンターの内蔵フォントと同様に、コンピューター本体の中にあるディスプレイ用のカードに搭載されたメモリー内の内蔵フォントを使って表示されていました。その方式を大きく変えたのが、DOS/Vです。DOS/Vでは「ソフト・フォント」と言って、DOS/V自体がデータとしてフォント・イメージを持っていて、画面にそれを表示させていました。それ以来、Windowsでもフォントはソフト・フォントを使用するようになっています。
プリンターの内蔵フォントは、前々回ご紹介したような 24 x 24 個の升目を埋めるようにして設計されていて、このようなフォントを「ラスター・フォント」と呼びます。一方、Windowsで使用しているフォントは、大きさをポイント数で指定して自由に変えられるようになっていますが、このようなフォントを「アウトライン・フォント」と呼びます。画面の文字がラスター・フォントからアウトライン・フォントに変わっていった背景には、CPUの処理能力の急速な発達があります。アウトライン・フォントはCPUが計算して、ポイント数に合わせた大きさの文字の形を計算して表示しているのです。
因みに、「1 ポイント」は文字の高さを表し、「1/72インチ」(1インチ = 25.4mm)を意味しています。

2015年5月5日火曜日

文字コードの話 - CCSID1399バージョン1とは

繰り返しになりますが、IBMホスト・システム上の文字コード体系であるEBCDICと、JIS規格は別の規格です。そのため、JIS83年の規格改訂で、文字コードと文字イメージの組み合わせの入れ替えがあっても、EBCDICの世界ではそのような変更はありません。しかし、日本語を表わす文字がJIS規格の改訂で増えた場合には、EBCDICでもそれに追随して文字を追加していかないと、PC上で表示できる文字がホスト・システム上には反映できないことになってしまいます。
そこで、経緯を整理すると、
  • JIS1978年規格で、6,802文字を制定しました。
  • JIS1983年改訂で、44文字(22組)の文字の入れ替え、300文字の字形変更、75文字の追加があり、総文字数は、6,877文字になりました。
  • JIS1990年改訂で、2文字追加され、総文字数は6,879文字になりました。
ここまでの文字に対しては、Windowsの世界ではWindowsXPが対応し、EBCDICの世界では、CCSID930/939に反映されました。その後、
  • JIS2000年改訂で、4,344文字が追加されました。この部分をJIS第3水準、第4水準と呼ぶことがあります。その結果、文字数は11,223文字と急増しています。この文字数に対応するWindowsはWindowsVista以降、EBCDICでは、CCSID1399バージョン1となります。
  • JIS2004年改訂では、168文字の字形変更と10文字の追加がありましたが、これを反映したCCSID1399がバージョン2となります。
その他にも、使用可能な外字の数にも違いがあります。CCSID930/939では、最高4,370文字の外字を定義して使用できるのに対して、CCSID1399では、最高6,205文字となっています。
システムの世界で文字の扱いを考える時に、先ず文字はどうやって入力されるのかを考える必要があります。例えば、ユーザーがWindowsPCから入力する際には、その文字がホスト・システム上でも使用可能かどうかを意識する必要が無いようにする必要があるでしょうし、そのためには、ホスト・システム側でも、つまりEBCDIC側でもそれらの文字には一通り対応する必要が出てくるわけです。そして、最後に印刷するとしたら、直結プリンターの場合は、プリンターも内蔵フォントとして対応する必要があるのですが、残念ながらCCSID1399バージョン1までとなっているのが、実情です。
5400-F06全文字印刷-1
添付イメージは、直結型のライン・プリンター5400-F06の全文字印刷の一部です。
5400-F06全文字印刷-2
1番目の中のxB840「丂」以降が、CCSID1399で追された文字になります。


5400-F06全文字印刷-3
5400-F06全文字印刷-4