始めの言葉

「プリンターから印刷できて当たり前」と、ユーザーからもSIerからも軽視されがちなプリンターの世界ですが、実際にはお困りだったり、思ったような印刷結果が得られないまま我慢してお使いの皆様のために、今までの経験が役立てばと、このブログを立ち上げました。印刷の基本から、応用情報、問題の解決方法を情報発信すると共に、PDF化など、これからどうするかについても、ご相談に乗れれば幸いです。ご質問はコメントでお寄せください。

2016年8月14日日曜日

ライン・プリンターの全て - 第5回- 日本語ライン・プリンターの歴史-5

日本語ライン・プリンター・シリーズの中核となる中速モデルが、耐久性を向上した"5400-006"に代わって、一安心といったところでしたが、次の課題が新たに出てきました。
"5400-006"プリンターが発表された1998年の3年前は、Windows95が発売され、インターネットの普及が始まった年です。インターネットの普及に合わせて、企業の現場では、ネットワークは、IBM独自のTokenRing(トークン・リング)方式からEthernet(イーサネット)方式へ、プロトコルも、IBM独自の"SNA"から、"TCP/IP"へというように、メーカー独自規格から業界標準規格に移っていく傾向が始まりました。AS/400 の世界では、機器の接続が、"Twinax"接続から"ネットワーク"接続へ、徐々に移行していったわけです。AS/400 自体でも"Twinax"接続機構は、標準からオプションへと変わって行きます。

そうなると、ライン・プリンターの接続方式も"Twinax"接続ばかりではなく、PCOMM のプリンター・セッションを経由した方式が増えていきました。それは、プリンターに対して印刷データを生成して送信してくるのは、AS/400 ではなくなり、"ibm5577.pdt"というPDTファイルを参照して、5577 形式の印刷データを生成、送信するプリンター・セッションになることを意味します。

そのような状況の中で、お客様から問題として指摘され始めたのが、"Twinax 接続と比べて、プリンター・セッション経由では、罫線のある行の印刷が遅い。"という現象です。(因みに、ライン・プリンターで印刷が遅いというのは、印刷中に紙送りが止まることがあることを意味しています。)
プリンターの開発部門と一緒に原因を調べて判明したことは、次のとおりです。
  1. 罫線は縦24ドットのイメージ・データとして、プリンター・セッションから送られている。
  2. 実際に印刷する罫線は、縦2ドット程度の"黒イメージ"だったとしても、印刷データとしては、残りの縦22ドットの"白イメージ"もあるわけで、罫線の長さに比例して、印刷データ量が大きくなる。
  3. その印刷データを生成する PC 側の処理速度、ネットワークによる通信速度、受信したプリンター側での処理速度、全てに対して負担が大きくなって、印刷速度の低下を引き起こしている。(現在の PC の処理速度や、ネットワークの通信速度だったら考えられないことですが)
5577モード :2ドット幅の横罫線の印刷データ
しかし、プリンターの開発部門で対応できるのは、プリンター側での処理速度でしかありません。それでは効果を期待できませんので、対策として決まったのが、"Telnet5250E"接続の採用です。その狙いは、次の2点です。
  1. 標準のプロトコルとなっていく"TCP/IP"の規格の一部であって、Twinax接続とほぼ同じ操作性を実現できること。
  2. 罫線を引くためのコマンドが、AS/400 から発行されるSCS形式のコマンドとなるため、罫線の始点と終点を座標で指定する方式になる。そのため、罫線を印刷するためのデータ量の大幅な削減が期待できる。
SCSモード : 横罫線の印刷データ
"Telnet5250E"については、AS/400からの印刷 ~基礎編-3~をご参照ください。

"5400-006"プリンターでは、2000年に、LAN カードを Twinax カードとの選択オプションとして発表しました。新規発注分に対して選択できるだけでなく、使用中の"5400-006"プリンターに対しても、技術員による交換作業により、LAN 接続に変更できるようになっていました。
LAN カードは、プロトコルとして"Telnet5250E"だけでなく、"LPR"も初期設定で選択可能となっていました。"LPR"プロトコルに設定した場合には、"5577モード"か"ESC/P"モードに対応したプリンターとして使用できます。具体的には、Windowsが稼動するPCや、AIX が稼動するIBMワークステーション(RS6000)からの印刷にも使用できるということです。整理すると、Twinax接続の代わりにLAN カードを選択した場合、次の3種類の内1種類のプリンターとして使用できるということになりました。
  • AS/400 からTelnet5250Eを使った印刷(SCSコマンド)
  • PC や RS6000 からLPR/LPDを使った印刷(5577モード)
  • PC や RS6000 からLPR/LPDを使った印刷(ESC/Pモード)
実際に、この LAN カードを使った"Telnet5250E"によって、罫線による印刷速度の低下は解消しました。

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