始めの言葉

「プリンターから印刷できて当たり前」と、ユーザーからもSIerからも軽視されがちなプリンターの世界ですが、実際にはお困りだったり、思ったような印刷結果が得られないまま我慢してお使いの皆様のために、今までの経験が役立てばと、このブログを立ち上げました。印刷の基本から、応用情報、問題の解決方法を情報発信すると共に、PDF化など、これからどうするかについても、ご相談に乗れれば幸いです。ご質問はコメントでお寄せください。

2019年1月26日土曜日

XPSConfig ファイルを使った PDF セキュリティ - P/Wの設定 -

今回は、いつものベイトップ書房の見積書のスプール・ファイルの中の 2 種類のデータを、それぞれ所有者パスワードと使用者パスワードに設計する方法をご紹介します。
1. MapDraw 上で、対象となるデータを元に、次のように "アーカイブ" ゾーンを追加します。アーカイブ・ゾーンの種類としては、"Index" を選択します。
ここでは、所有者パスワードのゾーン名を"OWNPW"、使用者パスワードをのゾーン名を"USRPW"と名付けます。なお、当然のことながら、アーカイブ・ゾーンは、プレビュー画面でも、PDF ファイルにも表示されません。
パスワード用のアーカイブ・ゾーンの設定
2. その後は通常通り、プロジェクトの生成を行い、OS/400 上の Mapping メニューの中の "2. MapDraw フォーマットの取り込み" を行います。
3. IFS 上の \mapping フォルダーの直下にある XPSconfig ファイルを編集して、PDF ファイルのセキュリティ設定を行います。ここでは、次のように "PDFPW" という名称のセキュリティ設定を追加します。
4行目 と 5行目で、MapDraw 上で定義したパスワード用のアーカイブ・ゾーン名、所有者用と使用者用を "[[]]" で囲んで定義していることにご注意ください。
<PDFPW>
<language>PDF</language>
<encryptmode>on</encryptmode>
<encryptownerpwd>[[OWNPW]]</encryptownerpwd>
<encryptuserpwd>[[USRPW]]</encryptuserpwd>
<encryptallowprint>off</encryptallowprint>
<encryptallowhightlevel>on</encryptallowhightlevel>
<encryptallowdataextraction>off</encryptallowdataextraction>
<encryptallowaccessibility>on</encryptallowaccessibility>
<encryptallowmodify>off</encryptallowmodify>
<encryptallowcomment>off</encryptallowcomment>
<encryptallowassemble>off</encryptallowassemble>
</PDFPW>
4. 以上で準備できましたので、次のようなコマンドを実行して、先ず XPS ファイルを生成します。
MAPCPYSPLFコマンドの1画面目
MAPCPYSPLFコマンドの2画面目
5. 生成された XPS ファイルを、MAPXPS コマンドを使用して PDF ファイルに変換するのですが、その際にパラメーターとして "3" で定義した "PDFPW" という名前のプロファイルを指定します。
MAPXPSコマンドの1画面目
MAPXPSコマンドの2画面目
6. 生成された PDF ファイルを AdobeReaderで開こうとすると、次のようにパスワードを入力する画面が表示されます。
PDF パスワードを入力する画面
ここで、所有者パスワードか使用者パスワードを入力することによって、初めて PDF ファイルが表示されます。
表示された PDF ファイルで "ファイル" -> "プロパティ" -> "セキュリティ" を選択すると、次のように " パスワードによるセキュリティ" とか、"文書のすべての内容が暗号化されている" という説明が表示されているのが分かると思います。
PDF ファイルのセキュリティ画面
更に "詳細を表示" ボタンを押すと、次のような画面が表示されます。
PDF セキュリティの詳細画面


2019年1月13日日曜日

XPSConfig ファイルを使った PDF セキュリティ

前回のお話の中で出てきた XPSConfig ファイルの中に <PDFPWD1> と </PDFPWD1> で囲まれた 10 行の記述があることに気づかれたでしょうか ?
この記述が、今回お話しする PDF セキュリティを定義することになります。
PDF は、2008年7月に ISO(国際標準化機構)によって、ISO 32000-1 として標準化されていて、その中の要件の一つとしてセキュリティがあります。Mapping V7 は、このセキュリティの要件を満たす PDF ファイルを生成することができます。

ここで言っているセキュリティとは具体的にどのような内容かを知るために、先ずは、 PDF ファイルを Adobe Acrobat Reader で開いてみましょう。"ファイル" -> "プロパティ" と選択して表示される画面で、"セキュリティ" のタブを選択すると次のような画面が表示されます。次の画面は、セキュリティを設定されていない一般的な PDF ファイルのものの例です。
セキュリティの設定されていない PDF ファイルの例
これに対して、"パスワードによるセキュリティ" をセットするのですが、ここでパスワードには 2 種類あります。"所有者パスワード" と "利用者パスワード" です。
例えば、Mapping を使って、控えの帳票を PDF ファイルとして生成し、ファイル・サーバーに保管する場面を考えてみましょう。
PDF ファイル毎に、複数の利用者各々に対応したそれぞれ異なる "利用者パスワード" が設定されていれば、PDF ファイルを開くことができるのは、許可された、即ち、利用者パスワードを知らされた利用者のみとすることができます。
しかしそれだけでは、PDF ファイルに対してアクセス権限の高い管理者が PDF ファイルを開くには、ファイル毎に異なるパスワードを使い分けないとならなくなり、大変不便です。そのような場合に、"利用者パスワード" とは異なる "所有者パスワード" を全ての PDF ファイルに対して共通に決めておけば、管理者は単一の所有者パスワードを使って PDF ファイルを開くことができるようになります。
なお、パスワードを設定していると、内容は暗号化されます。
また、利用者パスワードで開いた場合には、表示はできても印刷はできないように制限する設定が可能です。次の画面は、セキュリティの設定された PDF ファイルのプロパティの例です。
セキュリティの設定された PDF ファイルの例
この例では、下の 9 項目全てを許可しない設定となっています。
- 文書アセンブリは、ページの挿入や削除といった操作です。
- 内容のコピーは、文字通り内容のコピー操作です。
- アクセシビリティのための内容の抽出は、読み上げソフトによる読み上げを表します。
- ページの抽出は、一部ページを抜き出すことです。
- 注釈は、注釈の追加や編集を指します。
- フォームフィールドの入力は、PDF 文書内に入力フィールドがあった場合の入力のことです。
- 署名は、PDF 文書内に署名欄があった場合の署名の入力のことです。
- テンプレートページの作成は、Adobe 社のサイトに、ページを作成するとき、テンプレートを選択する必要があります。と書かれていますが、私は使用したことがありません。
これらの項目の一つ一つが、Mapping では XPSConfig ファイルの中で次のように設定できるようになっています。
<language>PDF</language>
<encryptmode>on</encryptmode>  <- セキュリティの設定を行う
<encryptownerpwd>[[OWNERPWD]]</encryptownerpwd> <- 所有者パスワード
<encryptuserpwd>[USRPSWD]</encryptuserpwd> <- 使用者パスワード
<encryptallowprint>[USRPRTALW]</encryptallowprint> <- 印刷
<encryptallowhightlevel>on</encryptallowhightlevel>
<encryptallowdataextraction>[USRCPYALW]</encryptallowdataextraction> <- ページの抽出
<encryptallowaccessibility>on</encryptallowaccessibility> <- アクセシビリティ
<encryptallowmodify>on</encryptallowmodify> <- 編集
<encryptallowcomment>on</encryptallowcomment> <- 注釈
<encryptallowassemble>on</encryptallowassemble> <- 文書アセンブリ
パスワードの値は、固定の値でも良いのですが、スプール・データの中の値を使った変数とすることも可能ですので、次回はセキュリティを設定した PDF ファイルの生成方法と併せて、パスワードの設定方法をご紹介します。